一対一でも、大勢でも人前であがらずに話す技法

未読
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一対一でも、大勢でも人前であがらずに話す技法
出版社
出版日
2011年08月01日
評点
総合
3.7
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
3.5
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おすすめポイント

「人前で話すのが大得意だ」という方は少ないだろう。自己紹介で自分の番が近づいてくるにつれて動悸がし、手が震える。月に一度担当する朝礼のスピーチが憂鬱でたまらない――。こういった状況の方のほうが多いのではないだろうか。

そんな方に手に取ってほしいのが、「あがり症」の人のための「あがらずに話す方法」が詰まった本書だ。このテーマの類書は多いが、本書の特徴的な点は、なんといっても「本当に実践できること」しか書かれていないことだ。あがり症を克服するための本には、「場数を踏め」「緊張を受け入れろ」といった精神論がよく見られる。「それができれば苦労しない」と思ったことがある人も多いだろう。これに対し、この本の著者は「なぜ緊張するのか」を分析し、その根本にアプローチするシンプルな克服法を、豊富な図解とともに紹介してくれる。

さらには、緊張せずに話せるようになるためのトレーニング方法や、面接やプレゼン、恋愛など、具体的な場面別の対応策も紹介されている。今度こそあがり症を克服したいという人には必読の内容といえる。

ちなみに本書はページの左上の角に折り線がついている。これは読者が実践したページを折るためだ。角が折れているページが増えるほど、緊張しない方法を数多く実践したことになり、「これだけやった」という成果が目に見えて自信につながるという仕組みだ。「ここぞ」という場面で自分の力を発揮したいと思うすべての方に本書をおすすめしたい。

ライター画像
池田明季哉

著者

森下裕道(もりした ひろみち)
パーソナルモチベーター。接客・営業コンサルタント。株式会社スマイルモチベーション代表取締役。
大学卒業後、株式会社ナムコへ入社。異例の早さで新規事業店の店長に抜擢。独特な接客法で不振店舗を次々に立て直し、カリスマ店長と呼ばれるほどに。
現在は接客、営業、人材育成、人間関係のコミュニーケーション問題の観点から講演活動、執筆などで幅広く活躍。
著書には、『自分の居場所の作り方』『なぜ、あの占い師はセールスが上手いのか?』(以上フォレスト出版)、 『仕事と恋を両立させる!ハッピー・ライフの作り方』『また会いたい!と思わせる、人との接し方』(以上辰巳出版)、『心理接客術』(ソシム)など多数。

本書の要点

  • 要点
    1
    自分の意識を「見られる側」から「見ている側」に変えるだけで、大勢の前で話す際に緊張しなくなる。
  • 要点
    2
    自分視点ではなく相手視点で考えれば緊張はやわらぐ。相手に気持ちを向けて話すようにするだけで、自然と「できる人」に見られるようになる。
  • 要点
    3
    実際の緊張は3分の1以下にできる。「今の実際の緊張」に「過去の体験やトラウマからくる緊張」「未来の不安から来る緊張」が合わさって、緊張が不必要に膨れ上がっているだけだ。

要約

【必読ポイント!】 絶対にあがらなくなるたった一つの方法

「見ている側」になれば緊張しない

緊張している人としていない人には決定的な違いがある。それは「見ている側」にいるのか、それとも「見られる側」にいるのか。

あがり症の人が緊張する場面は、いつも「見られている」と思う場面のはずだ。例えば、面接を受ける人は「見られる側」なので緊張する。これに対し、面接官は「見ている側」なので緊張しない。また、自分が大勢の前でスピーチをするときは「見られる」ため緊張するが、他の人が話しているときは「見ている」ので緊張しない。このように、自分が見る側か、見られる側かによって、気持ちは大きく変わるのだ。

あがり症を克服するために必要なのは、「見られている」意識を捨てることだ。著者は、あがり症克服のセミナーで、参加者を壇上に呼び、自己紹介を頼むことがある。すると、多くの人はガチガチに緊張する。顔が赤くなったり手が震えたりする人もいるほどだ。

そういう人には、檀上から見える別の参加者に意識を向けてもらうという。「あの人、素敵なストールをしていますね」「あの人はどこから来たんでしょう?」などと問いかける。すると、ぴたりと緊張がおさまり、手の震えも止まってしまう。同じ「人前で話す」という状況であるにもかかわらずだ。

このように、「見られている側」から「見ている側」になると、緊張しなくて済む。

目をそらすとかえって緊張する
jeffbergen/gettyimages

緊張しそうな場面では、誰よりも早くその場所に行き、集まる人をよく見ているといい。待ち合わせでも、早めに到着しておき、歩いてくる相手に先に会釈しよう。そうすれば「見ている」側になりやすい。

しかし、集まってくる人を待ち構えることができない場面もあるだろう。たとえば、突然大勢の前に出なければならない場面だ。そういった場面では、いきなり大勢の視線を一斉に受けることになる。思わず目をそらしたくなるのではないだろうか。

しかし、こうした場面でこそ、視線をそらしてはいけない。相手を見なければ見ないほど緊張するためだ。登壇してすぐに下を向いて視線をそらすのは避けたほうがよい。

「自分視点」ではなく「相手視点」で考える

すぐに緊張してしまう人の決定的な特徴は、「自分のことしか考えていない」ことだ。例えば人前でスピーチする場合、あがり症の人はどのようなことを考えるだろうか。「うまく話せるだろうか」「バカにされたくない」「頭がいい人に見られたい」。こんなことを考えるのではないだろうか。

これらはすべて自分のことだ。スピーチを聞いてくれる人のことを考えていない。「自分視点」だから緊張するのである。

人前で話す際には、聞いてくれる相手のことを考えるべきだ。「興味を持ってもらうためにはどう話せばいいか」「忙しいなか自分の話を聞いてくれるなんてありがたい」。こういったことを考えれば、自然と意識が相手に向かっていく。

「自分がどう思われるか」は実は問題ではない。重要なのは、「相手視点」を持ち、「相手にとってプラスになること」を考えることなのだ。相手に気持ちを向けて話すようにするだけで、自然と「できる人」に見られるようになるだろう。

「見ている側」になるためのトレーニング

相手の長所を探しながら「観る」
Vasyl Dolmatov/gettyimages

好きな人や尊敬している人の前に立つとき、「見られている」ことを意識せざるを得ない。自分が「見ている側」に立つためには、トレーニングが必要となる。

まずは、観察するくせをつけるとよい。「見る」ではなく「観る」という感覚だ。常に意識していれば、そのうち無意識にできるようになる。人に会うときには、相手の長所やほめたら喜ぶところを見つけるようにしよう。これを実行するだけで、「観る」くせがついて、人間関係も良好になるはずだ。

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要約公開日 2020.05.24
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