《働きやすさ》を考えるメディアが自ら実践する

「未来のチーム」の作り方

未読
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「未来のチーム」の作り方
未読
「未来のチーム」の作り方
出版社
出版日
2019年06月28日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書は、「最も成功したオウンドメディア」と評判の「サイボウズ式」の編集部が挑戦する、次世代型チーム作りを紹介したものだ。

サイボウズ式は、チームワークを向上させるグループウェアを提供するサイボウズが、「新しい価値を生み出すチームのメディア」をテーマに掲げるオウンドメディアだ。その編集長の著書らしく、本書には、ITツールを駆使しながらコミュニケーションを加速させ、チームの価値を最大化する具体的なヒントであふれている。

だが、本書の読みどころはそればかりではない。サイボウズが3社目の勤務先である著者は、前職では「チームに入れなかった」苦い過去があるという。しかも彼は、編集記者出身で、元来チームワークなど気にしない完全な一匹狼タイプ。編集長に抜擢されたとはいえ、自分なりのビジョンを掲げて、メンバーをぐいぐい牽引していくタイプでもないと認めている。そんな「リーダーらしくない」編集長の奮闘劇としても楽しめるのが本書の魅力だ。自分の力だけではチームを引っ張れないからこそ、仲間が自由に働ける「仕組み」をつくろうと工夫を重ねてきたようだ。

オープンイノベーションやコミュニティの流行、複業の推進という社会のトレンドも視野に、社内のチームワークを高めるノウハウばかりではなく、いかに「外の人」と組み、仕事その他のプロジェクトを進めていくかにも触れられている。本書を読めば、きっと「未来のチーム」にかかわりたくなるだろう。

ライター画像
小島和子

著者

藤村 能光(ふじむら よしみつ)
1982年生まれ、大阪府出身。神戸大学を卒業後、ウェブメディアの編集記者などを務め、サイボウズ株式会社に入社。製品マーケティング担当とともにオウンドメディア「サイボウズ式」の立ち上げにかかわり、2015年から編集長を務める。メディア運営や編集部のチームビルディングに関する講演や勉強会への登壇も多数。複業としてタオルブランド「IKEUCHI ORGANIC」のオウンドメディア運営支援にも携わる。趣味はコミュニティ活動とサウナ。

本書の要点

  • 要点
    1
    サイボウズでは、「この人と働きたい」と思われる人が評価される。具体的には、自分に対しても他人に対しても素直である人だ。
  • 要点
    2
    多様な働き方のメンバーで成果を出すには、チーム内の情報格差をなくすことが重要だ。チーム全体の学びを高速化させられるうえ、致命的な失敗を防止できる。
  • 要点
    3
    チームワークが試されるのは社内ばかりではない。社外の人とのコミュニティや複業にも、会社で働くのとはまた違ったおもしろさがある。

要約

サイボウズ的「チームワークの価値観」

新しい価値を生み出すチームのメディア
metamorworks/gettyimages

サイボウズが考えるチームワークとは、メンバー全員が同じ思想のもと一致団結するものではない。人それぞれの個性を尊重しつつ、「100人100通りの働き方」を目指しながら同じ理想に向かうことだ。

「サイボウズ式」は2012年5月、「新しい価値を生み出すチームのための、コラボレーションとITの情報サイト」というコンセプトで始まったオウンドメディアだ。製品の魅力を訴求するのではなく、サイボウズという会社が大事にしているビジョンや価値観を伝えていくことを目指している。サイボウズ製品を買ってもらうには、その機能や価値を伝えるよりも、まずサイボウズを「好きになってもらうこと」が必要だからだ。

立ち上げ当初のサイボウズ式が発信していたのは、ITツールを使ってコミュニケーションしている会社を取材し、主にチームづくりや情報共有、コラボレーションの方法を伝える記事だ。だがあるとき「働き方」に関する記事がネット上で大きな話題を呼んだことをきっかけに、働き方に関する情報を発信するスタンスに変えた。2018年のサイトリニューアル以降テーマにしているのは、「新しい価値を生み出すチームのメディア」だ。

「一緒にチームを組みたくなる人」の条件

サイボウズでは、単にスキルを持っているだけの人は評価されない。社内で信頼されることや、「この人と一緒にチームを組んで仕事をしたい」と思われることが大切だ。

チームの信頼を得るために求められるのは、特別なスキルでも仕事への情熱でもない。自分に対しても他人に対しても素直であることだ。これはもはや、信頼を得るための絶対条件と言ってもいい。

サイボウズには、新入社員の意見にも、ベテランの意見と同じように素直に耳を傾ける文化が根付いている。若手が成長するにあたっては、意見が素直に聞き入れられる土壌が必要だ。「自分のアイデアが通じるかもしれない」という感覚を持ってもらえば、その認識がチームの資産になっていくはず。それが、著者が編集長としてできるサポートだと考えている。

「仕事の状況」ではなく「人の状況」を見る
Gearstd/gettyimages

編集長になりたての頃、著者は「自分が一番頑張って、編集部を引っぱっていこう」と思っていた。その背中を見て、チームがいい方向に進んでくれるはずだと期待していたのだ。だが、どうにもうまくいかない。自分の理想ばかりが先行し、仲間たちがどのように働いて、どんな結果を生み出したいのかを理解していなかったからだ。

著者は当初、いわゆるマイクロマネジメントに終始していた。

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要約公開日 2019.10.01
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