まったく新しいアカデミック・ライティングの教科書

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出版社
出版日
2024年07月30日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

本書は、学部生の期末レポートから研究者の学術論文に至るまで、幅広くアカデミックな文章作成に必要な技術を身につけるための実用的なガイドである。研究者にとって「論文が書ける」ということは、スタートラインに立つための基本的なスキルだ。本書はそのスタートラインに最速で立つための道筋を示している。

本書を一読するだけでも、アカデミックな文章を書くための基本的な視点がみるみる養われていくのが感じられる。精読し、指示通りにトレーニングを重ねれば、確実にアカデミック・ライティングのスキルが向上するだろうと期待が持てる。しかし本書が指南するのは単なる文章術に留まらない。論文の書き方だけでなく、「なぜ論文を書くのか」という根本的な問いにも立ち返り、読者に深い洞察を促している。

著者の専門である人文学の研究は、ときに「何の役に立つのかわからない」と評されることがある。人文学の研究は「実用性」に結びつけにくく、他分野の研究者から評価されない場合も少なくない。研究者自身も「なぜこの道を進んでいるのか」と迷うことがあるだろう。論文をスムーズに書けるようになったとして、その先の研究者人生に、どのような意味があるのか。

本書は「論文を書く」という行為を超えて、自分の分野の研究の究極目的に向き合い、研究を通じて世界や人生とのつながりを見出すことの大切さを説いている。初学者やアカデミック・ライティングをさらに洗練させたい中・上級者にとっても、研究者としてのキャリア形成に新たな視点を提供してくれる一冊だ。

ライター画像
千葉佳奈美

著者

阿部幸大(あべ こうだい)
1987年、北海道生まれ。筑波大学人文社会系助教。
専門は日米文学史。
2023年に博士号取得(PhD in Comparative Literature)。
研究コンサルティングのベンチャー、アルス・アカデミカ代表。
最新の情報はホームページ(www.kodaiabe.com)を参照。

本書の要点

  • 要点
    1
    論文とは、核となる主張であるアーギュメントを提示し、その正しさを論証する文章である。したがって、論証を必要としない主張はアーギュメントにはなり得ない。
  • 要点
    2
    論文には「引用」と「批判」が必要だ。論文のアカデミックな価値を示すには、先行研究を引用し、自分のアーギュメントがそれを更新するものであることを示さなければならない。
  • 要点
    3
    論文はパラグラフ・ライティングによって書くべきだ。これは「従うべきルール」ではなく、執筆を助けてくれる「活用すべきツール」だと理解しよう。

要約

論文執筆のすべてを伝授

あらゆるレベルの書き手に役立つ知識と技術

本書は、学部生からプロの研究者までのあらゆる学徒を対象に、アカデミック・ライティングに必要な要素を徹底的に要素分解し、プラクティカルに解説する。初学者が本書を通して自力で論文が書けるようになること、中級から上級までの院生や研究者が、より優れた論文を短時間でシステマティックに書けるようになることが目標だ。

困ったことに、人文学の論文にはきまったフォーマットがない。自然科学系の論文にはきまったフォーマットがあり、客観的な事実の記述が多くを占める。ところが人文系の論文では、冒頭から自分の言葉で語り始め、数万字を語りつづけなければならない。現在の大学教育でも人文系のアカデミック・ライティングは、カリキュラム化できておらず、書けるようになる人はなるし、ならない人はならないという状況が続いている。だが、学術論文を書くために必要な要素を分解してみると、実態は再現可能な知識と技術がほとんどであることがわかる。

本書を読めば、論文のなんたるかを理解し、自分の文章が学術的に価値をもつ論文として理解されるためにはどのようなトレーニングを積めばいいかを把握することができるはずだ。

【必読ポイント!】 論文とはどのような書き物か

論文にはアーギュメントが必須
Feodora Chiosea/gettyimages

論文を書くにあたり、まずは論文がどのような書き物かを概念的に理解しておく必要がある。

論文とは、「ある主張を提示し、その主張が正しいことを論証する文章」である。まず、論文は主張しなければならない。ここでは、日本語の「主張」という言葉のイメージから離れるために、英語の「アーギュメント(argument)」を用いて、この語を定義していく。

アーギュメントとはまず、論文の核となる主張内容を一文で表したテーゼである。「テーゼ」は、「論証が必要な主張」と定義する。論文中には大小いくつものテーゼが含まれるが、もっとも重要な大テーゼがアーギュメントである。

『12週間でジャーナル論文を書く』の著者であるウェンディ・ローラ・ベルチャーは、論文が学術誌で不採用になる最大の理由は、アーギュメントがない、あるいは適切に表現できていないことだといっている。つまり、多くの論文はなにかしら主張しているつもりでいて、アーギュメントをもつことに失敗しているのだ。

アーギュメントは論証が必要な主張

どんな主張が学問的なアーギュメントと認められるのか、『アンパンマン』を題材に考えてみよう。

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要約公開日 2024.11.16
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