松岡まどか、起業します

AIスタートアップ戦記
未読
松岡まどか、起業します
松岡まどか、起業します
AIスタートアップ戦記
未読
松岡まどか、起業します
出版社
出版日
2024年07月18日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

ゼロから事業を立ち上げ、短期間で会社を急成長させてIPOや売却をめざす。成功確率は低いが、うまくいけば億単位の資金を手にすることも夢ではない。そんなハイリスク・ハイリターンな起業がスタートアップだ。華々しいそのイメージとは裏腹に、泥臭く愚直な実態はあまり知られていない。スタートアップはどのような試練を乗り越え、エグジットを果たすのか?

本書は「AIスタートアップ戦記」の名の通り、その道筋を鮮やかに描き出す小説だ。事業のビジネスモデルを考え、投資家にピッチを行って資金調達をし、プロダクトをつくる。ピボットを迫られることもあれば、信用失墜の危機に陥ることもある。

著者の安野貴博氏は、「テクノロジーを通じて、誰も取り残さない東京をつくる」と掲げて、2024年東京都知事選に出馬し、一躍時の人となった。安野氏の起業やAIエンジニアとしての経験が本書のリアリティを高めているのではないだろうか。

外からは順風満帆のように見えるスタートアップも、その航海の道程は波乱万丈なものだ。本書を読むと、スタートアップの内実が生々しく伝わってくると同時に、スタートアップの苦難と可能性について理解を深められる。なにより、悩みながらも前に進んでいく主人公・松岡まどかの姿に勇気づけられるだろう。「そうきたか」と思わされる急展開の連続に、引き込まれるにちがいない。

読めば、背中を押され新たな挑戦がしたくなる。そんな本書をあらゆる方におすすめしたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

安野貴博(あんの たかひろ)
1990年生まれ、東京都出身。東京大学工学部卒。ソフトウェアエンジニア。2019年、「コンティニュアス・インテグレーション」で第6回日経星新一賞一般部門優秀賞(JBCCホールディングス賞)受賞。2021年、第9回ハヤカワSFコンテストに投じた『サーキット・スイッチャー』で優秀賞を受賞し、デビュー。

本書の要点

  • 要点
    1
    松岡まどかは大手企業リクディードの内定取り消しに遭い、起業を決意した。ところが、1年以内に10億円の企業を作らなければ1億円の借金を背負うという、とんでもない契約を投資家と結んでしまう。
  • 要点
    2
    松岡はAIによるヘッドハンティングサービスを考案し、ピッチを行い、資金調達をする。だが、この事業はうまくいかず、ピボットを余儀なくされる。
  • 要点
    3
    AI面接官へのピボットで事業は軌道に乗っていくが、ランサムウェアの被害に遭うなど、松岡はさまざまな困難に見舞われることとなる。

要約

第一話 プランB

松岡の才能

大学生の松岡まどかは、日本有数の大手企業であるリクディード社に内定し、内定者向けのインターンに参加することになった。そこで上司となる、三戸部歩に出会う。初日から遅刻した松岡に、三戸部は「常にプランBを持って動くようにして」と厳しく指導する。三戸部は有能だったが、彼女の部署は深夜までの残業が常態化していた。またリクディードではAIの使用も禁止され、先進的な改革ができない状態に陥っていた。

あるとき、三戸部が直面した業務トラブルを解決するために、松岡はAIの使用を提案する。松岡は自分の発言をログとして記録し、それを学習データとしたAIを構築していた。社内ではAIの使用が禁じられているため、松岡は自宅でAIを使って作業を行い、三戸部はそこに同席する。松岡はAIエンジニアとして天性の才能を持っており、三戸部はそれを目の当たりにするのだった。

「スタートアップを立ち上げます」
Shutthiphong Chandaeng/gettyimages

松岡らの事業部で事業部長を担当しているのは、郷原秀人という人物である。郷原は事業の失敗の責任を問われ、危うい立場にあった。その後任として役員会から注目されているのが三戸部だった。郷原は自分の立場を守るためにコストカットを迫られていた。自分の派閥の人間をやめさせてはいけないと、片っ端から内定者の内定を取り消していく。その手口は、募集時にAIの使用を禁止する条項があったことを引き合いに出し、内定者らに内定の辞退とそれを口外しないという同意書へのサインを迫るものであった。社会全体ではAIの利用が一般化しており、学生は少なからずAIを使用していたことから不利な立場にあった。松岡もこの手口で内定が取り消されてしまう。

同時期に、松岡はある投資家から起業をもちかけられていた。松岡はこれが自分にとっての「プランB」だと考え、起業を決意し、その投資家と契約する。ところが、この契約は「1年以内に時価10億円となる会社を作らなければ、1億円の借金を背負うことになるというとんでもないものだった。

もっと見る
この続きを見るには...
残り3864/4705文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2025.01.02
Copyright © 2025 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
人材ビジネス
人材ビジネス
水野臣介
未読
Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である
Simple 「簡潔さ」は最強の戦略である
須川綾子(訳)ジム・バンデハイマイク・アレンロイ・シュウォーツ
未読
人生に、上下も勝ち負けもありません。
人生に、上下も勝ち負けもありません。
野村総一郎
未読
朝の自分時間で人生はうまくいく
朝の自分時間で人生はうまくいく
枡野俊明
未読
賃金とは何か
賃金とは何か
濱口桂一郎
未読
1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス
1分で整う いつでもどこでもマインドフルネス
中村悟
未読
他人を気にしない自分になる
他人を気にしない自分になる
精神科医Tomy
未読
トップ営業の気くばり
トップ営業の気くばり
伊庭正康
未読