交渉力

結果が変わる伝え方・考え方
未読
交渉力
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結果が変わる伝え方・考え方
著者
未読
交渉力
著者
出版社
出版日
2020年03月26日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

著者はかつて大阪府知事や大阪市長、「維新の会」代表を務めた橋下徹氏。若くして大阪という巨大組織をまとめ上げ、前人未到の改革を断行したことで知られる。そんな著者が数々の修羅場をくぐるなかで体得した「橋下流交渉術」を、あますところなく伝えているのが本書だ。

著者によれば、交渉の原則は「利益を与える/譲歩する」「合法的な脅しを使う」「お願いする」の3つしかない。実践にあたっては、自分や相手の要望を整理して優先順位をつけ、譲歩できる内容を用意するのが肝となる。また、交渉に価値観や思想・信条を持ち込まないこと、交渉決裂後にどうするかを考えておくことも重要だという。

交渉は、相手との闘いではなく自分との闘いだ。どれだけ自分の要望を整理できるか。絶対に獲得しなければならない目標のために、いかに他の要望を捨てる決断ができるか。相手の要望を推測しながらしっかり整理できるか。こうした自分との闘いに勝った者だけが交渉で成功を手にできるという主張には、著者ならではの説得力がある。

府知事、市長時代の体験談のほか、アメリカのドナルド・トランプ氏や北朝鮮の金正恩氏の外交術など、数々の事例を用いた解説は具体的でわかりやすい。なるほど! と膝を打つ箇所も随所にある。ビジネスの場ではもちろんのこと、日常のさまざまな場面で役に立つ実用書であると同時に、橋下氏の政治手腕の一端が伺い知れる内容となっている。

ライター画像
上條まゆみ

著者

橋下徹 (はしもと とおる)
大阪府立北野高等学校。早稲田大学政治経済学部卒業。1998年、橋下綜合法律事務所を開設。2008年に38歳で大阪府知事、2011年に42歳で大阪市長に就任。大阪府庁1万人、大阪市役所3万8000人の組織を動かし、絶対に実現不可能と言われた大阪都構想住民投票の実施や行政組織・財政改革などを成し遂げる。2015年、大阪市長を任期満了で退任。現在は弁護士、タレントとして活動。著書に『実行力 結果を出す「仕組み」の作りかた』(PHP新書)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    交渉に勝つための原則は「利益を与える/譲歩する」「合法的な脅しを使う」「お願いする」の3つだ。
  • 要点
    2
    交渉が始まる前に、自分や相手の要望を整理して優先順位をつけ、譲歩できる内容を用意しておく。譲歩のカードを1枚ずつ切ることで、交渉は進む。
  • 要点
    3
    交渉が膠着しそうになったら、互いの要望を要素に分解すると、一致点を見つけやすい。
  • 要点
    4
    アメリカのトランプ氏と北朝鮮の金正恩氏は交渉の名手である。彼らの実践的ケンカ交渉術から学べることは多い。

要約

交渉に勝つための3つの原理原則

相手に利益になるものを見つけ出す
fizkes/gettyimages

相手を動かし、自分の目的を達成するための手段が「交渉」だ。政治・経済の世界はもとより、ビジネスやプライベートな世界でも、交渉術を知っておくことは大きな力となる。では交渉術とは何か。それは「利益を与える/譲歩する」「合法的に脅す」「お願いする」の3つに区分できる。以下、具体的に解説する。

交渉は「相手に何をどれだけ与えるか、何をどれだけ譲るか」で決まる。多額のお金を与えたり、利益になるものをたくさん与えたりすれば、話は早くまとまるだろう。しかし相手にとって利益になるものを与え続ければ、こちら側の持ち出しが増えてマイナスになってしまう。そのため交渉においては、こちら側がマイナスにならずに、相手には利益になるものを見つけ出すことが大切になる。

その一例として、相手が困るような環境を作り出し、それを取り除くことで、相手にとって利益になるよう見せる方法が挙げられる。はじめにわざと厳しい期限を設定し、あとから期限を延ばすのはその典型だ。これを「仮装の利益」という。交渉において、最も重要なノウハウのひとつである。

交渉を決裂させたら大変なことになると思わせる

「合法的に脅す」というのは、相手と勝ち負けを争う「敵対的交渉」の際に有効な手法だ。「それならば、訴訟をします」と宣言するなど、相手に「交渉を決裂させたら大変なことになる」と思わせる。できれば交渉に挑む前の段階で、圧をかけておくことが望ましい。

「合法的に脅す」際には、他人の力を借りるのではなく、自分の力によって脅しをかけるべきだ。自分に力がなければ、いったん勝負の場から退いて、力を蓄えるという判断も重要になる。

ちなみに「合法的に脅す」手法は、相手とWin-Winの関係を保ちたい「協調的交渉」の際には逆効果にしかならないので注意が必要だ。

お願いし、それでもダメなら交渉決裂

相手に利益を与えたり譲歩したり、合法的な脅しを使ったりしても交渉がうまくいかない場合、「お願いをする」ことも検討すべきだ。だがこれは、相手がまったく譲歩する気がないなら成り立たない。その場合は、交渉を終わらせるしかない。

交渉の終わらせ方についても原理原則がある。それは、「交渉は握手で終わる」というものだ。たとえ敵対的交渉であっても、相手が白旗を揚げたときは撃ちどめにして、握手できる余地を残しておく。

交渉が決裂したあと、人間関係を決定的に破壊しないようにするためには、交渉中に相手を侮辱しないことが大事だ。どんな交渉でも、それだけは忘れるべきではない。

【必読ポイント】 「相手に利益を与える/譲歩する」交渉術

自分と相手の要望を整理する
SIphotography/gettyimages

「相手に利益を与える/譲歩する」うえで一番大事なのは、自分と相手の「要望の整理」だ。自分の要望が多いと、交渉は成立しにくくなる。事前に要望を整理し、「絶対に譲れないもの」と「譲れるもの」に分けておく。交渉においては、この「譲れるもの」のうち優先順位の低いほうから、1枚ずつカードを切っていくべきだ。

相手の要望については、推測するしかない。

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要約公開日 2020.05.18
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