【本からのぞくグローバル・トレンド】
「ヒュッゲ」あふれるデンマーク
『ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方』/『デンマークの親は子どもを褒めない』/『世界で最もクリエイティブなデンマークに学ぶ 発想力の鍛え方』

最近、書店に「ヒュッゲ」関連本が並び始めているのをご存知だろうか。「ヒュッゲ」とは、「心地よさ」や「人とともにいるときに感じる、あたたかな幸せ」などを表すデンマークのことばだ。

昨年から、この「ヒュッゲ」というデンマーク流の幸せの概念は、ヨーロッパからアメリカへとブームが飛び火し、世界的な広がりを見せている。

デンマークは、世界幸福度調査において、毎度のように一位に輝いている。デンマークの幸せの秘密は「ヒュッゲ」にあるのだろうか。「ヒュッゲ」に見られる価値観は、ほかのどんなところに影響があるのか。今回は、3冊の本を紹介しながら、「ヒュッゲ」でひときわ注目を集めているデンマークの姿に光を当ててみたい。

カギとなるのは「人とのつながり」

ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方 (単行本)
ヒュッゲ 365日「シンプルな幸せ」のつくり方 (単行本)
著者
マイク・ヴァイキング
出版社
三笠書房
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本書の原書“The Little Book of Hygge”は、欧米で「ヒュッゲ」ブームを先導した本の1冊である。著者は、デンマークのコペンハーゲンにある、その名も「ハピネス・リサーチ研究所」というシンクタンクのCEOだ。まさに書くべき人が書いた「ヒュッゲ」本といえるだろう。

本書は、「ヒュッゲ」はどのようにすればつくり出せるのかを、食べ物や風景の美しい写真の数々とともに紹介する。それは、たとえば、キャンドルを灯して部屋でのんびりすることであり、友人たちとボードゲームをする夕べであり、家族とごちそうを食べるクリスマスであったりする。ページをパラパラとめくるだけでも、ゆっくりとあたたかな気持ちがわいてくる。贈り物にしても喜ばれそうな本である。

著者は、デンマークが幸福度の高い国である理由として、福祉国家であることを挙げつつ、「ヒュッゲ」が大きな役割を果たしていることを強調する。「ヒュッゲ」の概念の中心となる「人とのつながりのあたたかさ」と幸福に、強い相関関係があることは、研究者たちのあいだでも見解が一致しているという。

デンマークの子どもたちが幸せな大人に育つ理由

デンマークの親は子どもを褒めない 世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方 (新書企画室単行本)
デンマークの親は子どもを褒めない 世界一幸せな国が実践する「折れない」子どもの育て方 (新書企画室単行本)
著者
ジェシカ・ジョエル・アレキサンダー
出版社
集英社
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一方、こちらの本の著者たちは、デンマーク人の幸福の秘密は、子育てにあると述べている。幸せな子どもが幸せな大人に育ち、その大人が幸せな子どもを育てる……というふうに連鎖が続いているというのだ。

本書は、数多くの研究データや自身の経験から、デンマーク流子育てを「遊ぶ」「ありのままを見る」などの6つの項目に分けて解説する。なかでも、6つ目の「仲間と心地よくつながる」という項目に、デンマーク人の価値観である「ヒュッゲ」(*本書ではヒュゲと表記されている)が登場していることに注目したい。

著者の一人は、デンマーク人の配偶者を持つアメリカ人である。彼女は、個人主義が浸透しているアメリカ人家族と違って、デンマーク人の家族が、大人数で何日も、ほとんど一緒に居心地よく過ごす様子に少々驚いたそうだ。そこには生き方として深く根づいた「ヒュッゲ」がある。

デンマークでは、チームワークや共同作業が幼少のころより重視される。そして、成長すれば、共通の趣味や関心に基づくさまざまなジャンルの任意団体に、多くの人が所属するという。デンマークのビジネスリーダーの79パーセントは、30歳までにこうした団体で活動しているという統計データもあるそうだ。

そうやって育つデンマーク人には、誰かと過ごす時間を楽しみ、尊重するということが自然と身についている。共同体のメンバーが集まれば、一人ひとりが意志的に、ポジティブで居心地のよい雰囲気を作るよう努力する。それが、家族の健全な暮らしや、仲間との強い絆をはぐくみ、幸せな子どもをつくるのだ。

信頼がイノベーションにつながる

世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方
世界で最もクリエイティブな国デンマークに学ぶ 発想力の鍛え方
著者
クリスチャン・ステーディル リーネ・タンゴー 関根光宏(訳) 山田美明(訳)
出版社
クロスメディア・パブリッシング

デンマークは、世界の国と比較して幸福度が高いというだけでなく、ここ数年にわたり、クリエイティビティやイノベーションを推進する取り組みに関するさまざまなランキングで、常にトップ5入りを果たしているという。

本書は、デンマークを代表する組織やアーティストらにインタビューを行い、デンマークならではのクリエイティビティの在りようを解き明かしていく。世界一のレストランに何度も選出されているnoma(ノーマ)や、おなじみのブロックLEGOは、どのような挑戦の末に生まれたのか、など、興味深い話がつづく。

本書の多くのエピソードが示唆する、デンマークらしいクリエイティビティの特質とは、コラボレーションや集合知を土台にしているということにある。すなわち、完全な孤立から新しいものが生まれるのではなく、自分の力になってくれる人を信頼することで、よりよいものが生み出されてきたということである。著者らは、本書の最後で、デンマーク人が互いに信頼しあっていることが、幸福な国だといわれるゆえんであり、さらに、クリエイティビティに関する重要なヒントを含んでいるということを指摘している。

「ヒュッゲ」に代表される、人とつながりあうこと、信頼しあうことに価値を置く文化は、デンマークが繁栄する豊かな土壌となっているようである。

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文責:熊倉沙希子 (2017/11/15)
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