壮大なアイデアという大風呂敷を広げる経営者やリーダー。彼らを「広げ人」とするならば、仕事のアイデアを形にして実行に移す人を「畳み人」と呼ぶことができる。畳み人とは、リーダーを支える名参謀や右腕といった存在に近い。
会社の役職であれば、CEOが広げ人で、日々の業務執行の責任を請け負うCOO(最高執行責任者)が畳み人といえる。新規事業であれば、プロジェクトリーダーが広げ人で、リーダーと現場メンバーをつなぐNo.2の存在が畳み人だ。
では畳み人の仕事とは何なのか。広げ人の仕事がアイデアを0から1にすることならば、畳み人の仕事はその1を100にすることといえる。具体的には、広げ人の側近として一緒にアイデアを組み立て、それを実行可能な戦略に落とし込み、社内外での根回しをして、チームをマネジメントすることで、その事業全体を牽引して成功に導く。これが畳み人の仕事なのである。
「いいアイデアをひらめいても、プロジェクトがなかなか進行しない」。こんな悩みを抱える経営者やリーダーは多く存在する。アイデアを具体的に進められる人材が、社内でなかなか見つからないのだ。
一方で現場からは、「プロジェクトをどう進めたらいいかわからない」「上層部の意見がコロコロ変わる」という声が多くあがっている。プロジェクトには、予算組み、社内外のメンバー集め、スケジュールの段取り、資金集めといった細かな業務が発生する。これらの業務に着実に対処し、アイデアを実行に移せる人材は、経営者やリーダーから非常に重宝される。つまり畳み人とは、どの企業も喉から手が出るほどほしがるスター人材だ。例えば、スティーブ・ジョブズ氏とともにピクサーを立て直したローレンス・レビー氏、任天堂を世界企業に押し上げた山内溥氏のアイデアを具現化させた岩田聡氏。このように、成功を収めた企業には、必ず畳み人が存在しているのである。
畳み人が仕事を進めるうえで重要なポイントは何か。それは、広げ人がアイデアを出して畳み人に意見を求めた際に、そのアイデアの「面白いところ」を探し出して、そのアイデアを「はじめは」面白がることである。
広げ人が出すアイデアというのは、突拍子もなく実行困難なものが多い。しかし、すぐ実行できそうにないからこそ、そのアイデアには大きな価値がある可能性が高い。広げ人としては、まずは共感してほしい、「いいですね!」と背中を押してほしいという思いもあるだろう。
だからこそ、アイデアを聞いた畳み人は、そのアイデアの「面白いところ」を探すようにしたい。懸案事項はいったん脇に置いて、共感できるポイントを大いに面白がるのだ。すると、広げ人とのコミュニケーションに変化が生まれていく。
広げ人のアイデアを一緒に面白がることのポイントは、「はじめは」という部分である。これにより、アイデアの共犯者になることができ、その後軌道修正の提案がしやすくなる。
人は自分のアイデアを最初に否定されると、否定した人の意見に耳を傾けない傾向がある。一方で、自分のアイデアに共感した人のアドバイスには、耳を傾けようとする。
そのため、広げ人のアイデアに対して何らかの意見や提案をしたいならば、まずはそのアイデアを面白がることが有効である。これこそが畳み人の最初に取るべきポジションだ。
広げ人のなかには、自分で出した意見をすぐに変えてしまうタイプなど、様々なタイプが存在する。そこで畳み人に求められるのは、広げ人のことを世界で一番理解しようと努めることである。著者は、広げ人とプロジェクトを進める際、広げ人の行動、考え、癖などを含めて、広げ人のことを誰よりも理解するようにしているという。
広げ人を理解するには、とにかく観察することに尽きる。広げ人の発言の意図やそのときの心理状況を想像するのだ。特に一緒に働き始めて間もない頃であればあるほど、この習慣が大事になる。
広げ人は孤独な存在だ。社内から反発や抵抗を受けることもある。そんなとき、畳み人が広げ人の一番近い味方になれば、どんなに心強いだろうか。広げ人が周囲に迷いや不安を見せなくても済むよう、畳み人は積極的に広げ人の不安や迷いを受け止めるようにしたい。
広げ人と一緒にいると、「感情の起伏が激しくてつきあうのが難しい」と思うことがあるかもしれない。畳み人にとって大事なのは、感情的にならずに、常に冷静さを保つことだ。特にプロジェクトのミスやトラブルに対応するためには、畳み人は冷静に状況を判断し、次の一手を考えなければならない。
ではどのようにして、冷静さを保つのか。ポイントは、「自分はチームにおいて一番冷静でいよう」「物事を俯瞰的に捉えよう」と意識することだ。
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