この宇宙を支配する法則のうち、ロウソクが見せてくれる現象に関わりがないものは1つもないくらいだ――ファラデーは講演に集まった少年少女たちにそう語りかけ、実験を始める。誰もが身近に感じられるだろうロウソクを題材に、聴衆に科学を親しみやすい形で見せようとしたのだろう。
普段何気なく目にしているロウソクだが、石油ランプと比較して燃え方を考えてみると不思議なことに気がつく。石油を油つぼにいれ、そのなかに芯をたてて火を灯す石油ランプでは、炎は芯をつたって下にいき、油の表面で消えている。考えてみれば、油自身は燃えないのに、芯の上だけは燃えるのは不思議ではないだろうか。
ロウソクではもっと不思議なことが起こっている。ロウは固体であり、液体と違って動くことができない。それなのにどうしてロウは、炎のところまで上っていって燃えることができるのだろうか。
この不思議な現象について、ファラデーは次のように解説する。火をつけたロウソクをじっくりと観察してみると、ロウソクの先端部分がくぼんでいくことに気づくはずだ。あたかもきれいなカップのように。
ロウソクの周りの空気は、炎の熱で温められる。熱せられた空気は上へ動く。そうすると、ロウのヘリの部分には熱せられる前の空気が入り込み、ロウソクの中心部よりもへりの部分のほうが低温に保たれることになる。その結果、カップの内側の部分が溶ける一方で、外の周りの部分は溶けない状態になる。ロウソクの先端部分にできたカップは、規則正しい上昇気流によって形作られているのである。
しかし風によってロウが外側に流れ出したり、装飾が施されたりして不規則になったロウソクは、上昇気流が均一ではなくなり、燃え方が悪くなる。火の灯らないロウソクはいくら美しく装飾が施されていたとしても失敗作だと言えよう。
ファラデーは飾りロウソクの設計者のこのような失敗を例にあげ、やってみなければえられないような性質の教訓について、「何が原因だろうか」「何でこんなことが起きるのだろうか」と疑問を持つことの大切さを呼びかけた。
ロウソクのさらなる謎は、溶けて液体となったロウがどうやってカップから出て芯を上り、炎の燃料となることができるのかということだ。
ファラデーは食塩を使用した実験で、毛管引力(毛細管現象)について説明を行う。食塩の山と青く染めた食塩水を用意し、食塩水を食塩の皿の上へと注ぐ。すると青い液体は食塩の山をのぼり、食塩は青く染まっていったのだった。
これは管状の物体の中を液体が登っていく、毛管引力によるものだ。私たちがタオルで手を拭くことができるのも、毛管引力のはたらきによるものである。身近で当たり前に感じられるような現象でも、理由を考えてみると不思議に思えるものがある。それをなぜと考えるのは、とても重要なことなのだ。
ロウソクは燃えるとだんだん短くなっていき、最後には姿を消してしまう。いったいロウソクはどこへ消えるのだろうか。
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