2024年5月に時価総額が3兆ドル(当時約468兆円)を超え、一時はマイクロソフトを抜いて時価総額世界一位になったエヌビディア。エヌビディアの成功はアメリカンドリームを体現したように見えるが、実は大きな失敗もしていた。
1993年、エヌビディアはシリコンバレーで誕生した。その原点は、ゲーム用のグラフィックス画像を描くためのコンピューティング技術であり、それを半導体チップで実現しようとしていた。95年には、オープンスタンダード仕様を使わずに独自仕様にした。それがうまくいかず、110人中70人の社員をレイオフせざるを得なくなる。創業者ジェンスン・フアン氏は、最高の技術で作れば結果はついてくるというのは間違いであり、市場や消費者の需要を読むことに精通すべきだと学んだ。そこから戦略を転換し、全く新しいグラフィックチップ「RIVA 128」の開発に至ったのだ。
あるとき、「RIVA 128」チップを実装している台湾企業の製品の不良率が30%に達してしまう。これは非常に高い数値だ。経営陣のマラコウスキー氏は手作業でチップを全品テストしようと言い出した。反対していたフアン氏も最終的には賛同することに。経営陣がリードして、数十万個のGPUチップを1個ずつパソコンに載せ、検査を始めた。これは数千時間に及ぶ作業となった。社員一丸となって行ったこの作業は、後にみんなで会社を救った伝説となる。
一丸となって遂行したこの検査作業と、後述する2016年のAIへの戦略転換は、エヌビディアの企業風土に大きな影響を及ぼした。経営陣と社員との関係を対等にしたのだ。フアン氏はこう語る。「この会社に上司はいない。いるとすれば、プロジェクトが上司なんだ」。この言葉は、社員に責任とかなりの裁量があることを物語る。
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