「数字で考える」は武器になる

未読
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「数字で考える」は武器になる
出版社
かんき出版

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出版日
2019年03月04日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.5
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

転職や起業、副業などの選択肢が当たり前になっている現在、重宝される人材になるにはどんな力が必要だろうか? 著者は、四則演算の知識を使った「数字で考える力」を身につけることで、説得力、伝える力、儲けるセンスに満ちた、生産性の高いビジネスパーソンになれるという。

そう聞いて、「四則演算で事足りるのだろうか?」と思う人もいるだろう。論理的思考力や分析力の方が重要だと考えるかもしれない。しかし、著者のいう「数字で考える力」とは、単なる計算力ではない。大前提となるのは、仕事の生産性をいかに上げるか。Speed is Powerという発想だ。そのためには、やるべき仕事を的確に把握し、能力を最大限発揮したうえで、周囲にもきちんとアピールする必要がある。これこそが真の「働き方改革」につながる。「数字で考える力」は、そのプロセスを強力にサポートしてくれる。

たとえば、上司に与えられた課題をどのように解きほぐせば、適切なソリューションにたどり着き、高く評価されるのか。そのために必要な発想の転換を非常にわかりやすく具体的に教えてくれるのが本書だ。

数字を足掛かりに仕事の視点を変えれば、生産性が上がるだけでなく、長期の目標達成の確度も上がると知ると、これまでのやり方を今すぐ変えたくなることだろう。また、数字で考える習慣は、発信力や求心力など、マネジメントに必要な能力の向上にもつながる。新しい部署でリーダー職に就く際にも、本書の内容が大いに役立つはずだ。

著者

中尾隆一郎(なかお りゅういちろう)
株式会社中尾マネジメント研究所(NMI)代表取締役社長。株式会社旅工房 取締役。1964年5月15日生まれ。大阪府摂津市出身。1987年大阪大学工学部卒業。89年同大学大学院修士課程修了。同年、株式会社リクルート入社。主に住宅、人材、IT領域を歩み、住宅領域の新規事業であるスーモカウンター推進室で室長を務めていた時は、同事業を6年間で売上を30倍、店舗数12倍、従業員数を5倍に拡大させた。リクルートテクノロジーズで社長を務めていた時は、リクルートが掲げた「ITで勝つ」を、優秀なIT人材の大量採用、早期活躍、低離職により実現。リクルート住まいカンパニー執行役員、リクルートテクノロジーズ代表取締役社長、リクルートホールディングスHR研究機構企画統括室長、リクルートワークス研究所副所長などを務め、2018年3月までリクルートで29年間勤務。
専門は、事業執行、事業開発、マーケティング、人材採用、組織創り、KPIマネジメント、中間管理職の育成、管理会計など。リクルート時代は、約11年間、リクルートグループの社内勉強会において「KPI」「数字の読み方」の講師を担当、人気講座となる。良い組織づくりの勉強会(TTPS勉強会)主催。
著書に『最高の結果を出すKPIマネジメント』(フォレスト出版)、『リクルート流仕事ができる人の原理原則』『リクルートが教える営業マン進化術(共著)』(ともに全日出版)、『転職できる営業マンには理由がある!』(共著・東洋経済新報社)などがある。Business Insider Japanにて毎月マネジメントをテーマに寄稿している。

本書の要点

  • 要点
    1
    四則演算でできる「数字で考える力」は、生産性の高いビジネスパーソンになるために重要な能力だ。ベースになるのは、仕事を納期だけでなく工数でも管理するためにタスクを因数分解すること、やるべき仕事かどうかを見極めるROIの発想、そして仮説を立てて検証する習慣である。
  • 要点
    2
    「数字で考える力」は、部下を持つリーダーにとっても有効なスキルだ。プレゼンテーションでは、「自分らしい数字」を盛り込むことで、聞き手の注目を得て、その態度変容を促すことになる。また、人を動かすには、「見える化」が効果的だ。

要約

【必読ポイント!】 Speed is Power

すべては因数分解から始まる
wildpixel/gettyimages

納期の前に成果物をもらって嫌がる人はいない。仮に要求水準に達していなくても、やり直しができる。よって、仕事が速いと、周囲から仕事ができると思われやすい。この「Speed is Power」は本書のテーマにもなっており、それを実現するスキルが「数字で考える」力だ。

