大きな嘘の木の下で

僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ。
未読
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僕がOWNDAYSを経営しながら考えていた10のウソ。
未読
大きな嘘の木の下で
出版社
出版日
2020年04月15日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.0
応用性
4.0
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おすすめポイント

「目の前にあるお金は、ただの紙切れだ」、「人生において選択なんて大した意味はない」、「会社の一番の敵は社長だ!」――本書は異例のヒットとなった『破天荒フェニックス』の著者であるOWNDAYS社長、田中修治氏の2作目となる作品である。一見すると破天荒に映るかもしれない。だがその独自の鋭い視点で、世の中の「当たり前」を爽快に切りつけ、新たな断面を読者に示してくれる。

自分自身や他者の失敗をもとに、どうしたら失敗する確率を少しでも抑えられるかをまとめているところも興味深い。驚くべきは、その起業哲学を支えている実績だ。著者は繰り返し「行動すること」の大事さを伝えているが、単に行動するだけでなく仕組みとして定着させることで、しっかり組織を拡大させている。この仕組みづくりが非常に上手い。そしてその仕組みづくりの実績がまた哲学を下支えし、哲学と実績が上手く作用しながらOWNDAYSという企業を築いている、と要約者は感じとった。

また、いい意味でひねくれ者とも言うべき、著者のバランス感覚も見事である。世の中に蔓延している成功論にどこか違和感を抱いているのなら、ぜひこの本を読んでみてほしい。言葉使いは荒々しいが、その棘のある言葉の裏に隠された、著者の人を思いやる心に胸を打たれることだろう。

著者

田中修治 (たなか しゅうじ)
OWNDAYS株式会社代表取締役社長。20代の頃から起業家として活動。2008年に巨額の債務超過に陥り破綻寸前だったメガネの製造販売を手がける小売チェーンの株式会社オンデーズに対して、個人で70%の第三者割当増資を引き受け、同社の筆頭株主となり、同時に代表取締役社長に就任。2013年にはOWNDAYS SINGAPORE PTE LTD.、2014年にはOWNDAYS TAIWAN LTD.を設立。2020年3月現在、12か国340店舗を展開し、独自の経営手法により、事業拡大と成長を続けている。

本書の要点

  • 要点
    1
    お金とは単なる「交換ツール」である。いざという時に本当に自分を助けてくれるのは、自分を必要としてくれるたくさんの人たちとの「信頼関係」だ。
  • 要点
    2
    「労働」とは、主に収入を得る目的で体や知能を使い、働くことである。一方で「仕事」とは、誰かの願いを叶えるために、自分の価値を提供することだ。これからの時代は人から必要とされる、本当の意味での「仕事」に集中するべきである。
  • 要点
    3
    今の時代に求められているのは、働く人を巻き込んでアイデアをもらっていく、巻き込み型の経営だ。それを実現するためには、あらゆることをガラス張りにし、公明正大にすることが大切である。

要約

お金論のウソ

お金は「交換ツール」でしかない
baona/gettyimages

お金持ちになるためには、まず「目の前にあるお金は、ただの紙切れだ」と認識することが重要だ。この考えには、著者のアルバイト時代の経験が大きく影響している。当時ミュージシャンを目指していた著者は、忙しいバンド活動の合間にバイトに精を出していた。選ぶ基準は「時給の高さ」のみ。効率だけを追い求めていたからだ。しかしその仕事を始めてから1年が経った時、「自分の人生の時間を、切り売りしてお金と交換している」という感覚に全身が包まれた。そしてそれはとても悔しい体験でもあった。なぜなら当時の仕事は単調な機械的作業であり、自身にとって得るものがほどんどない、「価値のない仕事」と感じたからである。

お金を扱う時は「高い・安い」で捉えるのではなく、「その交換が自分にとって本当に価値があるか?」という目線で考えることが大切だ。そうすればお金がただの「交換ツール」だとわかり、不利な交換にも気づけるようになる。

「出世」という言葉の本当の意味

一般的に「出世」とは、「社長になった」、「お金持ちになった」など、社会的なステータスを手に入れた状態だとされるが、その認識は大きく間違っている。著者の哲学における「出世」とは、「人から必要とされるようになる」ことだ。人から必要とされた結果として、社長になれたに過ぎない。この本質を見誤ってはいけない。

OWNDAYSの若い社員の中には、「苦労してまで出世したいとは思わない」、「給料もそんなにいらない」と本気で言う人がいるが、それでも著者は常日頃から「出世したほうがいいよ」と提言している。それは不幸になった時の波及効果のほうが、幸せになった時のそれよりも大きいためだ。社長のもとには「親が亡くなった」「家族が重い病気に罹ったので長期休暇を取ります」などという申請がひっきりなしに届く。OWNDAYSの福利厚生規定では、慶弔見舞金が二親等まで出る。この二親等以内の親族者というのは、日本の平均値では「社員数×8人前後」を指している。つまり会社は雇用者の約8倍の人間の不幸に対して、フォローする責任を負っているといえる。

このような経営者側の視座から言えること。それは、「出世した人」=「人から必要とされている人」は、多くの人から助けてもらえるということだ。

いざという時に自分を助けてくれるもの

親から「貯金してるの? いざという時に困るわよ」と言われたことのある人は多いのではないだろうか。しかしいざという時に本当に自分を助けてくれるのはお金ではない。その時までに培った自分の価値と、その価値を必要としてくれる人たちとの信頼関係だ。だから若い時こそ、お金よりも大切なものをたくさん身につけ、必要とされる人材になるべきなのである。

今一度、自分が不幸になる確率をきちんと計算して考えてみてほしい。いざ自分の身に不幸が降りかかった時、慌てふためいて「助けて」と懇願しても、普段から人に必要とされていなかったら、誰も助けてはくれないだろう。

仕事論のウソ

「労働」と「仕事」の境界線
oatawa/gettyimages

「労働」とは、体を使って働くことだ。特に収入を得る目的で、体や知能を使って働くことを指す。一方で「仕事」とは、誰かの願いを叶えるために自分の価値を提供することである。

「労働」は、時代の変化に伴って常に新しく生み出されるが、それと同時にテクノロジーの進化によって常に消滅していく運命にある。ゆえに著者は「労働」を嫌い、今後労働をするような人はいなくなっていくと予想している。一方で、使命として働いている人や、意味を見いだして働いている人は、多くの人から必要とされ、さらにその価値を高めていく。

労働をしている人と、仕事をしている人の違いとして、ある事例を紹介したい。

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要約公開日 2020.06.08
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