『お金2.0』に描かれた未来は実現するのか?
新たな潮流、「分散化」を支えるブロックチェーン技術

gaetan stoffel/iStock/Thinkstock

ブロックチェーン技術、仮想通貨、シェアリングエコノミー、そして評価経済。新しいテクノロジーや新たな価値観を示す言葉が、これまでにない勢いで広がっている。テクノロジーの進展によって、私たちが当然視していた「お金」のカタチも、「信用」の担保の仕方、経済システムのあり方も変わっていく。

その変化は目まぐるしく、「私たちの生活にどんな影響を及ぼすのか」という全体像を捉えることは難しい。新しい技術やその背景にある思想を正しく理解し、自分なりの「視点」を手に入れるにはどうしたらいいか? 今回は、その一助となる「今、読むべき本」を紹介していきたい。

分散化という潮流、そして「価値主義」の台頭

お金の未来、そして資本主義の「先」にある世界について、わかりやすく提示してくれたのが、『お金2.0新しい経済のルールと生き方』(幻冬舎)。ある種「熱狂」と呼んでいいほど、多くのビジネスパーソンの心をつかみ、2018年2月時点ですでに19万部を突破した。ビジネス書グランプリ2018では、リベラルアーツ部門賞に選ばれている。

本書がこれほど注目された理由はここに書ききれない。しかし、その一つは、仮想通貨やブロックチェーンを駆使したトークンエコノミー、評価経済などが、「分散化」という潮流の一部であることを明確にしたことではないか。もう一つは、資本に変換される前の「価値」を中心とした経済システムの考え方、「価値主義」を打ち立て、私たちが生きる世界の「一つの未来図」を、鮮やかに描き出したことにある、と考えられる。

昨今、資本主義一辺倒のシステムに「限界」がきている、と薄々感じている読者もいるのではないだろうか。本書はもちろん、資本主義を否定しているわけではない。しかし、資本主義、価値主義、そしてまだ見ぬ新しい経済システムが複数並立し、私たちが自由に選びとっていく時代は、そう遠くはない未来に実現するかもしれないと本書は予測している。著者、佐藤航陽氏の言葉には、未来への希望が込められており、テクノロジーの最前線と実社会での活用の断絶を埋めてくれる力がある。

お金2.0
お金2.0
著者
佐藤航陽
出版社
幻冬舎

お金の歴史とは? 原点に立ち返る

こうしてお金や経済システムの未来に思いを馳せたとき、そもそも「お金」とは何か? という疑問が生まれる。貨幣の歴史をさかのぼり、その原点を知るうえで有用なのが『貨幣の「新」世界史 ハンムラビ法典からビットコインまで』(早川書房)だ。「精神(こころ)」、「身体」、「魂」という、一風変わった切り口からお金の多様な面を描き出していく。「お金」という存在についての認識を問い直してくれる一冊だ。

貨幣の「新」世界史
貨幣の「新」世界史
著者
カビール・セガール 小坂恵理(訳)
出版社
早川書房

ブロックチェーン技術の「希望」と「課題」

お金の「過去」を学んだ後に目を向けたいのは、「分散化」という潮流を下支えする技術、ブロックチェーン技術である。中央管理者が不要という「分散型」の特性をもち、インターネット以来の革命的な技術として、各方面から注目されている。

そのブロックチェーン技術を国家の運営の一部に組み込んでいる国、それがエストニアだ。教育、医療、警察、閣議など行政の電子化を徹底的に進め、電子国家、仮想国家の最先端として、世界から視察が絶えないという。『未来型国家エストニアの挑戦』(インプレスR&D)には、エストニアの過去・現在・未来が体系的にまとめられている。本書をひも解けば、私たちの生活やビジネスの未来を見通すヒントが数多く得られるにちがいない。

未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界
未来型国家エストニアの挑戦 電子政府がひらく世界
著者
ラウル アリキヴィ 前田陽二
出版社
インプレスR&D

ただし、現時点ではブロックチェーン技術、ブロックチェーン技術をベースにした仮想通貨には、「思わぬ落とし穴」もあるという。
フライヤーでは、帝京大学経済学部経済学科教授で経済学博士の宿輪純一氏にインタビューをさせていただいた。ブロックチェーン技術、仮想通貨が、これから社会にどのように適用されていくのかを考えるにあたり、より多面的な理解が必要であることを、痛感させられた。ぜひこちらもお読みいただきたい。


「激震、ブロックチェーン技術の思わぬ落とし穴」
インタビューはこちら

私たちの生活がどう変わっていくのか、それを支える新たなテクノロジーと経済システムの変化を理解するうえで、今読むべき本を取り上げた。様々な変化の「根幹」にあるものを読み解く一助にしていただければと思う。

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文責:松尾 美里 (2018/03/05)
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