なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
なぜ、あの人との会話は嚙み合わないのか
出版社
プレジデント社

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出版日
2025年04月14日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「最近、毎日のように残業してるんだ。疲れがたまってるのか、昨日なんてコンビニのおにぎり1個しか食べられなくて……」

「おにぎりといえば、この前、すっごいおいしいおにぎり屋さんを見つけたんだ!今度一緒に行こうよ!」

こんなふうに返されたら、あなたはどう感じるだろうか。「その話をしたかったんじゃないのに」と、モヤモヤした気持ちになるのではないだろうか。本書はこうした「嚙み合わない会話」に焦点を当て、なぜこのような齟齬が起きるのか、その根本的な原因に迫る。

著者によると、キーワードは「具体」と「抽象」だという。人の思考スタイルは、情報や経験、専門知識のような「具体的知識」がどれだけあるかと、その経験や情報から法則を見出し一般化する「抽象化能力」の高さの組み合わせによって決まる。両者には偏りがある場合もあるし、分野によって異なる場合もあるのだという。相手がどのような思考スタイルを持っているかを理解することで、適切な対応が可能になり、「嚙み合わない会話」が減らせるというのが本書の主旨だ。

本書では「困った人」の思考パターンを、具体的な場面の例を交えながら解説し、その「トリセツ」まで紹介してくれる。理論だけでなく、すぐに現場で活かせる実践的な知識が満載だ。

「なんかスッキリしないな……」というコミュニケーション上の小さなストレスを解消するのに、もってこいの一冊である。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

米澤創一(よねざわ そういち)
慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科(SDM研究科)特別招聘教授。京都大学経済学部卒業後、アクセンチュア株式会社に入社。日本におけるプロジェクトマネジメントグループ統括、SAPプラットフォーム統括、新人教育責任者、品質保証責任者、グローバルSAP組織における教育責任者などを歴任。2008年のSDM研究科設立時から教鞭をとり、物事を本質的な問題解決に導くための「本質思考」を用いてプロジェクトマネジメントを教える講義は学生満足度97%(満点の5をつけた割合)と圧倒的な支持を受けている。大学院教員のほか、講演・セミナー活動、プロジェクトマネジメントのコンサルティングなどに従事。一部上場企業での研修実績も多数。著書に『プロジェクトマネジメント的生活のススメ』(日経BP)、『本質思考トレーニング』(日本経済新聞出版)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    「嚙み合わない会話」は思考スタイルの違いによって生じる。思考スタイルは、「具体的知識」と「抽象化能力」のレベルの組み合わせによって決まる。両者は互いに補い合う関係にあり、バランス良く向上させることが重要だ。
  • 要点
    2
    「困った人」との会話を嚙み合うものにするためには、相手の思考スタイルを理解し、そのスタイルに合わせてコミュニケーションを取ることだ。
  • 要点
    3
    思考スタイルを高めるためには、「具体的知識」から上げていくといい。一方、「抽象化能力」の向上は難易度が比較的高く時間もかかるが、全ての分野に活用することができる。この両方を高めていくように、日頃から意識することが大切である。

要約

なぜ、会話が嚙み合わないのか

「思考スタイル」の違い

質問にきちんと答えてくれない。概要だけでいいのに詳細ばかり話してくる。主旨から外れたどうでもいいような質問ばかりする――。こんな「嚙み合わない会話」に困った経験はないだろうか。

会話が嚙み合わないのは、各人の「具体」「抽象」のレベルと、その組み合わせによる「思考スタイル」の違いを意識していないことから生じる。例えば、個別の課題を相談したい部下に対し、抽象的な理念ばかりを語る上司。家事分担を決めたい妻に対し、一部だけを手伝って「やってるつもり」になっている夫。これらはすべて、相手の思考スタイルを意識しないから起きるのだ。

コミュニケーションの齟齬を減らすためには、自分と相手の思考スタイルを知り、その違いを踏まえた伝え方をしていく必要がある。相手の思考スタイルを理解できれば、周りの「困った人」とのコミュニケーションも改善されていくはずだ。

本書では、「具体的知識(具体)」と「抽象化能力(抽象)」の両面から思考スタイルを可視化し、コミュニケーションの改善法を提案していく。

「思考スタイル」を構成するもの

「具体的知識」と「抽象化能力」
gremlin/gettyimages

「具体的知識」とは、文字通り、対象についての具体的な知識や情報だ。対象についてどれだけ詳しいか、その経験や情報をどれだけ持っているかである。

一方、「抽象化能力」とは、具体的な事象や経験から共通点や本質的な特徴を見出し、より一般的な概念や原理として理解し、表現する能力だ。個別の話をまとめたり、応用したりする力を指す。

具体的知識と抽象化能力は相互補完関係にあり、どちらが欠けても十分な思考力が発揮できない。具体と抽象は二項対立ではなく、バランスよく向上させることが重要だ。

「具体的知識」のレベル

具体的知識と抽象化能力には、それぞれ成長段階としてのレベルがある。

具体的知識のレベルは、ある対象をどれだけ正確に詳細に把握しているかという解像度と、どこまでの範囲で把握しているかという視野で決まる。レベルは0から4まで、以下のようにわけられる。

レベル0 低次元(霧の中):解像度が低く、視野の認識がない。事実誤認や断片的な把握に留まる。

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要約公開日 2025.09.16
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