タイムパフォーマンス、すなわちタイパという言葉があるように、時間をかけずに物事を済ませたいと願う人が増えている。やるべきことを短時間でこなせば、自分時間を作ることができる。
仕事をテキパキ進めるには、時間をかけてよい仕事と、かけなくてよい仕事を見極めることが重要だ。まずは、かけた時間に対してどのくらい成果を上げられるか、「時間対効果」を意識してみよう。
生産性は、インプット分のアウトプットで示すことができる。数式にするなら、分母が時間で、分子が成果だ。例えば同じ報告書でも、3時間で作る人より1時間で作る人の方が生産性が高いと言える。仕事に取り組む前に、どれくらい時間を投入するか、計画することが大切だ。
そして、仕事に優先順位をつけることも忘れてはならない。優先順位が高い仕事には、時間をたっぷり投入して大きな成果をねらうべきだし、時間をかけても利益に直結しない定型業務の優先順位は低くして、素早く終わらせたほうがいい。
プロとして報酬を得るからには、時給に見合ったアウトプットが求められる。1日8時間・月20日間働くとして、年収400万円の人は時給約2000円、年収500万円の人は時給約2500円となる。
これからはタイパを意識し、仕事に着手する前に、どのくらいの時間を投入するかを考えてみよう。
計画を立てずに目の前の仕事を始める、何でも引き受けてしまう、自分ですべてを処理したがる、細部までこだわる......。残業してしまう人は、このような傾向がある。性格はまじめで責任感が強く、完璧主義。周りの人を巻き込むのが苦手である。
そんな人が少しでもラクになる方法を2つ提案する。
ひとつ目の提案は、完璧を求めないことだ。仕事には、全員に共通する完成形はない。だから、終わりは自分で決めなければならない。正確性は必要ではあるが、丁寧すぎて仕事は遅いとなると、残業代がかさみ、会社からの評価は下がるのが現実だ。そこでおすすめなのが、80点主義だ。例えば、大至急の資料作成を依頼されたら、スピードを優先する。相手が急いでいる以上、多少の誤字脱字は仕方ないと割り切ってでも、できるだけ早く仕上げることが重要だ。
2つ目の提案は、自分に期待されている役割を確認してから仕事に着手することだ。著者はある会社から、業務日報の改善を依頼されたことがある。その企業では、社員はWordやExcelを使用し「今日やった仕事」を時系列で詳細に書いて提出していた。ところが、忙しい社長が求めていたのは、外出先のスマホで読める、「どんな成果を上げたのか」をメール本文で箇条書きにしたものだったのだ。この例のように、指示した側と受けた側の認識にズレが生じると、お互いにムダな労力と時間を使うことになる。相手の期待度を最初に確認しておけば、ムダを防ぐことができる。
ミス防止に役立つ知識に、「ハインリッヒの法則」というものがある。
法則の発表者であり、工場の労働災害について調べたハインリッヒは、1件の重大な事故や災害の裏には、29件の軽い事故や災害があること、そして300件のヒヤリ・ハットがあることを論文で発表している。ヒヤリ・ハットとは、事故や災害にはならなかったものの、「ヒヤリとしたりハッとした出来事」を指す。
この法則は労働災害の統計であるが、オフィスワークにも通じるところがある。ミスをしたら、表面化した事象に目をとられるのではなく、それより前にヒヤリ・ハットはなかったかとふりかえってみよう。危ないと感じた時点で異常を見つければ、大きなミスを防ぐことができる。
ミスをすると時間のムダが生じる。だから、ミスを防ぐことも時短テクニックのひとつだ。修正点や改善点に気づいたら、「その場で修正」を基本にしよう。「後で直そう」と先送りすれば、記憶が遠のき、だんだんと億劫になってしまう。ミスの芽は早いうちに詰んでおくこと。その場で対処して次回のミスを防止し、ノーミスを目指そう。
優先順位をつけて段取りよく仕事を進めるために、ToDoリストを活用したい。思いつくままにやるべき仕事を並べただけのリストでは、残念ながら備忘録としてしか役に立たない。ここにひと手間加えて、優先順位をつけていくと、ToDoリストはあなたを強力にサポートしてくれるものに変わる。
洗い出した仕事に優先度順に「1、2、3」と番号を振り、スケジュール表の空いている時間帯に番号順に書き込んでみよう。これなら、優先順位が最も高い仕事を、頭が冴えて集中力が高い朝一番にこなすことができる。優先順位が低いものや短時間でできる仕事は、順位を書かずに書き出しておき、スキマ時間や待ち時間を活用して処理すれば十分だ。前日の帰宅前、もしくは当日朝の5分間をリスト作りにあてるだけで、段取りよく仕事を進めることができる。
ToDoリストをさらに進化させるなら、適切な投入時間を書き込んでみよう。このとき、「どれくらい時間がかかるか?」ではなく、「どれくらい時間をかけるべきか?」という観点で仕事を見極めることが重要だ。
