2020年6月30日にまたここで会おう

瀧本哲史伝説の東大講義
未読
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瀧本哲史伝説の東大講義
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2020年6月30日にまたここで会おう
出版社
出版日
2020年04月24日
評点
総合
4.0
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.5
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おすすめポイント

2019年8月、病のために瀧本哲史氏が夭逝(ようせい)した。エンジェル投資家、経営コンサルタントとして辣腕を振るう一方で、教育者として若者世代へメッセージを送り続けてきた瀧本氏。京都大学での「起業論」クラスでは、数百人の京大生と意見を戦わせ、立ち見が出るほどの人気だったという。

その白熱教室を京大生以外の若者にも届けるため、2012年6月30日に東京大学の伊藤謝恩ホールで講義が行われた。学生の参加資格は29歳以下に限定され、約300人が全国から集結した。

本書はそのときの熱量を凝縮し、一冊にまとめたものだ。切れ味鋭い言葉の数々と徹底されたロジック、そして行間から伝わる若者たちへの熱い期待。瀧本氏のウィットに富んだ人柄もじつに魅力的で、まるでその場に参加していたような感覚になってくる。

瀧本氏のメッセージで一貫しているのは、「自分たちで考え、決める」ことの重要性だ。若者世代はもちろん、30代以上の世代に対しても、未来に向けてこれから何を学び、どう生きるべきかを問いてくる。彼はこの講義の最後に「宿題」を出した。あれから8年経ったいま、私たちはその「宿題」にどのような答えを出せるだろうか? 世の中を変える主人公は私たち自身――あらためてそう思えてくる一冊である。

ライター画像
大島季子

著者

瀧本哲史 (たきもと てつふみ)
京都大学客員准教授、エンジェル投資家、教育者
麻布高等学校、東京大学法学部を卒業後、大学院をスキップして直ちに助手に採用されるも、自分の人生を自分で決断できる生き方を追求するという観点からマッキンゼーに転職。3年で独立し、日本交通の経営再建などを手がけながら、エンジェル投資家としてアイデアとメンバーしかいないような極めて初期の段階の企業を支援し続ける。京都大学では「意思決定論」「起業論」「交渉論」の授業を担当し、人気NO.1若手教官として「4共30」講義室を立ち見に。各界において意思決定を先導するリーダーを育てることを目標に、選抜制の少人数自主ゼミ「瀧本ゼミ」を主宰。著作物やディベートの普及活動を通して、次世代への教育に力を入れていた。2019年8月10日永眠。ツイッターは@ttakimoto

本書の要点

  • 要点
    1
    そもそも「正解」というものはない。自分の頭で考えて、自分で決めなければならない。そのための思考の枠組みとして、リベラルアーツを学ぶべきだ。
  • 要点
    2
    人に思いを伝え、行動を起こしてもらうためには、言葉に磨きをかける必要がある。
  • 要点
    3
    どんなに旧態依然とした業界や問題にも、パラダイムシフトはかならず起こる。いつかは世代交代するからだ。若い世代が正しい選択をし続ければ、正しいパラダイムシフトは起こせる。
  • 要点
    4
    弱者こそ「交渉」という武器を持とう。相手から情報を聞き出し、互いの利害を冷静に分析していくべきだ。
  • 要点
    5
    自分の仮説にもとづいてトライアンドエラーしよう。そして見込みのある人を支援し、目的のために仲間と繋がろう。

要約

猿ではなく、人間になれ

カリスマモデルはうまくいかない

瀧本氏は、大学で教鞭を振るってはいるものの、エンジェル投資家や経営コンサルタントという立場上、基本的には表に出ないようにしていた。しかし最近の日本の状況を見て、裏方で動くよりも、表に出て積極的に人を支援しなければならないと感じ始めた。

特定のリーダーをぶち上げて、その人が世の中を変えるという「カリスマモデル」は、なかなかうまくいかないものだ。たとえばオバマ大統領も、就任当時はそのカリスマ性に期待が集まった。だが8年経過しても、依然として大きな成果を出せていない。

「すごい人がすべてを決めればうまくいく」というよりも、「皆がそれぞれ自分で考えて世界をつくっていく」というほうが、本来あるべき姿なのではないか。だからこそ瀧本氏は個を変えるため、意見を「ばらまく」ことができる出版に力を入れるようになった。

本を読むだけではダメ
yulkapopkova/gettyimages

資本主義、自由主義、民主主義――これらをきちんと成立させるために共通して必要なのが、自分で考え、自分で決めることである。すごいリーダーを一人担ぎ上げるより、世の中を変えてくれそうな人をたくさんつくる。誰がうまくいくかわからないなかで、そういう人たちに「武器」、すなわち教養を与え、支援するような活動をした方が、世の中を変えられるのではないか。それが瀧本氏の思い描く「武器モデル」だ。

ただし教養といっても、本を読むだけではあまり意味がない。「本を読んで感動したが、翌日には忘れて元のままの生活を送る」というのはよくある話だ。それではまったく意味がない。

だからこそ瀧本氏は出版した後、実際に本を読んでどれぐらいの人が行動を起こしたかを常にベンチマークしている。100万部売れても誰ひとり動かないよりも、たった10部しか売れなくてもその10人が大きな仕事をして世の中を動かすほうが、よほど価値は大きい。

言葉を磨き、言葉で人を動かす

「思考の枠組み」であるリベラルアーツを学ぶ
DrAfter123/gettyimages

教養の役割とは、「他の見方、考え方があり得ることを示すこと」だ。一見すぐ役に立ちそうにないこと、目の前の事柄とは無関係に見えることが、じつは物事を考える際の枠組みとして非常に重要になってくる。

学問や学びの目的というのは、答えを知ることではない。先人たちの思考や研究を通して、新しい視点を手に入れることにある。わかりやすい答えを求める人向けに、インスタントな教えやノウハウを提供することは容易だが、それだとほとんど意味がない。

そもそも「どこかに絶対的に正しい答えがあるのではないか」という考え自体を放棄すべきだ。バイブルとカリスマを安易に信用してはならないし、もちろん瀧本氏自身の言うことも絶対と捉えるべきではない。絶対的な「人」や「もの」に頼りたくなる気持ちは理解できるが、その心の弱さに負けてはいけないのである。

とはいえ考えるためには、どうしてもなんらかの「枠組み」が必要になってくる。その枠組みこそが教養、リベラルアーツだ。自分自身を拠り所とするためには、教養を真に学ぶ必要がある。

「言葉マニア」になろう

じつは私たちが普段日常的に使っている言葉には、すさまじい力が秘められている。その力を知り、とことん磨き上げるべきだ。

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要約公開日 2020.06.30
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