コミュニケーション能力は先天的なものだと思われるかもしれないが、人間の本質を知り、テクニックを学ぶことで、誰でも後天的に他人と打ち解ける能力を高められる。そのためには、まずは人間の本質について知らなければならない。著者によれば、人間は誰しも3つの衝動を抱えており、それに突き動かされているのだという。
まず知るべき人間の本質とは、「自分は重要な人間だ」と思いたいということだ。認められ、感謝されたいというこの欲求は、絶えず湧き上がるもっとも強い衝動である。空腹のように満たされることがないので、生理的な欲求をも上回ると言われている。裏を返せば、相手に「自分は重要な人間なのだ」と思わせられれば、相手からポジティブな反応を引き出すことができるということである。
2つめの本質とは、興味の対象は何よりも「自分自身」だということだ。相手が関心をもっているのは、あなたではなく相手自身と相手の利益になることである。つまり、対話のなかで優先すべきことは、相手について話すことだ。向こうに聞かれない限り、あなた自身について話すことは避けた方がよいだろう。相手があなたについて聞いてこないということは、あなたに関する事柄に興味はないということなのだから。
この本質について知ると、見返りを求めずに相手に尽くすことを美徳と考える人は失望するかもしれない。しかし、無私無欲に見える人であっても、すべての行動の根幹には自分の利益があるものだ。見返りなく匿名で利他的な寄付をしたとしても、それを行うことによって本人が満足感を得ているのであれば、やはり自分に利益が回ってきたということになる。
だから、自分の利益を優先せずに行動することを他人に求めるのは、不合理である。他人と関わりながら何かを成し遂げようとするならば、人は誰でも自分自身の利益を最優先するものだと理解しなければならない。
3つめの本質は、何かをもらったら同等のものを返したいという「返報性の法則」だ。こちらが年賀状を出していない相手から年賀状を受け取ったら、すぐに返事を出したくなる。こちらが力を貸してあげたときには、たいていの相手はお返しの機会をうかがう。こちらが称賛の言葉を贈れば、相手もほめ言葉を返そうとする。反対に、こちらがよそよそしい態度をとれば、相手も愛想の悪い態度をとるだろうし、相手が侮辱されたと感じたら、「いつか仕返しをしてやろう」と思ってもおかしくない。
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