計画と実際にかかった時間がずれないよう、実際にかかった時間を記録しておくといい。自分の適切な時間配分が徐々につかめるようになり、次の計画に大いに活かせるようになるだろう。
締め切りは、仕事を依頼する側が決めることが多い。この期日だけをスケジューラ―に入れておいた場合、不測の事態が起こって遅れてしまうことがある。
おすすめは、相手とだけではなく、自分と約束を交わすこと、すなわち「My締め切り」の設定だ。My締め切りは、本来の期日の1日以上前に設定し、デッドラインより早く提出する作戦である。予定表には、着手する日や作業する日も書き入れ、納期から逆算して計画を立てるのが望ましい。
締め切りに1日でも遅れるとプロ失格と言われるが、1日でも早く提出すると感謝されるものだ。予期せぬ出来事は誰にでも起こりえるからこそ、締め切りよりも前に提出する習慣を身につけよう。
さらに、「ミニ締め切り」を作るのも、時間管理に有効だ。例えば、毎月5日締め切りの請求書提出があったとして、5日の締め切りだけを予定に入れていても、ダブルチェックや決裁を含めると間に合わない可能性がある。そこで、「請求書作成は、前月末日まで」「先輩へのダブルチェック依頼は、月初2日まで」「課長へのチェック依頼は、月初3日まで」「メール送信は、月初4日まで」と、ひとつの仕事の途中の段階で、いくつかの締め切りを作っておくといい。
作業ごとに締め切りを設定することで、自分自身も余裕が持てるし、周りの人の協力も得やすくなり、進捗管理がうまくいく。
「スモールステップ」とは、米国の心理学者バラス・フレデリック・スキナー氏が開発した理論だ。これは、大きな目標を成し遂げるために、目標を小さく細分化するという提案である。
大きな目標だけを掲げていると、無理だと諦めてしまいたくなることもある。だが、小さな目標なら取り組みやすく、「ここまでできた!」と達成感を感じやすくなる。
これを実践するには、まずは仕事を細かく分けてやることや手順を書き出すといい。例えば、「提案書を作る」という仕事は、時間がかかりそうで大きな仕事に思える。これを細かい工程に分け、作業時間を見積もっていく。
例えば「ノートを読み返し、お客様の要望を確認(5分)」「アイデアをノートへ書き出す(15分)」「テンプレートを使用し、Power Pointで提案書を作る(30分)」「セルフチェックし、ミスがあれば修正する(10分)」などになる。こうして細かい工程に分けることで、気が重く感じられていた仕事も、一つひとつは難しくない作業だと実感できる。また、工程と所要時間を書き出すことで、時間の見積もりが適切か、ムダな作業がないかなども確認しやすくなる。
仕事を支持する側が言葉を端折ると、受け手の判断にゆだねることになり、期待通りの仕事にならないことがある。そうなると、双方の時間をムダにしてしまうことになる。
仕事を依頼するときは、6W3Hを使って、「誰が(Who)」「誰に(Whom)」「何を(What)」「いつ(When)」「どこで(Where)」「なぜ(Why)」「どのように(How)」「いくつ(How many)」「いくら(How much)」を伝えるようにしよう。
例えば、「A社へ提案するため商品Bの資料を作ってください」とだけ言うより、「A4サイズ1枚にまとめて、10月7日の15時までに私に提出してください」という情報を加えたほうが行き違いがなくせるはずだ。
仕事には情報の正確さが求められるため、主観的表現ではなく、客観的な数字で伝えたほうがいい。「朝早く」は「午前9時」、「今週いっぱい」は「11月15日(金)18時必着」というように、数字を入れて伝えれば、コミュニケーションミスは起こりにくくなる。
報告は「PREP(プレップ)法」を活用すると、簡潔かつ説得力のある形で相手に伝えることができる。これは、4つの英単語の頭文字を組み合わせた言葉だ。
最初のPでは、「結論(Point)」から伝え、次のRで「理由(Reason)」を述べる。3つ目の頭文字であるEには2つの意味があり、「証拠(Evidence)または「実例(Example)」のどちらかを入れ、最後もう一度Pで「結論」を念押しするかたちだ。
このPREP法を実践すると、短い時間で大事なことを伝えられてムダがなく、相手を満足させることができる。もし、すぐにマスターするのが難しければ、「結論から申しますと」を口癖にするよう心がけるのがおすすめだ。
約束した日時を変更したり、資料の修正や差し替えをお願いしたりするときは、「対比法」を使うといい。対比法は、何かを伝えるときに別のものと比べる方法だ。ポイントは、ビフォーとアフターの2つをセットにして伝えることだ。例えば「チェックリスト」というファイルを送ってから内容を修正した場合、上書き保存した同名のファイルを再送すると、相手は新旧の区別がつけにくい。「チェックリスト_2」のようにファイル名を変え、「『チェックリスト』を『チェックリスト_2』に差替えをお願いします」と伝えれば、受け手の混乱を防ぐことができる。
3,400冊以上の要約が楽しめる