本書は若手向けでも経営者向けでもない。ビジネスリーダー(課長・係長)向けの問題解決力を説いたものである。ビジネスリーダーは、部分ではなく事業全体を見渡したうえで、取り組むべき課題を自ら探り当てていかなければならない。そこで求められるのは事業全体を俯瞰して推論する力、つまり「筋の良い仮説力」であり、仮説検証型の問題解決力である。
問題解決にあたって重要なのは情報だ。しかし多くの人は、明確な目的もなく情報収集に走ってしまい、解決への道筋を見つけられず迷子になってしまう。それでは非常に効率が悪い。まず筋の良い仮説を立ててから、その仮説検証に必要な情報を集めたほうが、問題解決ははるかに容易になる。
本書では、問題解決で迷子にならずに進むべき道を確認するための「地図」(問題解決マップ)と、筋の良い仮説を立てるための「武器」を紹介していく。
問題解決で大切になるのが、自分の立ち位置を把握することだ。進むべき方向のあたりをつけ、軌道修正が必要かそうでないか、進んできた道を評価しなければならない。
そのために有用なフレームワークが問題解決マップだ。これは問題解決の筋道を、「現状理解(WHERE)」、「本質的課題発見(WHY)」、「解決策立案(HOW)」の3つに分類するものである。各ステップの取り組み内容は次のとおりだ。
まず現状理解(WHERE)においては、現状を分析して問題が起きている場所を特定し、何を問題として定めるかを考える。多くの人は、ここを飛ばしてWHYの部分から考えてしまうが、現状理解なくして筋の良い仮説は生まれない。
次に本質的課題発見(WHY)では、仮説に沿った情報を収集し、それらの情報を要約する。そして本質的課題が何かを考える。
解決策立案(HOW)では、問題解決の大きな方向性を決めたうえで、具体的なアイデアを考える。方向性を決めないままアイデアを出すと、単なる思い付きに終わってしまうからだ。そして最後にアイデアを評価し、実行策を決定する。
ここからは架空のケースを設定し、問題解決マップにおける3つのプロセスを、さらに7つのステップに分けて解説するとともに、それぞれのステップにおける「武器」を紹介していく。
舞台は東京都心で10店舗を展開するオーダースーツの店、株式会社スーツスペシャルの有楽町店だ。これまで順調に業績を伸ばしてきたが、最近は広告費率が上がり、売上が低迷している。今回店長であるあなたは、売上回復のための特別プロジェクト責任者に任命された。本質的課題を発見し、その解決策を社長に提案しなければならない。
問題解決は、起きている現象の細分化から始まる。とにかく丁寧に分けることが肝心だ。会社や組織は複数の要素で成り立っている。問題とはそうした複合体の中で均等に発生するのではなく、どこか特定のポイントで生じることが多い。問題の発生場所を突き止めるためには、分ける作業が何より大事になる。それが問題解決の成否を左右するほどに。
ここでの武器は、「こだわりを持って分ける」ことだ。
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