「人生は72年、それが丸一日だ」と言われることがある。72年間の人生を1日=24時間と考えるならば、72(歳)÷24(時間)で、1時間=3歳となる。
そうすると、本書執筆当時の著者の年齢は52歳だから、17時にあたる。夏ならまだ明るいが、冬であればすでに辺りは暗くなっているころだ。これから夜に突入すると思うと寂しい気もするが、まだお楽しみのディナーが残っているといったイメージだ。
このように、年齢を一日に例えてみると、自身の置かれている状況がイメージしやすくなる。たとえば、働き盛りといわれる42歳は14時だ。一日で最も太陽が高い時間帯である。
42歳=14時を過ぎたら、陽がだんだん傾き、陰って、やがて夜になっていく。もう14時を過ぎている人たちが、これから自分の欠点を直してビジネスに再挑戦しよう、これまでの経験を生かして新たな仕事に転職しようなどと考えているなら、昇りつめてきたこれまでの時間と、沈みゆくこれからの時間に思いを馳せてみてはいかがだろうか。これからの自分の生き方や方向性が、自然と見えてくるはずだ。
夕方の17時ごろ、つまり50歳を過ぎても成果が何もなかったり、宙ぶらりんの状態だったりするならば、ここは思い切って、考え方を方向転換してみるのもいいだろう。たとえば、「変なおじさん」に変身してみてはいかがだろうか。
「変なおじさん」とは、テレビ番組『志村けんのだいじょうぶだぁ』で、著者が演じていたキャラである。若くてかわいい女の子が大好きで、いろんなものに変装し、たわいないイタズラをする。実はこのキャラは、著者の本心や願望を代わりに表現してくれている。
50歳を過ぎても宙ぶらりんの人は、能力や才能がないというよりは、自分自身を解放できずにいる人だ。そんな人は、自分にはできないと感じたとき、心の中で「変なおじさんにヘンシ〜ン」と叫んでみてほしい。
そうすることで、自分を解放してやることができる。人生も後半戦に突入してきたなら、いままでの自分や周囲から作られた固定概念を取っ払い、自分自身に素直になって生きていこう。
テレビに映る「志村けん」は、実は3人いる。
1人目は、1950年2月20日生まれの、本名・志村康徳。これが「素の志村けん」だ。
2人目は、17歳の高校卒業直前にドリフターズの付き人から出発した「芸人・志村けん」。
そして3人目は、「変なおじさん」「ひとみばあさん」「バカ殿様」などを演じている「キャラ・志村けん」である。
多重人格というわけではないが、それぞれにはきっちり役割がある。この3人を、著者が管理しているのだ。
「素の志村けん」は、「芸人・志村けん」と「キャラ・志村けん」というブランドを管理する総括責任者である。「芸人・志村けん」の品質と財布の管理だけでなく、羽目を外さないように見張り、将来のことも考えておかなければならない。
「芸人・志村けん」は、タレントであり、第一線の営業部長であり、稼ぎ頭でもある。新たなお笑いのスタイル作りから番組制作の予算配分、CM出演やバラエティ番組のゲスト出演もこなす。
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