「どうしたら自分に合った仕事を選べるのだろう」という問いは、「どうしたら幸せになれるのだろう」という問いとほぼ同意義だ。それほどまでに、仕事が人生に占める位置は大きい。にもかかわらず、多くの人が職業選択を間違え、不幸な人生を送っている。
そこで著者は、適職を「あなたの幸福が最大化される仕事」と定義し、適職に巡り合うための方法を科学的に導き出した。「ステップ1:幻想から覚める(Access the truth)」、「ステップ2:未来を広げる(Widen your future)」、「ステップ3:悪を取り除く(Avoid evil)」、「ステップ4:歪みに気づく(Keep human bias out)」、「ステップ5:やりがいを再構築する(Engage in your work)」。この5つのステップ「AWAKE」を順に追うことで、意思決定力が確実に高まり、適職を選べる確率が跳ね上がる。
そもそも人はなぜ職業選択を間違えるのか。それは人類の歴史上、職業選択という悩みが生まれたのはごく最近であり、人の脳には職業を選ぶための能力が備わっていないためだ。人に「偏見や思い込みに思考が支配されがち」という特性があるのも、誤りに拍車をかける。
世の中にはさまざまなキャリアアドバイスが存在するが、その多くが信憑性に乏しい。なぜならアドバイザー個人の経験や嗜好だけで判断しているからだ。したがってそうしたアドバイスを参考に職業選択を試みても、なかなか正解にたどり着けないのである。
世の中に流布している役に立たないアドバイスを、著者は「仕事選びにおける7つの大罪」として挙げている。(1)好きを仕事にする、(2)給料の多さで選ぶ、(3)業界や職種で選ぶ、(4)仕事の楽さで選ぶ、(5)性格テストで選ぶ、(6)直感で選ぶ、(7)適性に合った仕事を求める――これらのアドバイスを鵜呑みにしている限り、適職には巡り合えない。
たとえば、よく耳にするところの「好きなことを仕事にしよう」というアドバイス。好きなことなら楽しく続けられるし、努力も苦にならず、おのずと良い結果も生み出せるということで、一見すると正しいアドバイスのように思える。
だが多くの研究データは、「自分の好きなことを仕事にしようがしまいが最終的な幸福感は変わらない」ことを示している。いかに好きな仕事であっても、仕事である以上、面倒な作業や人間関係にまつわる悩みは、どうしてもついて回る。好きな仕事を求める気持ちが強いほど、現実の仕事に対するギャップを感じやすくなり、結果的に幸福感は薄れてしまうのだ。
ならば収入で仕事を選ぶのはどうか。やりたいことが見つからないという人の多くが、「ではせめて給料の高い仕事を」と思うのは自然の流れだろう。好きになれる仕事でなくても、お金さえあればプライベートを充実させることができるし、プライドも満足させられる。
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