読書とは、その大切さをわかってはいても、慣れていない人にとってはハードルが高いものだろう。大学受験塾で中高生の国語を教えている著者は、「読書」と耳にしただけで敬遠モードを漂わせる生徒たちがいることを身をもって知っている。
だが、高校生にも大人にも、ぜひ本を読んでほしい。なぜなら、読書は自己投資の中でもコストパフォーマンスが抜群にいいからだ。お金、時間、どちらにも効果がある。読書は、勉強や仕事の基盤となる力を伸ばしてくれるため、読書することでかえって時間を捻出することができるのだ。
実際、著者が公立高校から塾や予備校を利用せずに東京大学に現役合格できたことには、読書の力が大きかった。国語の学力が向上したことだけではない。読解力を高めることによって全教科の問題文の理解力が上がったからこそ、参考書を用いて独学することができた。さらに、分厚い本を読み切る経験は、「粘り強さ」「自信」「やり抜く力」を育ててくれたし、本が好きだからこそ、教科書を読み物として楽しめたとも振り返っている。
小学校高学年の頃、著者は一冊の本に出会った。『少女パレアナ』(エレナ・ポーター)だ。みなしごになったパレアナは、叔母さんの家に引き取られることになる。叔母さんに厳しく当たられ、辛い思いをするパレアナは、亡くなったお父さんとの約束に勇気づけられていた。それは、「喜びの遊び」というゲームをすることだ。いつでもどんなときでも、喜びを見出そうとするゲームである。やがてこのゲームは町中に広がって、叔母さんも含めた街全体を明るく変えていく――というストーリーだ。
著者はこの本に感動し、何度も読み返した。パレアナのように、辛いことがあっても常に喜びを見出し、ポジティブに乗り切る癖をつけていった。それは大人になってからも変わらない。新しい環境に飛び込むときなど、「喜びの遊び」を思い出して、前に進む力としているという。
一冊の本には、人を変える力がある。そう実感した著者は、誰もがそうした本に出会えることを願って、まずは自由時間のうち「10分」だけ読書に充ててみることを勧める。好きな場所、好きなタイミングで、一日のうちのほんの10分間だけ読書する。それだけでも、あなたの未来は着実に変わっていくのだ。
読書は他の趣味とは異なり、大人のたしなみであるかのように思われている。しかし、読書をしていないことを恥ずかしいと思う必要はまったくない。
私たちは普段から、意識しないうちに文章を読んでいる。学生時代は国語の授業を受けていたし、他の教科の教科書も読んできただろう。大人になってからは、日常的にメールをやり取りしたり、ニュースサイトに目を通したりしている。テキストを読んで資格の勉強をしたことがあったり、レシピ本を買って料理を作ったりしている人もいるだろう。
「そんなのは読書とは言えない!」と思う人もいるかもしれない。
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