現状を数字で把握し、正しい方法で改善するには、次の3つの考え方が役立つ。1つ目は、扱いやすい大きさに分ける「因数分解」。2つ目は、優先すべき仕事かどうか見極める「ROI思考」。そして3つ目は、ゴールから逆算して考える「仮説力」だ。3つの考え方を順に紹介していこう。

生産性が高い人は、仕事を「納期」だけでなく、「工数(タスクにかかる見積もり時間)」も管理している。たとえば資料作成ならば、設計、資料収集、ドラフト作成、レビュー、修正・完成などと、大きなタスクを分解して、小さく分けていく。そして、それぞれに要する時間を把握することで、タスクの取捨選択や分担を可能にする。この作業を著者は「因数分解」と呼んでいる。

これはやるべき仕事なのか?

人生という限られた時間を考えると、やるべき仕事に順番をつける必要があることは明らかだ。その判断の指標がROI(Return on Investment)である。仕事をリターンと投資で考え、やるべき仕事なのかどうかを確認する「ROI思考」の出番となる。ROIの値が小さければ、やらないという決断もありうる。

ROIを把握するには、「フェルミ推定」が有効だ。日本全国の電柱の数を考えるとき、一定の面積あたりの電柱の本数から考える方法もあれば、企業数と家庭数から推測する方法もある。フェルミ推定のポイントは、より多くのシナリオから、精度が高く簡単に計算できるものを短時間で見つけることだ。目の前の仕事のROIをフェルミ推定で判断できれば、無駄な仕事を減らし、仕事の速度を上げられる。

仮説×見せ方で人を動かす

やるべき仕事が明らかになったら、課題をどう分析して、どのような結論を導くのか、「仮説(シナリオ)」を立て、様々な観点から比較していく。

たとえば、「営業の人数を増やさずに売上5%をアップさせる」というケースで考えてみよう。仮説を考える際、「社内」「社外や市場」といった比較の軸を想定するとよい。そのうえで、「(違うエリアの)組織で比較する」「商品ごとに比較する」「営業担当の年齢や階層で比較する」「市場の変化と比較する」などと細分化する。できる限りこの軸を多く設定することが、適切なソリューションに近づくコツだ。

また、実際に比較分析を行う前に、「特定の営業担当群×特定の商品群についての勉強会をして営業力の底上げをする」などと、最終的なアクションをイメージしよう。そうすれば、把握すべき具体的な情報(誰に、何を、誰が教えるのか)が明確になり、分析に必要なシナリオができあがる。その後、たとえば「どのエリアに課題があるのか」といった点について、必要なデータを入手し、絞り込んでいく。

こうして導き出された施策をプレゼンテーションする際には、わかりやすいグラフを意識したい。具体的なポイントは、グラフのタイトル部分に最も伝えたいことを書く、比較対象をわかりやすく表示する、実際に差異がある場合は強調したい点をはっきりさせるの3つである。

数字の裏を読む

「平均的な人」は存在するのか
wildpixel/gettyimages

数字ですべてがわかるわけではない。正しく数字を使って7割程度の真実を把握し、残り3割を定性情報で補うようなバランス感覚が重要となる。数字の裏を読み、定性情報を活用するために3つの考え方が役に立つ。それは、「平均と分散」、数字の背景を探る「想像力」、そして「選択肢を増やして絞り込む」という考え方だ。

まずは、データを取り扱う際によく用いる「平均値」だが、平均のもとになっている分散の数値を知らずに扱うと、事実を見落としてしまう。たとえば、ある組織の営業マンの月間平均売上が380万円だとしよう。もしも半数の売上平均が500万円前後、残りの半数が100万円前後と真っ二つにわかれていたらどうか。平均値としての380万円は数字的には正しいが、「売上380万円」の人間は存在しておらず、全体を代表していないのだ。平均と分散の数値はセットで確認しておきたい。

数字の背景を「想像」する

数字を見る際には、日ごろ見聞きしている現場の話や自分の感覚も忘れてはいけない。

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要約公開日 2020.05.29
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