親なら知っておきたい「子供が算数につまずく理由」
順序立てて考え、正しい選択ができる力を育てる算数の重要性

4月から新生活がスタート。1、2月に中学受験を体験し、新中学生になった子供たちも多いだろう。日能研の調べによると、1986年には8.5%だった受験率(小6卒業生数517,000人のうち受験者は44,000人)が、2014年には19.0%(小6卒業生数303,594人のうち受験者は57,700人)となっている。子供の数は減っているが受験者は増えている、そんな状況だ。

中学受験において絶対に避けられない教科が国語と算数だ。特に算数でつまずく子供が多く、学研教育総合研究所の2013年の調査によると22.9%の小学生が「算数が嫌い」と答えているという。

そんな算数の重要性、勉強のやり方について警鐘を鳴らしているのが、『小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本』(かんき出版刊)の著者で志進ゼミナール塾長の小杉拓也先生。本書は、小学校1年生から6年生までの算数の教科書の内容を128ページに凝縮してまとめた一冊だ。2015年10月に発売され、現在14万5千部の大ヒット、ロングセラーとなっている。さらには子を持つ親だけでなく、ビジネスパーソンにも売れているのだという。そんな小杉先生に、お話を伺った。
小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本
小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本
著者
小杉 拓也 著
出版社
かんき出版
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算数は受験では絶対外せない教科

小杉先生も学生時代、算数・数学が苦手な生徒だったという。塾の講師として算数を教える機会が増え、算数のつまずきポイントがだんだん分かってきたそうだ。

「算数が苦手な生徒は、過去の自分を見ているようでした。苦手な生徒の気持ちがよくわかるので、上から教えることをせず、根気強く教えましたね」(小杉先生)

算数は他の教科と違って、「分からないことが多い状態」になることが多い。それが嫌いに繋がるそうだ。

「算数は“積み重ね”の教科なんです。1ケタどうしの計算→筆算→小数→分数…と進んでいきますが、前のことが分かっていないと先に進めないんですね。分からない部分だけを教えるのではなく、つまずいている場所にまで戻らないと先は理解できない教科なんです。」(小杉先生)

とにかく「基礎」が大事だという。特に自分のレベルに合わない難しい問題集を選ぶのはNG。基礎をすべて理解してから次のレベルに、と1段階ずつ上がっていかないと成績が上がらない教科なんだそうだ。

「とにかく背伸びをしないことです。私も高校まで算数・数学が苦手でしたが、基礎ができていないことを認めてから一気に状況が変わりました。高校の教科書を1から勉強したんです。根っこの部分をしっかり作らないと木は大きく育たないんですよね」(小杉先生)

ご自身も算数嫌いだったと話す小杉先生

親の間違った教え方が算数嫌いを助長させる

小杉先生の著書『小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本』には親が子供に勉強を教えるときのポイントが全パートに渡って掲載されている。親がどう教えるか、ここにも大きな落とし穴があるという。

「子供が算数の分からない問題をお父さん、お母さんに質問に来ることって結構多いと思います。こういう時は子供にとっていちばん分かりやすい教え方をしてあげるのが理想です。でも、子供が余計混乱する教え方をしてしまう親御さんもいるんですね。これが更に子供の算数嫌いを助長してしまうんです。例えば、『24分は何時間ですか』という算数の単位換算の問題。これを『分を時間に直すには60で割ればいい』というように、解き方だけを暗記させるような教え方は、望ましいとはいえません。『24分は、1時間(=60分)を60等分したうちの24にあたる。だから、24分は、(24/60=)2/5時間にあたる』というように、なぜそうなるのか筋道立てて教えることが大切です」(小杉先生)

また、小学生の算数には小学生なりの解き方があり、「数学」とは違う点があるという認識を持たなくてはならないという。教える前に本書の「教えるときのポイント」を一読しておくといいだろう。

ビジネスパーソン、主婦などにも好評な理由

本書はビジネスパーソン、ご高齢の方々にもよく売れているという。どういうニーズなのか?

