インターステラテクノロジズ(IST)は、著者・堀江貴文氏が2013年1月に設立した宇宙ベンチャーで、ロケットを開発し、打ち上げサービスを実施する会社だ。立ち上げから7年、ISTは弾道飛行を行なう観測ロケット「MOMO(モモ)」を開発、2019年に打ち上げた「宇宙品質にシフト MOMO 3号機」(以下、MOMO 3号機)は高度100km以上の宇宙空間に到達した。民間企業が民間資金で開発したロケットが宇宙空間に到達するのは日本初の快挙であり、世界的に見ても政府系組織以外の民間企業としては9社目だ。
ISTの本社は北海道広尾郡大樹町にある。十勝平野の中核都市である帯広市から南に約50km離れた酪農と農業の町だ。社屋はもともと農協のマーケットだった建物で、打ち上げ場として、かつて防衛省がジェットエンジンの運転試験をしていた町有地を借りている。
いま世界では、「ニュースペース」と呼ばれる、宇宙産業に関するベンチャー企業が続々と立ち上がっている。イーロン・マスク氏の設立したスペースX社や、ジェフ・ベゾス氏によるブルー・オリジン社などが代表格で、スペースXはすでに大掛かりな衛星の打ち上げを成功させている。
これらの企業の狙いは、今後大幅に増えるであろう衛星打ち上げ需要の取り込みだ。特に重さ500kg以下の小型衛星は、2027年までに累計で7000機が打ち上げられるとの予測もある。
現在、衛星の打ち上げができそうな企業は、世界に数社しかない。打ち上げたい衛星に対して、圧倒的にロケットが足りない状況だ。ISTは、この市場への参入を目論んでいる。
宇宙開発や宇宙ビジネスという言葉は知っていても、その実態はよく知らないという人も多いだろう。しかし、いまの日本で宇宙に関わりを持たずに生きている人はほとんどいない。スマホやカーナビの位置情報が得られるのは衛星が飛んでいるからだし、天気予報やBS放送にも衛星は不可欠だ。
今後は、より細かいニーズに沿った衛星ビジネスが生まれてくるだろう。たとえば自動運転を実現するための位置情報や、世界のどこにいても使えるインターネット、漁業のための地球観測、さらには、店舗の駐車場の空き具合から業績を予測するなどといったことにも、衛星は活用できるはずだ。宇宙空間そのものを利用した、宇宙旅行や宇宙ホテルの計画もある。衛星の用途が多様になればなるほど、産業の裾野も広がり、結果として大きな雇用が生まれる。
いま、宇宙にモノを届けるとしたら、いくらかかるのか。
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