本書で最初に紹介されているのがYahoo!ジャパン出身の堀江泰夫氏である。ライフネット生命のマーケティング部に所属していた彼のもっとも特筆すべき能力は、消費者そのものになりきって、「何が買いたくなるか?」「どんな広告だったら、グッとくるか」という判断を極めて正確にできる点にある。
コンサルティングファームや金融系の外資企業出身者が多いライフネットでは、何かと理詰めで考える傾向が強かったという。これは正しい判断、よりよい判断のためには必要不可欠と言えるが、時にはその理論がひとり歩きし、消費者の実態からかけ離れてしまったり、ひとりよがりな内容になってしまう危険がある。
その点、堀江氏は漫画雑誌を購読したり、新宿のマルイで買い物をしたりして、普通の30代の、ちょっとチャラい男性会社員が興味を惹かれるものにナチュラルに誘われ、試し、経験を重ねていっている。そうした消費者マインドをベースにして、「次は、こんなことを体験してみたい」「こんなのが出てきたら、きっとグッとくる」といったものを業界や商材に限定されず、様々な角度から集め、それらを組み合わせることで新しい企画をつくっている。漫画雑誌を読んでいるのも、次に流行りそうなものが一番最初に出てくるのはTVではなく雑誌だからなのだという。
Yahoo!のようなWEB媒体では、日々の施策がダイレクトに数字に反映される。こうした環境では理屈を使って上司を説得するよりも、どんどん新しい打ち手を打って、その中でインパクトある結果を叩き出すことが求められた。こうした高速PDCAが回る環境において堀江氏は、理屈をこねるのではなく、自分の素直な欲求や願望、ユーザーとしての感覚を大切にするようになったのだ。
A・T・カーニー出身の辻靖氏は、ライフネットのチーム議論を活性化させる上で大きな強みとなっていた「突っ込まれ力」という強みを持っていた。辻氏の提案や議論は、「あくまで自分が提示したものは〝叩かれ台〟であって、これをきっかけにして、どんどん考えていることを教えて欲しいし、聞いてみたい。さあ、どう思いますか?」という姿勢がいつもにじみ出ているのだという。
せっかく作った資料が全否定されてしまうことも少なくなかったというが、それでも辻氏は不機嫌になったり、怒ったりすることなく、「それならこうしてみたらどうですかね?」とポジティブな提案をするため、参加者全員がとても参加しやすくなるものだった。そうすると、全員が安心して伸び伸びと自分の説や懸念点を提示でき、チームとしての話し合いが深まり、当初プランの質が遥かに向上することに繋がっていたそうだ。相手と理論で対立するのではなく、突っ込まれることでこそチームとしての創造性を高めることができるのである。
ライフネット生命の創業者/現社長兼COOである岩瀬大輔氏の強みの一つは「ストーリー力」だ。聞き手側は話を聞いているうちにどんどん感情移入し、語り手の考えを追体験し、最後は一緒に何かをしたい、自分もそのストーリーに参加してみたいと思ってしまう。岩瀬氏はそんな「ストーリー」を創り上げ、相手をどんどん巻き込んでいく力を持っている。
例えば、
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