人的資本経営、ジョブ型雇用、賃上げ、リスキリング、週休3日制、男性有休、高年齢雇用……今、かつてないほど人と組織にまつわる課題が注目される時代が到来している。
特に現在、社会的関心を集めているのは「人的資本経営」だ。これは、企業が従業員一人ひとりに投資を行い、そこで発揮される価値を最大限にして、企業全体のパフォーマンスを最大化しようとする経営のことを指す。近年、人的資本をはじめとする非財務情報の開示が国際的な経営トレンドとなる中、日本においても投資家に向けた人的資本情報の開示が進んでいる。
多くの企業において人と組織にまつわる課題が長期的に重要な経営課題になると予想されるこの時代、人事部の役割は「黒子役」から「主役」に変化しつつある。これからは人事パーソン一人ひとりの活躍が期待される「人事パーソンの時代」なのだ。
人と組織にまつわる課題は次から次へと登場している。それに伴い、人事の仕事には大きく分けて3つの「質的な変化」が生じつつある。
1つめは「課題解決型人事」だ。多くの企業にとって人事はルーティン業務ではなくなっている。先行事例のないテーマに対して、課題を再定義し、自社の経営や組織に最もフィットする制度や施策に落とし込んで実行する業務が増えつつある。
2つめは「テクノロジーへの対応」だ。課題解決型の人事として価値を生み出すためには、テクノロジーを活用し、ルーティン業務の負荷を減らす必要がある。
3つめは「データに基づいた人事」だ。人事に関する意思決定のあり方は、従来の「KKD(勘と経験と度胸)」から、データに基づいたものへとシフトしている。採用から育成、定着支援、従業員満足度やエンゲージメントの測定・向上など、人事におけるさまざまな指標をデータ化して蓄積し、活用することが求められている。
このような変化のもと、人事の仕事内容は格段に高度化しているが、それに対応できていない人事パーソンも少なくない。日本企業はただでさえ人材育成への投資に及び腰であるうえに、事業部門の課題解決が優先され、人事部門への人材投資は後回しにされがちだからだ。また人事部門も、自部門を「枠の外」に位置づけて考える傾向にある。
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