緊張している人としていない人には決定的な違いがある。それは「見ている側」にいるのか、それとも「見られる側」にいるのか。
あがり症の人が緊張する場面は、いつも「見られている」と思う場面のはずだ。例えば、面接を受ける人は「見られる側」なので緊張する。これに対し、面接官は「見ている側」なので緊張しない。また、自分が大勢の前でスピーチをするときは「見られる」ため緊張するが、他の人が話しているときは「見ている」ので緊張しない。このように、自分が見る側か、見られる側かによって、気持ちは大きく変わるのだ。
あがり症を克服するために必要なのは、「見られている」意識を捨てることだ。著者は、あがり症克服のセミナーで、参加者を壇上に呼び、自己紹介を頼むことがある。すると、多くの人はガチガチに緊張する。顔が赤くなったり手が震えたりする人もいるほどだ。
そういう人には、檀上から見える別の参加者に意識を向けてもらうという。「あの人、素敵なストールをしていますね」「あの人はどこから来たんでしょう?」などと問いかける。すると、ぴたりと緊張がおさまり、手の震えも止まってしまう。同じ「人前で話す」という状況であるにもかかわらずだ。
このように、「見られている側」から「見ている側」になると、緊張しなくて済む。
緊張しそうな場面では、誰よりも早くその場所に行き、集まる人をよく見ているといい。待ち合わせでも、早めに到着しておき、歩いてくる相手に先に会釈しよう。そうすれば「見ている」側になりやすい。
しかし、集まってくる人を待ち構えることができない場面もあるだろう。たとえば、突然大勢の前に出なければならない場面だ。そういった場面では、いきなり大勢の視線を一斉に受けることになる。思わず目をそらしたくなるのではないだろうか。
しかし、こうした場面でこそ、視線をそらしてはいけない。相手を見なければ見ないほど緊張するためだ。登壇してすぐに下を向いて視線をそらすのは避けたほうがよい。
すぐに緊張してしまう人の決定的な特徴は、「自分のことしか考えていない」ことだ。例えば人前でスピーチする場合、あがり症の人はどのようなことを考えるだろうか。「うまく話せるだろうか」「バカにされたくない」「頭がいい人に見られたい」。こんなことを考えるのではないだろうか。
これらはすべて自分のことだ。スピーチを聞いてくれる人のことを考えていない。「自分視点」だから緊張するのである。
人前で話す際には、聞いてくれる相手のことを考えるべきだ。「興味を持ってもらうためにはどう話せばいいか」「忙しいなか自分の話を聞いてくれるなんてありがたい」。こういったことを考えれば、自然と意識が相手に向かっていく。
「自分がどう思われるか」は実は問題ではない。重要なのは、「相手視点」を持ち、「相手にとってプラスになること」を考えることなのだ。相手に気持ちを向けて話すようにするだけで、自然と「できる人」に見られるようになるだろう。
好きな人や尊敬している人の前に立つとき、「見られている」ことを意識せざるを得ない。自分が「見ている側」に立つためには、トレーニングが必要となる。
まずは、観察するくせをつけるとよい。「見る」ではなく「観る」という感覚だ。常に意識していれば、そのうち無意識にできるようになる。人に会うときには、相手の長所やほめたら喜ぶところを見つけるようにしよう。これを実行するだけで、「観る」くせがついて、人間関係も良好になるはずだ。
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