人気投資系YouTuberに聞く「投資家のマインドセット」とは?
大きな成功を得たいなら、上手な「失敗の仕方」を学べ

人気投資系YouTuberに聞く「投資家のマインドセット」とは?

人生100年時代といわれ、コロナショックの影響もあり、将来への不安が押し寄せる昨今、「お金」への意識が高まっています。

「投資といっても何から始めたらいいのかわからない」 「お金を増やす方法を体系的に知りたい」

そんな方にうってつけの一冊が、『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』(かんき出版)です。著者の高橋ダン氏は、ウォール街の投資銀行でキャリアを積んだ、「投資」のスペシャリスト。日本語チャンネル登録者数27万人、英語チャンネルが6万人、再生回数3500万回以上の投資系YouTuberでもあります。

「知識」と「情熱」と「時間」があれば、どんな人でもお金持ちになれる可能性がある――。そう語るダンさんに投資家としてのマインドセットをお聞きしました。

投資系YouTuberになったのは「日本人のマネーリテラシー」を上げたいから

── ダンさんは2020年1月にYouTubeで、お金・投資・世界経済に関するチャンネルを開設され、投資系YouTuberとして活躍されています。まずはチャンネルを開設した経緯を教えていただけますか。

日本人のマネーリテラシーの向上に貢献したいと考えたためです。日本は失われた30年を経て、給料は増えないなかで消費税は上がる一方。人生100年時代といわれるいま、「自らの力でお金を増やさなくては」と考えている人が増えているように思います。とはいえ日本では、「投資はハードルが高い」と考えている方が多いのが現状です。

私は12歳で投資を始め、30歳になるまでウォール街で投資銀行業務・取引に従事していました。私の専門が日本株・アジア株で、10年以上日本の金融や経済を外から客観的に見てきました。数年前久々に日本を訪ねたときに接した方々が親切で、何かしらお役に立ちたいと思った。私が培ってきたお金の知識を伝えれば役に立てるのではないか。そう考えて、YouTubeでお金・投資・世界経済に関するチャンネルを開設したんです。毎日動画を配信し、おかげさまで10月には日本語チャンネルが登録者数27万人、英語チャンネルが6万人を突破しました。英語チャンネルをつくった理由は日本人に英語を教えたいと思ったためです。

── わずか10カ月で27万人とはすごいです! そこで満を持して『世界のお金持ちが実践するお金の増やし方』を執筆されたんですね。

伝えたいことを多くの人に届けるには、日本では書籍というツールが有効だと知りました。本を出すならば、投資の戦略やコモディティなどの具体的な投資アドバイスだけでなく、世界のお金持ちの思考法や世界経済の見方まで包括的に伝えたい。そこで本書では、これらを楽しく習得できるように、図解を多用して1テーマ1見開きにするなど、サクッと読み進められる工夫を凝らしました。

世界のお金持ちが実践するお金の増やし方
世界のお金持ちが実践するお金の増やし方
高橋ダン
かんき出版
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世界のお金持ちが実践するお金の増やし方
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著者
高橋ダン
出版社
かんき出版
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メンターからのアドバイスは「失敗の仕方をマスターしろ」

── 投資家のマインドセットとして、ダンさんが最も大事にしていることは何ですか。

1つは「心身の健康を維持すること」です。ウォール街にいたときは、ストレスフルな環境下で、健康を度外視して猛烈に働いている方々をたくさん見てきました。これでは投資業務でハイパフォーマンスを出し続けることはまず難しいだろうなと。

なぜならお金というのは自身のキャリアや子育てといった人生戦略と紐づいており、実にエモーショナルなものだから。身体・精神の両面が安定していないと、人生のコントロールが危ういものになってしまう。私自身も20代の頃はちゃんと睡眠をとれていませんでした。ですが、8時間睡眠を心掛けるようになってから、物事がうまくまわり始めました。

もう1つ大事にしているのが「失敗の仕方を学んでおくこと」です。私のメンターに、10年以上もの間、毎月一度も損失を出さずにいた方がいます。その方のアドバイスは「失敗の仕方をマスターしろ」でした。小さな失敗を重ねて上手に失敗する術を学んでおくと、大きな失敗を避けられるというのです。

これに関しては私にも痛い経験があります。ヘッジファンドで働いていたとき、わずか10分の間に7億円の損失を出してしまったのです。このときは自分を責めました。幸い運用を続けられたものの、半年ほどは不安でしたね。この大損失を生んだ原因は、自分の失敗をすぐに認められなかったから。失敗を認めて原因を分析していれば、短期間で切り替えられたはず。失敗を認めて、その回避策を考えることがいかに大事なのか、身をもって学びました。

撮影/難波雄史

短期投資もポートフォリオに組み込んだほうがよいワケ

── ここからは投資の戦略についてもお聞きしたいと思います。ダンさんは、「投資できる金額を決めたうえで、長期投資と短期投資に資金を分けるように」とアドバイスしています。「危機に強いポートフォリオ」をつくるためのポイントを教えていただけますか。

1つ目のポイントは、長期投資と短期投資の両方を組み合わせること。長期投資で安定的な収益を狙いながら、短期投資で高いリターンを狙う。これにより、全体的な投資リターンの底上げをめざします。目安としては、長期投資に7~9割、短期投資に1~3割。投資経験があってリスクへの許容度が高ければ、短期投資の割合を高めてもよいでしょう。