「数字にコンプレックスを持っている大人が基礎教養として買ってくださることも多いようです。苦手意識をなくすためのスイッチとして使っていただければ嬉しいですね。頭の体操として買ってくださっている方もいらっしゃって、ありがたいです」(小杉先生)

電卓やエクセルがあるので、日常で計算をすることは少なくなった。果たして今、小数×小数の計算をパッとできる人はどれぐらいいるだろうか。小数点の位置を正しく打てるだろうか。大人が学びなおしとして本書を使っている人が多いというのも面白い傾向だ。

ビジネスシーンだけではない。よくスーパーやデパートなどである光景だが、

A.3個800円の石鹸
B.4個1,100円の石鹸


の同じ石鹸のセットが並んでいたとする。どちらがお得だろうか。

「これを800÷3と計算し始めるのは時間がかかります。こういうとき、最小公倍数を使うのがおすすめです。3と4の最小公倍数は12。12個にしたときの値段で比べるのがスマートです」(小杉先生)

A.12個 800×4=3,200円
B.12個 1,100×3=3,300円


よってAの方がお得となる。

「算数を使ってスマートに生きよう、がテーマです。本書で子供と一緒に学びながら、数字に苦しまない快適な生活を送ってほしいですね」(小杉先生)

算数に強い子供は根気強くあきらめない気持ちをもっていることが多いという。筋道を立てて計算式を作り、順序良く解く必要がある科目だからである。小杉先生がヒントを出そうとしても「ダメ! ヒント待って!」と最後まで自分で考え抜こうとする子供もいるという。

「大人でいうロジカルシンキング、論理的思考力ですね。算数の文章題を解くとき、『どうやったら解けるのか』複数の仮説を考え出し、その中から論理的に最適と思われる方法を、短時間で見つけることが必要になります。ですから、算数によって、順序だって考え、正しい選択ができる力を育てることができると思います。受験のための一科目と割り切るのではなく、お子さんの将来性も考えて算数に取り組んでほしいですね」(小杉先生)

算数嫌いのお子さんがいる方、数字に弱いなと感じる方、ぜひ本書を手に取ってみてもらいたい。算数に対する見方を必ず変えてくれるはずだ。

小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本
小学校6年間の算数が1冊でしっかりわかる本
著者
小杉 拓也 著
出版社
かんき出版
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小杉先生の人生を変えた一冊

「高校時代、和田秀樹先生の本を何冊も読んだのですが、そのうちの『受験は要領』(PHP文庫)が特に印象的でした。
難関大学も恐くない 受験は要領―たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ (PHP文庫)
難関大学も恐くない 受験は要領―たとえば、数学は解かずに解答を暗記せよ (PHP文庫)
著者
和田 秀樹 著
出版社
PHP研究所
本の購入はこちら
その本には、「3時間の予習より30分の復習のほうが、はるかに暗記量を増やす」や「1点でもより多く叩き出す答案作成術」といった学校では教えてくれない勉強法や実践的なテクニックが豊富に載っており、自分の勉強法を改善していくにあたって大いに参考になりました。

人生を変えた本は、稲盛和夫氏の『生き方』(サンマーク出版)です。

生き方―人間として一番大切なこと
生き方―人間として一番大切なこと
著者
稲盛 和夫 著
出版社
サンマーク出版
本の購入はこちら
・「この世へ何をしにきたのか」と問われたら、私は迷いもてらいもなく、生まれたときより少しでもましな人間になる、すなわちわずかなりとも美しく崇高な魂をもって死んでいくためだと答えます。
・人生・仕事の結果=考え方×熱意×能力
・目前の仕事にわき目もふらず打ち込むことが、人格を高めるためにもっとも有効な方法である

上記3点が特に心に残りました。生徒の指導や、本の執筆を通じて、さまざまな方と接する中で、人として成長できていることを実感できることがあります」(小杉先生)

小杉 拓也

東大卒プロ算数講師 志進ゼミナール塾長

東大在学時から、プロ家庭教師、中学受験塾SAPIXグループの個別指導塾などで指導経験を積み、常にキャンセル待ちの人気講師として活躍。

現在は、自身で立ち上げた中学・高校受験の個別指導塾「志進ゼミナール」で生徒の指導を行う。とくに中学受験対策を得意とし、毎年難関中学に合格者を輩出。指導教科は小学校と中学校の全科目で、暗算法の開発や研究にも力を入れている。算数が苦手だった子の偏差値を45から65に上げるなど、着実に成績を伸ばす指導に定評がある。

著書に、『この1冊で一気におさらい! 小中学校9年分の算数・数学がわかる本』『ビジネスで差がつく計算力の鍛え方─「アイツは数字に強い」と言われる34のテクニック』(ともにダイヤモンド社)『知るだけで数字に強くなる技術』(三笠書房)などがある。

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文責:井手 琢人 (2017/05/11)
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