アメリカの心理学者エレイン・アーロン博士が提唱した「HSP(Highly Sensitive Person)」という概念がある。敏感でストレスを感じやすいHSPを、著者は親しみを込めて「繊細さん」と呼ぶ。
繊細さを、克服すべき課題ではなくいいものとしてとらえ、その生まれ持った能力をテクニックで活かして幸せに生きることはできる。本書ではそのノウハウを紹介する。
繊細さんは、まわりの人が気づいていない小さな変化を感じとっている。しかしそれは特殊なことではなく、生まれつき繊細な人は5人に1人の割合で存在するという。外部からかかるストレスに敏感に反応できる存在は、実は人間以外の高等生物にも見られる。繊細であることは、周囲の危険をいち早く察知し、種を生きながらえらせる一つの「手段」とも言えるのだ。つまり、繊細さんが小さなことに気づくのは、自然なことなのである。
繊細さんは、周りの人のやさしさや、斬新なアイデアなど、よいことにもたくさん気づける。しかしそれだけでなく、痛みやストレスも同時に感じ取ってしまう。人の機微によく気づくせいで人といると疲れるが、人間が嫌いだというわけではない。一人でゆっくりと心を休める時間が人一倍大切なのだ。
さらに、問題の解決には何がベストなのか、深く考えられるからこそ逆に動けなくなってしまうこともある。完璧主義者だと誤解されることもある。そんなときは、「ベストはさておき、とりあえずこうしよう」と前向きに軽く考えてみることで、物事を進められる。
このように、繊細さんはたくさんのことに気づいてしまうので、そのぶん振り回されてしまいがちだ。だから、「私はこうしたい」ということを大切にして、自分の本音に耳を澄ませるようになっておきたい。そうすると、「気になる」ことを引きずりすぎずに、元気にのびのびと過ごせるようになる。
繊細さんは、刺激から受けるダメージをどのようにして減らせばよいだろうか。
自分を変えなくては、我慢しなくてはと心を閉ざすのではなく、物理的にシャットアウトする、環境を変えるということが基本となる。そして、五感の中で自分が一番鋭いと感じるものから取り組むのがよい。目についたものを幅広く察知する人、どんなに小さな音や声でも拾ってしまう人など、人によって感覚の鋭いポイントは異なる。鋭敏なものからコントロールできるようにしていくとよい。
これには、予防とケアの二つの側面がある。
著者は、実際に繊細さんに効果があった方法や、繊細さんたちから聞いたという多くの方法をまとめているので、ここではその中からいくつか拾い出して紹介したい。
たとえば、視覚の鋭い人は、メガネの度を落とす、サングラスをするなどして見えるものを減らしてみると効果があるだろう。
聴覚が鋭い人は、刺激となる音が出るもののスイッチを切ったり、耳栓、ノイズキャンセリング機能付きのイヤホンを持ち歩いたりするとよい。住まいについても、騒音に悩まされることのないよう、幹線道路や線路の近くを避けるのも大事だ。
また、五感についてということ以外だが、次のような予防策もある。楽しいイベントも刺激の一つとなるので、そのあとに何もしない休みの日をあらかじめ入れておくという方法だ。
敏感に刺激を感じすぎてくたびれていると思ったら、やりすぎかと思うくらい外部の刺激を抑えるようにするとよい。
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