長期投資は利回りがそれほど高くなくても、定期的に積み立てていけば複利効果を得られ、資産を増やせます。一方、短期投資では長期投資よりもはるかに高いパフォーマンスを期待できる。その分、こまめに相場をチェックして相場の波に乗る必要がでてきます。マーケットも世界の情勢も日々変化していますから。この柔軟な対応が2つめのポイントです。

── 短期投資もポートフォリオに組み込んだほうがよい理由が気になります。

アルゴリズムとテクノロジーの発展により、各国の株価の値動きが大きく影響しあうようになりました。そのため、長期投資でポートフォリオの中身を分散させていたとしても、経済危機が起きたときにすべて下がる恐れがあるのです。実際、リーマンショックのときは、あらゆる資産の価値が一気に下がったこともありました。こうした際に、短期投資で長期投資の損失をカバーする必要がでてきます。

── 日本ではインデックス投資がおすすめとよくいわれますが、ダンさんは長期投資において、株式・社債・国債・コモディティのいずれにおいてもETF(上場投資信託)をおすすめされていますね。

個別株を選ぶのは初心者には難しい面があると思います。そのため、ETFで投資する地域や投資対象を分散させることをおすすめします。ETFがインデックスファンドと違うのは、証券取引所に上場しているという点。また、インデックスファンドよりも低コストのケースが多いという特徴があります。

長期投資の資金については、株式・社債・不動産4~6割、国債・現金1~3割、コモディティ2~4割に分類するとよいでしょう。それぞれの投資先はすべてETFで対応できます。特にコモディティというとハードルが高いかもしれません。ですが、金、銀、プラチナのほか、ベースメタルや農業商品などのETFを組み合わせると、かなりの多様化が望めます。本書ではそれぞれのおすすめETFを紹介しているので、自分に合ったものを判断してくださいね。

成功した投資家たちのインタビュー集から投資の心得を学ぶ

── ダンさんが投資のバイブルにしている本や投資に関して影響を受けた本は何ですか。

大学時代には投資に関する数多くの本を読みました。印象に残っている本は、世界有数のトレーダーたちが「投資業界での常識」と語る、“Market Wizards: Interviews with Top Traders”のシリーズです。成功した投資家たちが、いかにして年間に、時にはほんの数時間で数百万ドルも稼いでいるのか。彼らの人生を題材に、投資の戦略や背景を学べるのが本書の魅力です。『マーケットの魔術師』という翻訳書も出ています。

── 面白そうなご本ですね! フライヤーでは「ビジネスワークアウト」というコンセプトを広めようとしております。筋トレと同じく、1日のうちに「知的筋力」を鍛える時間をとり、学びを習慣化しようという提案です。そこで著者さまの「私のビジネスワークアウト」をお尋ねしております。ダンさんが日々新たな学びを得るために取り組んでいることを教えてください。

新しい学びを得るには、新しい人と会うことが一番だと考えています。いまはコロナの影響で機会が限られてしまいますが、以前はレストランやバーで出会った人に、「どんな仕事をしているの?」と話しかけていました。世界60カ国を旅していた頃はそうして友人をつくっていったんです。多様な人と話せば話すほど、視野が広がり、人生のオプションが増えていきます。「シャイだからそれはちょっと……」という方も、まずは職場であまり接点がない人に話しかけるところから始めてはいかがでしょうか。

── 最後にダンさんの今後のビジョンを教えてください。

ウォール街では生き馬の目を抜くような激しい競争が繰り広げられていました。頭にあったのは、実績や財産をいかに残すかということばかり。ですが、日本の歴史や文化を学ぶ機会に恵まれ、そこで大きな気づきを得ました。それは、「実績だけでは人から忘れられてしまう。社会に貢献してはじめて覚えていてもらえる」ということでした。社会をよりよいものにするために、お金に関する知識を発信する。この初心を忘れずにいたいですね。その達成度の指標として、YouTubeのチャンネルではチャンネル登録者数だけでなくユニークビュアー数を意識しています。現在約200万人程度ですが、これを1200万人程度(日本の人口の10%)にして、日本人のマネーリテラシー向上に少しでも寄与できたら嬉しいですね。

世界のお金持ちが実践するお金の増やし方
世界のお金持ちが実践するお金の増やし方
高橋ダン
かんき出版
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著者
高橋ダン
出版社
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高橋ダン(たかはし だん)

東京生まれ、日本国籍。10歳までの多くを日本で過ごす。その後アメリカに移り、12歳で投資を始める。21歳のときにコーネル大学をMagna Cum Laude(優秀な成績を収めた卒業生に与えられる称号)で卒業。

ニューヨークのウォール街で19~20歳のときにサマーインターンとして働く。その後 21歳でフルタイム勤務を開始し、投資銀行業務、取引に従事する。26歳でヘッジファンド会社を共同設立し、30歳で自身の株を売却。その後シンガポールに移住。約60カ国を旅し、2019年秋に東京に帰国。

2020年1月にYouTubeでの動画投稿を本格始動し、わずか3カ月でチャンネル登録者数が 10万人を超える。同年11月、日本語のメインチャンネルが27万人、英語チャンネルが6万人。 納豆と筋トレをこよなく愛する。

文責:松尾美里(2020/11/24)