どんな人でも、毎日さまざまな誘惑と戦い、我慢している。例として、ある会社員の一日を見てみよう。朝から配偶者に嫌味を言われ、甘いものが食べたくなったが血糖値を気にして糖分控えめのパンに。満員電車を耐え忍び、会社では上司に別の仕事を優先してほしいといきなり言われ、出かかった文句の言葉を抑える。ランチも好きなものではなくカロリーオフの食事にし、節約のためにコーヒーは我慢。夜には眠気をこらえながら残業だ。
人は高頻度で何らかの欲求を感じ、それを抑え込んでいるということが、ある研究でも示されている。もっとも感じやすい食欲、睡眠欲だけでなく、性欲や、ソーシャルネットワーキングサービス(SNS)での承認欲求などもある。
すべての欲求に打ち勝つことができない場合を想像してみよう。自分の欲求や考えをコントロールする能力、すなわち「実行機能」が、健康な社会生活を営むうえで欠かせないものであることがわかるだろう。これは、目の前にある誘惑に抵抗し、将来的に利益を得られる方法を選択するための力となる。
また実行機能は抑制だけでなく、物事に優先順位をつけて計画的に進めるためにも重要な能力だ。実行機能の低い上司は、うまく仕事の管理ができないとも言われている。
実行機能が十分な人は仕事がこなせて、さらには肥満になりにくいなど健康的な生活を送れる可能性が高い。となると、この能力を身につけることは多くの人にとって重要なことだといえるだろう。
子どもの将来にとって重要な能力として、IQがあげられることは多い。しかし、知識が豊富で頭の回転が速くても、社会に出た後に遅れをとる人もいる。このような差を生むのは「非認知スキル」だ。言うなれば、自分を大事にしながら他人ともうまく付き合っていく能力である。
IQが生涯を通じてあまり変化しないのに対して、非認知スキルは教育や子育ての仕方によって変化する可能性がある。
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