営業はいらない

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出版社
SBクリエイティブ

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出版日
2020年02月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

累計16万部超えのベストセラー『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』の著者が、これからの営業のあり方について論じているのが本書である。

日本では、営業といえば、会社の屋台骨であり、花形部隊だという文化がある。一方で、成長著しいグローバル企業は、ビジネスモデルそのものが営業不要の形態になりつつある。「アメリカのBtoB営業担当者450万人のうち、100万人が5年間で仕事を失うだろう」という予測もあるほどだ。まさに営業担当者の受難時代の到来である。

では、営業担当者に未来はないのかというと、決してそうではない。著者は、営業担当者が目指すべき新たな道について、具体的に提示している。著者自身も、サラリーマン時代には営業成績を上げるために睡眠時間を削りながらモーレツに働いていたり、政治家時代の選挙前には個人宅を1日200件ほど個別訪問したりと、ハードな営業活動を行っていた。しかし今では、近い将来営業がなくなるのではないか、という前提で準備をし、営業が必要ない経営スタイルへとシフトチェンジしているのだという。著者が運営しているオンラインサロンもその一つである。

著者の営業担当者としての経験や、少数精鋭企業の経営者としての実感とアイデアが溢れる本書を読むと、あなたも新しい一歩を踏み出す勇気を手に入れられるだろう。

ライター画像
大島季子

著者

三戸政和(みと まさかず)
株式会社日本創生投資 代表取締役社長。1978年兵庫県生まれ。同志社大学卒業後、2005年ソフトバンク・インベストメント(現SBIインベストメント)入社。ベンチャーキャピタリストとして日本やシンガポール、インドのファンドを担当し、ベンチャー投資や投資先にてM&A、株式上場支援などを行う。2011年兵庫県議会議員に当選し、行政改革を推進。2014年地元の加古川市長選挙に出馬するも落選。2016年日本創生投資を投資予算30億円で創設し、中小企業に対する事業承継・事業再生などに関するバイアウト投資を行なっている。2018年4月に上梓した『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』が累計16万部超えのベストセラーとなり、読者を中心としたオンラインサロン(経営塾)「サラリーマンが300万円で小さな会社を買うサロン」の参加者は200名を超える。また、ロケット開発会社インターステラテクノロジズの社外取締役、堀江貴文氏が主宰する「堀江道場」のオブザーバーなども務める。著書に『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい』『サラリーマンは300万円で小さな会社を買いなさい・会計編』(講談社)、『資本家マインドセット』(幻冬舎)、『まんがでわかる 絶対成功! ホリエモン式飲食店経営』(講談社)などがある。Twitterアカウントは「@310JPN」。

本書の要点

  • 要点
    1
    インターネットの普及、流通構造の革新や合理化により、世界は営業不要時代に突入している。旧来型のビジネスモデルから脱しない企業においては、営業をする側、される側にとって無駄の多いノルマ営業が、経済的損失を生み出している。
  • 要点
    2
    MA、SFA、CRMといったセールステックの登場により、人間にしかできないと思い込まれていた複雑な営業プロセスがテクノロジーに代替されつつある。
  • 要点
    3
    営業担当者が生き残る道として、経営者になることが挙げられる。リスクの小さい小商いによって、効率的に事業を展開するのがよい。

要約

サラリーマンの不幸の根底には「営業」がある

時代遅れのビジネスモデル
takasuu/gettyimages

ここ数年、「郵便局の保険押し売り問題」が大きなニュースとなった。郵便局員が、高齢者をターゲットに、顧客の不利益となるような保険を販売していた問題だ。

郵便局員は、なぜそこまでして契約を取る必要があったのか。その背景にあるのは、過剰なノルマだ。

ノルマ営業による不祥事の根本原因は、営業戦略自体ではなく、時代に合わない経営戦略やビジネスモデルにある。会社の経営戦略そのものが破綻しているから、営業成績が上がらないのだ。

たとえば、今や金融商品はコモディティ化し、対面取引でもインターネット取引でも大差はなくなった。顧客にとって、対面販売コストが手数料に上乗せされる証券会社ではなく、人件費が掛からない分、手数料を抑えられるインターネット証券を選ぶのは当然だ。実際、インターネット証券のシェアは右肩上がりで、2018年10月から2019年3月の期間では23.6%を占めるまでになっている。

旧来型ビジネスに固執した企業は、時代遅れのビジネスモデルのまま、人員を解雇することもできず、結果的にノルマ営業戦略を頼らざるを得なくなっている。それが不祥事につながる構造なのだ。

飛び込みやテレアポの限界

企業が過剰に人員を抱え、営業担当者たちに時代遅れのノルマ営業を課しているのは、かつての「大量生産・大量消費」モデルの名残だ。大量生産された在庫を消化するために、顧客の購買意欲を煽るような手法をとっていたのだ。しかし今や、この手法も限界に達している。

たとえば、新規顧客とのファーストコンタクトを、いまだに多くの企業が「飛び込み営業」や「テレアポ」に頼っている。だがテレアポの成功率は極めて低く、非効率なだけでなく、担当者のメンタルに与える影響も甚大だ。「される側の79%、する側の74%が『無駄がある』と感じている」というデータもある。こうした営業手法によって生まれる経済的損失は決して小さくなく、次第に淘汰されていくことは間違いないだろう。

企業の成長を支える営業不要モデル

新しい経営形態を実現したテスラ・モーターズ

世界を見渡すと、従来の非効率な営業活動を減らす事例が出てきている。

その一例が、アメリカの電気自動車専門のベンチャー企業「テスラ」社だ。同社は2017年にGMを抜き、時価総額で全米ナンバーワンに躍り出た。商品の独自性はもちろん、まったく新しい経営形態を実現していることも、テスラ社の強みだ。

テスラ社の車種はたった6種類しかない(2020年1月時点)。一方、テスラ社と企業規模が近い日産自動車の車種は、50種類を超える。日本企業は今、「大量生産・大量消費」の戦略を考え直すときに来ているのではないだろうか。

「エクスペリエンス戦略」で体験と感動を提供
metamorworks/gettyimages

テスラ社の成長の源泉は、ユーザーが得られる「体験」「感動」を想像して製品やサービスを開発する「エクスペリエンス優先型の発想法」を取り入れていることだ。

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要約公開日 2020.06.25
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