インターネット業界、特にスタートアップ企業のなかで話題になっている「グロースハック」。日本国内ではこの言葉が2012年末から普及し始めてきた。
本書は豊富な事例を交えつつ、グロースハックという新たな考え方を丁寧に説明した一冊だ。Part 1~7の7部構成となっており、Part 1ではグロースハックの概念についての説明、Part 2ではグロースハックの代表事例、そして以降のパートではグロースハックの基本的なフレームワークとなるAARRRの各段階の具体的な施策が紹介されている。
まずはグロースハックとは何か、というところから見ていきたい。グロースハックのコンセプトとは、「継続的にプロダクト/サービスを伸ばす仕組み作り」である。成長(グロース)を、エンジニアリングの力を利用して仕組み化(ハッキング)すること。これがグロースハックであり、この役割を担う人材を「グロースハッカー」と呼ぶ。
本書では更にこのグロースハックについて「極力お金を使わない」という点を強調している。それは、グロースハッカーの職務範囲がマーケターの担う役割のなかでも「予算が与えられない」部分に該当するからである。
マーケターはテレビCMやリスティング広告などに予算を配分することでユーザーの獲得を狙うが、こうした予算を継続的に使えるのは資金力のある大企業に限った話であり、スタートアップ企業には向いていない。こうした予算がない状況において、「金」ではなく「知恵」を使ってユーザー獲得を目指すことがグロースハックなのだ。それではどのようにその「知恵」を使うのか。
グロースハックの概念において重要となる考え方の一つに「改善」がある。例えば、新規ユーザーがサイトを訪れた際の会員登録率を1%でも向上させる。テレビCMのような定量的な効果が見えにくい施策ではなく、データ分析をもとにこうした地道な改善の積み重ねを行うことが、成長力に繋がるという考え方である。
グロースハックを実施していく上で基本となるのが「AARRR」フレームワークだ。AARRRは、次の5つの単語の頭文字を並べたものだ。
Acquisition(アクイジション):ユーザー獲得
Activation(アクティベーション):ユーザー体験の最大化
Retention(リテンション):ユーザーの再訪、リピート利用
Referral(レファラル):ユーザー自身が別のユーザーに利用を促す
Revenue(レベニュー):収益化
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