エヌビディア

半導体の覇者が作り出す2040年の世界
未読
エヌビディア
エヌビディア
半導体の覇者が作り出す2040年の世界
未読
エヌビディア
出版社
出版日
2024年10月04日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

半導体業界の覇者として一気に名を馳せたエヌビディア。2024年には一時、時価総額世界一位に躍り出た。エヌビディアのニュースを聞かない日はないほどだ。では、なぜエヌビディアは世界トップになれたのか。エヌビディアの強みとは? 半導体業界の未来はどのようなものなのか。こうした点に迫るのが本書だ。

国際技術ジャーナリストの著者は、40年間、半導体業界とその応用分野を精力的に取材し続けてきた。そして、エヌビディアの飛躍をやや興奮気味で見ていたという。同社はゲーム用のグラフィックスから始まり、そこで培ったGPUを数値演算専用のコンピューティングアクセラレータへと発展させ、さらにニューラルネットワークモデルを使ってAIを実現させた。今やエヌビディアの影響力は、データセンター、自動運転、ヘルスケアなど、幅広い産業に広がっている。同社が創業後AIにたどり着くまでの道のりから、半導体技術の今後の可能性までを、著者は丹念な取材のもとに描き出す。

印象深いのは、CEOジェンスン・フアン氏の価値観が同社の社風や戦略に大いに影響を与えている点である。彼は未来志向で、「10年単位でものを考える人物」だという。たしかに、世界は10年ごとに大きな変化を遂げている。現在のAI技術は2012年のAlexNet を機に発展し、10年後の2022年には、生成AIのChatGPT が登場した。では、次の10年後は何が起きるのだろうか? 本書は読者の知的好奇心を大いにかきたててくれるはずだ。

ライター画像
松尾美里

著者

津田建二(つだ けんじ)
国際技術ジャーナリスト。News & Chips 編集長。東京工業大学理学部応用物理学科卒業後、日本電気に入社。半導体デバイスの開発等に従事する。その後、日経マグロウヒル(現 日経BP)に入社、「日経エレクトロニクス」「日経マイクロデバイス」、英文誌「Nikkei Electronics Asia」等の編集記者、副編集長、シニアエディターを経て、アジア部長、国際部長などを歴任。海外のビジネス誌の編集記者、日本版創刊や編集長を経て現在に至る。著書に『知らなきゃヤバイ! 半導体、この成長産業を手放すな』『欧州ファブレス半導体産業の真実』(以上、日刊工業新聞社)がある。

本書の要点

  • 要点
    1
    エヌビディアのフラットな企業風土に大きな影響を与えたのは、社員一丸となって行った不良品検査作業と、2016年のAIへの戦略転換である。エヌビディアの上司はプロジェクトだ。
  • 要点
    2
    エヌビディアの強みは、AIと半導体という2つの成長技術を持ち、あらゆる産業にトータルソリューションを提供できることだ。
  • 要点
    3
    エヌビディア創業のヒントになったのは、1990年代初めの日本で起きていた家庭用ゲーム機におけるハードウェア性能競争である。

要約

【必読ポイント!】 エヌビディアとは何者か

大きな失敗と学び

2024年5月に時価総額が3兆ドル(当時約468兆円)を超え、一時はマイクロソフトを抜いて時価総額世界一位になったエヌビディア。エヌビディアの成功はアメリカンドリームを体現したように見えるが、実は大きな失敗もしていた。

1993年、エヌビディアはシリコンバレーで誕生した。その原点は、ゲーム用のグラフィックス画像を描くためのコンピューティング技術であり、それを半導体チップで実現しようとしていた。95年には、オープンスタンダード仕様を使わずに独自仕様にした。それがうまくいかず、110人中70人の社員をレイオフせざるを得なくなる。創業者ジェンスン・フアン氏は、最高の技術で作れば結果はついてくるというのは間違いであり、市場や消費者の需要を読むことに精通すべきだと学んだ。そこから戦略を転換し、全く新しいグラフィックチップ「RIVA 128」の開発に至ったのだ。

エヌビディアには上司はいない
JasonDoiy/gettyimages

あるとき、「RIVA 128」チップを実装している台湾企業の製品の不良率が30%に達してしまう。これは非常に高い数値だ。経営陣のマラコウスキー氏は手作業でチップを全品テストしようと言い出した。反対していたフアン氏も最終的には賛同することに。経営陣がリードして、数十万個のGPUチップを1個ずつパソコンに載せ、検査を始めた。これは数千時間に及ぶ作業となった。社員一丸となって行ったこの作業は、後にみんなで会社を救った伝説となる。

一丸となって遂行したこの検査作業と、後述する2016年のAIへの戦略転換は、エヌビディアの企業風土に大きな影響を及ぼした。経営陣と社員との関係を対等にしたのだ。フアン氏はこう語る。「この会社に上司はいない。いるとすれば、プロジェクトが上司なんだ」。この言葉は、社員に責任とかなりの裁量があることを物語る。

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要約公開日 2024.11.17
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