本書では、各社の人事評価「上位5%」の社員の行動や働き方を調査し、そこで見つけた共通点が紹介されている。対象となる「5%社員」には、デスクに定点カメラを設置したり、ICレコーダーやセンサーを装着してもらったり、ヒアリングをさせてもらったりして、行動や発言を記録。これらのデータをAIと専門家によって分析して、「5%社員」の共通点や、95%の一般社員との違いを抽出した。「5%社員」の調査を元に導き出した成功ルールは、その後、29社で実証実験を行い、「5%社員」以外の社員でも効果がみられたという。
本書の冒頭ではまず、「5%社員」の5原則が紹介されている。(1)「目的」のことだけを考える、(2)「弱み」を見せる、(3)「挑戦」を「実験」と捉える、(4)「意識変革」はしない、(5)常に「ギャップ」から考える、だ。
残業時間は減らさなければならないが、業務量は変わらない。その状況は誰しも同じだが、「5%社員」と「95%社員」では、時間の捉え方が異なる。「5%社員」は限られた時間の中で成果を上げる方法を探るが、「95%社員」は限られた時間の中で「やることリスト」を終えることに夢中になり、作業を終えることに安心感を持ってしまう。
16万人を対象にした調査で、「資料が完成すると満たされた気分になる」と回答した社員は89%いたが、「5%社員」のうち73%はそれに該当しなかった。「5%社員」の多くが満足感を得ると回答したのは、作成した資料によって成果を出せたときである。つまり、「95%社員」にとっては作業完了が充実感を得るポイントである一方、「5%社員」は成果達成が充実感を得るポイントなのだとわかる。
著者のクライアント企業67社で調査した結果、従業員800名以上の企業では、1時間の役員会議のための資料作成に70時間以上の時間がかかっていた。しかしその一方で、作られた資料のうち23%は使われていなかった。
クライアント企業3社で重要「そうな」資料の再利用状況を調査したところ、1年以内に使用されたのは約7%。約1.2万枚の資料は保管場所を取るだけの厄介者になってしまっていたのだ。
「95%社員」は、課題に直面したらすぐに解決を目指す。だが長い時間や費用をかけた挙句、解決できないままだったり、また同じ問題が発生したりする。なぜなら、目の前の課題解決にばかり注力し、本質を解決しないままだからだ。
一方、「5%社員」は課題解決の「型」を持ち、再現性のある解決方法を蓄積している。だから解決が早く、再発もない。
この「型」は「デザイン思考」と似ている。「デザイン思考」とは、ユーザーの痛みや悩みを理解し、その発生原因を定義して仮説を立て、それを外部のヒアリングを元に改良していく「型」のことだ。「どうやって」解決するかの前に、「なぜ」その問題が発生したのかを追求する。
「5%社員」の思考方法も、それと同じだ。問題発生時は解決だけを優先せず、問題発見→問題分析→解決策立案と整理していけば、最短で解決できる。
クライアント企業の社員16万人に「幸せを感じる時間」を調査したところ、
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