相手を動かし、自分の目的を達成するための手段が「交渉」だ。政治・経済の世界はもとより、ビジネスやプライベートな世界でも、交渉術を知っておくことは大きな力となる。では交渉術とは何か。それは「利益を与える/譲歩する」「合法的に脅す」「お願いする」の3つに区分できる。以下、具体的に解説する。
交渉は「相手に何をどれだけ与えるか、何をどれだけ譲るか」で決まる。多額のお金を与えたり、利益になるものをたくさん与えたりすれば、話は早くまとまるだろう。しかし相手にとって利益になるものを与え続ければ、こちら側の持ち出しが増えてマイナスになってしまう。そのため交渉においては、こちら側がマイナスにならずに、相手には利益になるものを見つけ出すことが大切になる。
その一例として、相手が困るような環境を作り出し、それを取り除くことで、相手にとって利益になるよう見せる方法が挙げられる。はじめにわざと厳しい期限を設定し、あとから期限を延ばすのはその典型だ。これを「仮装の利益」という。交渉において、最も重要なノウハウのひとつである。
「合法的に脅す」というのは、相手と勝ち負けを争う「敵対的交渉」の際に有効な手法だ。「それならば、訴訟をします」と宣言するなど、相手に「交渉を決裂させたら大変なことになる」と思わせる。できれば交渉に挑む前の段階で、圧をかけておくことが望ましい。
「合法的に脅す」際には、他人の力を借りるのではなく、自分の力によって脅しをかけるべきだ。自分に力がなければ、いったん勝負の場から退いて、力を蓄えるという判断も重要になる。
ちなみに「合法的に脅す」手法は、相手とWin-Winの関係を保ちたい「協調的交渉」の際には逆効果にしかならないので注意が必要だ。
相手に利益を与えたり譲歩したり、合法的な脅しを使ったりしても交渉がうまくいかない場合、「お願いをする」ことも検討すべきだ。だがこれは、相手がまったく譲歩する気がないなら成り立たない。その場合は、交渉を終わらせるしかない。
交渉の終わらせ方についても原理原則がある。それは、「交渉は握手で終わる」というものだ。たとえ敵対的交渉であっても、相手が白旗を揚げたときは撃ちどめにして、握手できる余地を残しておく。
交渉が決裂したあと、人間関係を決定的に破壊しないようにするためには、交渉中に相手を侮辱しないことが大事だ。どんな交渉でも、それだけは忘れるべきではない。
「相手に利益を与える/譲歩する」うえで一番大事なのは、自分と相手の「要望の整理」だ。自分の要望が多いと、交渉は成立しにくくなる。事前に要望を整理し、「絶対に譲れないもの」と「譲れるもの」に分けておく。交渉においては、この「譲れるもの」のうち優先順位の低いほうから、1枚ずつカードを切っていくべきだ。
相手の要望については、推測するしかない。
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