「5G」とは「5th Generation」、つまり「第5世代移動通信システム」のことである。5Gがもたらす変化を知るためには、5Gの技術的な特徴を理解しなければならない。
移動通信システムが1Gから4Gへと移行する過程において、常に「標準化」という作業がつきまとった。各国の通信業界関係者で国際標準を策定するためには、「5Gとはどういうものを実現するのか」というビジョンをすり合わせる必要があるからだ。
通信に関する国際標準化団体である国際電気通信連合では、標準化に先立って5Gのビジョンを発表している。それが(1)高速大容量通信、(2)超信頼・低遅延通信、(3)多数同時通信接続の3つである。
5Gと4Gにおける最も大きな違いは、これまで活用が難しかった高い周波数の電波を制御する技術にある。5Gに割り当てられた電波は「サブ6帯」の3.7GHz帯と4.5GHz帯、そして「ミリ波帯」の28GHz帯だ。これまでの4Gで最も高い周波数は3.5GHz帯であることから、5Gはより高い周波数を利用していることがわかる。
また、基地局のアンテナを集積する「Massive-MIMO」という技術と、基地局のアンテナから一定方向に高い指向性を持つ電波を発信して端末に送る「ビームフォーミング」という技術を組み合わせることで、基地局間の干渉を抑制。短距離しか飛ばない高周波数の電波を遠くまで飛ばせるようになった。
さらに5Gでは、高い周波数で連続した電波帯域の確保が可能だ。すなわちデータを運ぶ電波のカタマリ幅を長くできる(=大きな電波のカタマリとしてデータを送信できる)。
こうした技術を組み合わせることで、5Gは4Gの10倍以上の速さを実現するのだ。
5Gの遅延は1ミリ秒と、4Gの10分の1にまで短縮している。これも多数の技術の組み合わせによるものだが、その中でも直感的でわかりやすい技術革新として「エッジコンピューティング」を紹介する。
現在のスマホで、ネット上のコンテンツをアクセスする場合、以下のような流れをとる。
・スマホ→基地局→通信事業者のネットワーク→インターネット上のサーバー
一方でエッジコンピューティングを活用した場合、次のような短い通信経路で完結する。
・スマホ→基地局→基地局近傍に設置されたサーバー
エッジコンピューティングのような方式を導入できるのは、5Gのネットワークが「C/U分離」という仕組みをとっているからである。
通信には2種類あり、どの端末がどの基地局と接続しているかといった「制御を目的とした通信」と、コンテンツのダウンロードのような「データを伝送することを目的とした通信」に分けられる。現在これら2つの通信は一体となって運用されているが、5Gでは制御系の通信が「C(コントロール)プレーン」、データ伝送系の通信が「U(ユーザー)プレーン」という分離設計になっている。
多数同時接続とは、ひとつの基地局に大量の端末が収容できることを指す。4Gでは、ひとつの基地局の限界は100台程度だった。しかし5Gでは、1万台程度の端末が同時にアクセスしても、しっかり接続できる。これはとりわけ、あらゆる場所にセンサーが埋め込まれ、通信によってデータが収集されるIoT(モノのインターネット)時代を想定したものだ。
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