2060 未来創造の白地図

人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる
未読
2060 未来創造の白地図
2060 未来創造の白地図
人類史上最高にエキサイティングな冒険が始まる
未読
2060 未来創造の白地図
出版社
技術評論社

出版社ページへ

出版日
2020年03月24日
評点
総合
3.8
明瞭性
3.5
革新性
4.5
応用性
3.5
要約全文を読むには
会員登録・ログインが必要です
本の購入はこちら
書籍情報を見る
本の購入はこちら
おすすめポイント

2030年から2060年ごろの近未来、テクノロジーによって生活はどう変わり、働き方はどう変わるか。これが本書のテーマだ。空飛ぶ車が上空を行きかい、人々はウェアラブルコンピューターを備えた衣服を身に着け、先進的な建造物と草木が調和する未来都市。そんな未来の一端が、本書では紹介されている。エンタメ、食文化、農業、医療、環境など、取り扱われるジャンルは多岐にわたる。

本書の特徴は、ただの空想物語に終始するのではなく、科学的なエビデンスにしっかり則っている点にある。また著者が描く未来はいずれも前向きで、「人類の未来は明るい」と思わせてくれるのもこの本のいいところだと感じた。

2060年は、今からちょうど40年後にあたる。40年前、私たちはどのような生活をしていただろうか。1980年といえば、日本は高度経済成長の真っただ中。家族はちゃぶ台を囲み、ブラウン管テレビの前で食事をする。仕事場にはパソコンもなく、やっとコピー機が普及しはじめ、書類をいちいち書き写さずにすむようになった、そんな時代である。

それが今では、ネットがあればほとんど何でも手に入るようになった。40年でこれほどまでに社会は変わるのだ。それを考えれば、本書で語られるワクワクするような未来予想図は、決してただの夢物語ではない。フランスの小説家ジュール・ヴェルヌの言葉にもあるように、「人が想像できることは、必ず人が実現できる」のだから。現在20歳であれば、40年後は60歳。30歳であれば70歳。とりわけ若い世代におすすめしたい一冊である。

ライター画像
小林悠樹

著者

川口伸明 (かわぐち のぶあき)
アスタミューゼ株式会社 テクノロジーインテリジェンス部部長。薬学博士(分子生物学・発生細胞化学)。
1959年4月、大阪生まれ。東京大学大学院薬学系研究科 後期博士課程 修了。
博士号取得直後に起業、国際会議プロデューサーなどを経て、2001年より、株式会社アイ・ピー・ビー(Intellectual Property Bank)に参画。取締役技術情報本部長、Chief Science Officerなどを歴任、世界初の知財の多変量解析システム構築、知財力と経営指標の総合評価による株式投信開発、シードベンチャーへのプリンシパル&ファンド投資、事業プロデュースなどに携わる。
2011年末、アスタミューゼ入社。広範な産業分野の技術・事業コンサルティング、約180の有望成長領域の策定、世界の研究・技術・グローバル市場(ベンチャー、上場)の定量評価手法の開発、医学会などでの招待講演、各種執筆などに奮闘中。
おもな編著書は『生体データ活用の最前線』(共著、サイエンス&テクノロジー社/2017年)、『IoTビジネス・機器開発における潜在ニーズと取り組み事例集』(共著、技術情報協会/2016年)、『実践 知的財産戦略経営』(共著、日経BPコンサルティング/2006年)、『特許四季報1・2・3』(共著、IPB/2003・2004・2005年)、『新たな文明の創造をめざして』(編著、秋桜社/1994年)、『細胞社会とその形成』(共著、東京大学出版会/1989年)ほか。

本書の要点

  • 要点
    1
    新たな技術が次々と生まれており、人類が思い描いた未来予想図へ近づいていることは間違いない。そこで大切になるのが、「テクノロジーをどこに使い、人の手をどこに残すか」という視点だ。
  • 要点
    2
    センシング技術により、空間自体がIoT化していくだろう。蓄積されたデータを活用したビジネスが数多く登場すると予想される。
  • 要点
    3
    農業や漁業でもデータ化が進む。今後懸念される食糧不足は、テクノロジーが解決するはずだ。
  • 要点
    4
    自動運転技術が移動の概念を変える。社会構造の変化により、街のあり方も変わっていく。

要約

【必読ポイント!】 2030年のテクノロジーと生活

2030年のスマート漁師が送る生活とは
Besjunior/gettyimages

まずは、本書冒頭に描かれるショートストーリーを紹介したい。物語の主人公は2030年の漁師だ。ぜひ想像力をフルに働かせて、2030年の世界を思い浮かべてほしい。

――自称「スマート漁師」の私は情報通信系のベンチャー企業で、スマート海洋牧場の研究開発をしている。今進めているのは、海中で魚群観察をおこない、精度の高い水産資源管理をめざすプロジェクトだ。そのなかでも私の担当は、「魚型ロボット」の研究である。魚の形や動きを模倣した「バイオミメティック」なロボットを完成させることで、海を泳ぐ自然の魚群に近づき、その生態や行動パターンを解析・把握しようという目論見だ。

今日は久しぶりに、実際に海に出て海洋実験をおこなう日である。私の住む地域は、かつては過疎であった。だが現在は、複数企業合同の研究施設ができたことをきっかけに、小規模都市へと返り咲いた。街に高層ビルはないものの、アーティスティックな現代建築や、自然に溶け込んだ環境建築がたくさん存在する。建物の外壁は日差しの強さに応じて反射率を変える「アルベド調節性」の素材が採用されている。これにより冷暖房効率が上がり、環境負荷の軽減につながっている。人々はキックボード型、立ち乗り型、自立走行車いすなど、パーソナルモビリティに乗って移動をしているし、浮遊しながら移動するドローンバイク、ドローンタクシーも走っている。

私はドローンタクシーに乗り、港に到着。海上にカモメがたくさん飛んでいると思ったら、「バイオニックバード」の群れであった。バイオニックバードは鳥型ソフトロボットで、別の研究グループがそれを使って海上・海中通信の移動型中継基地や海洋資源の調査をおこなっている。さて、それでは研究船に乗って海に出るとしよう。

テクノロジーとの距離感のバランス

いかがだろうか。これが著者の描く2030年の未来予想図である。あと10年でどこまで実現するかはわからないが、新たな技術が日々誕生し、思い描いた未来へと近づいていくことは間違いなさそうだ。

そのうえで著者が重要だと考えているのが、「どこにテクノロジーを使い、どこに人の手を残すか」という視点だ。テクノロジーと付き合う際は、このバランス感覚が重要になる。たとえば自動運転技術が普及し、運転の楽しみがなくなってしまえば、クルマ文化は衰退しかねない。

人間は自分の体を動かして、多少の汗をかいたほうが充実感を得られる生き物である。技術でなんでもかんでも代替すればいいのではなく、テクノロジーはあくまで生活を補助する役割だと心がけよう。

心躍る楽しい未来

空間そのものがIoT化する
metamorworks/gettyimages

2020年代前半にポイントとなるテクノロジーは、「センシング」だと著者は見ている。現在でもスマートウォッチやスマートスピーカーなど、センサーをベースにしたテクノロジーが台頭しているが、今後さらに高感度・高解像度化していくと予想される。家具や家電はもちろんのこと、空間それ自体がIoT化し、センサーネットワークがありとあらゆるものを検知する。そして蓄積されたデータに基づき、最適化が絶えずおこなわれていく。

たとえば未来のベッドルームはこうだ。ベッドに装着されたセンサーにより、寝ている間の体温や心拍、体動などをモニタリングする。日々の就寝状態をベッドサイドのプロジェクターで投影すると、ベッドルームがそのままプライベート遠隔医療システムに早変わり。そのデータをもとに、主治医と話ができるようになるといった具合だ。

もっと見る
この続きを見るには...
残り2943/4422文字

3,400冊以上の要約が楽しめる

要約公開日 2020.06.07
Copyright © 2024 Flier Inc. All rights reserved.
一緒に読まれている要約
教養としてのコンピューターサイエンス講義
教養としてのコンピューターサイエンス講義
ブライアン・カーニハン酒匂寛(訳)坂村健(解説)
未読
勉強の哲学
勉強の哲学
千葉雅也
未読
大きな嘘の木の下で
大きな嘘の木の下で
田中修治
未読
フルライフ
フルライフ
石川善樹
未読
人工知能と銀行経営
人工知能と銀行経営
大久保豊西村拓也稲葉大明尾藤剛小野寺亮
未読
文系AI人材になる
文系AI人材になる
野口竜司
未読
大前研一 2020年の世界-「分断」から「連帯」へ-
大前研一 2020年の世界-「分断」から「連帯」へ-
大前研一(監修)good.book編集部(編)
未読
「数字で考える」は武器になる
「数字で考える」は武器になる
中尾隆一郎
未読