人工知能と銀行経営

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おすすめポイント

金融とテクノロジーを掛け合わせた「FinTech(フィンテック)」に興味をお持ちの方にとって、ホットワードの「人工知能」と歴史の古い「銀行経営」を組み合わせた本書のタイトルは、少々おかしなものに感じられるかもしれない。現在の日本でFinTechの名で大きく取り上げられるのは、電子による決済や送金、あるいはロボアドバイザーによる資産運用や仮想通貨、はたまたソーシャルレンディングやクラウドファンディングなど、目新しいサービスや事業に関するものが多いからだ。

本書は、自らを「金融宮大工」と称し、金融機関向けに最新鋭のITサービスを提供する企業の経営者層が、共同執筆したものである。5名の執筆者はいずれも、金融・信用リスクにまつわるIT・システム事業を営んでいる。彼らは、事業性資金の貸出先に関する財務情報・属性情報・信用情報や、デフォルト(債務不履行)時のリスクといった情報を、会員金融機関に向けて提供している。

このような背景から、本書で取り上げられている「AI」は主として、金融機関から法人や個人の顧客へサービスを提供するにあたってどう活かしていくか、という方向性を主軸として語られる。

顧客に小規模事業者や個人が多い、地域の金融機関にお勤めの方や、銀行経営の将来像に興味をお持ちの方にお勧めしたい一冊だ。

ライター画像
狩野詔子

著者

大久保豊(おおくぼ ゆたか)
慶應義塾大学経済学部卒
ケンブリッジ大学政治経済学部大学院卒(Master of Philosophy)
住友銀行(現三井住友銀行)、マッキンゼー・アンド・カンパニーなどを経て、1996年にデータ・フォアビジョン株式会社設立
2000年に日本リスク・データ・バンク株式会社設立
2019年に両社の経営統合会社ForeVision株式会社設立
現在、Forevision株式会社代表取締役社長、日本リスク・データ・バンク株式会社取締役、データ・フォアビジョン株式会社取締役

西村拓也(にしむら たくや)
九州大学経済学部経済工学科卒
日本長期信用銀行(現新生銀行)、ニッセイ アセット マネジメントを経て、2000年にデータ・フォアビジョン株式会社に入社
現在、日本リスク・データ・バンク株式会社代表取締役社長、ForeVision株式会社取締役

稲葉大明(いなば だいめい)
早稲田大学理工学部数学科卒
一橋大学大学院国際企業戦略研究科金融戦略コース修了
あさひ銀行(現りそな銀行)を経て、2002年に日本リスク・データ・バンク株式会社入社
現在、日本リスク・データ・バンク株式会社代表取締役副社長、
データ・フォアビジョン株式会社取締役、ForeVision株式会社取締役

尾藤剛(びとう ごう)
東京大学法学部卒
あさひ銀行(現りそな銀行)を経て、2003年に日本リスク・データ・バンク株式会社入社
現在、日本リスク・データ・バンク株式会社専務取締役、
データ・フォアビジョン株式会社取締役、ForeVision株式会社取締役

小野寺亮(おのでら りょう)
早稲田大学政治経済学部卒
あさひ銀行(現りそな銀行)を経て、2006年に日本リスク・データ・バンク株式会社入社
現在、日本リスク・データ・バンク株式会社執行役員

※上記はすべて執筆当時

本書の要点

  • 要点
    1
    金融機関はもはや経済取引の中心ではない。デジタライゼーションが進む世界において覇権を握る者は、情報の製造元である「プラットフォーマー」だ。
  • 要点
    2
    地域金融機関における一般個人層向けのサービスは、プラットフォーマーに浸食されることが想定される。デジタルプロセス・リエンジニアリング(DPR)を戦略実行しなければ、顧客基盤をプラットフォーマーに奪われる。
  • 要点
    3
    金融商品は、今後ポイント制やキャッシュバック、商取引などとパッケージ化・一体化されたビジネスとなるだろう。

要約

フィナンシャル・デジタライゼーションの世界へ

AIをおそれる必要はない
PhonlamaiPhoto/gettyimages

人工知能(AI)と人間の対立論争は、全くもって意味がない。「AIが仕事を奪う。人間の将来は大変なことになる」「雇用問題にどう対処すべきか考えもつかない」といった意見に代表されるように、AIの登場に対して漠然とした危機感を抱く原因は何であろうか。あるいはまったく無視してしまうのはなぜだろうか。それはひとえに、これらの感覚をもつ人びとが、未来の世界に対する展望を持っていないことにある。

これからの日本、そして金融がどのような世界となるか。それを予想することが、経営そのものだ。「他社が導入したので、当社も何らかのAIを導入しなくては」というような、世界観なきAIの導入では、成功することは難しいだろう。加えて大事なのは、AIと人間の協業を創造することである。本書は、それについて具体的で有意義なプロセスを提示する。

デジタルツールの急速な普及

デジタルツールを使いこなす「新人類」は、すでに若者だけではない。60代間近の人もデジタル・ネイティブといえよう。テレビを見なくても、スマートフォンを通じてネットフリックスなどで大量のデジタル消費を行なっている。タクシーはもはやスマホ配車が当たり前となった。タクシーが迎えに来る状況を地図アプリで確認でき、車内のタブレットには顧客向けにカスタマイズされたデジタル広告が流れている。楽しいショッピングのお会計は、お得なクレジットカードで支払われ、現金払いはほぼ行われない。私たちの生活は、すべてにおいてデジタルの世界で営まれている。

そうした環境を後押ししているのが、あらゆるものをインターネットに連結するIoT、誰もがほかの電子データにアクセスできるオープンAPI、高速・大容量通信に耐えられる5Gといった最新技術だ。こうして経済取引は、常時電子連結、多次元相互、即時共鳴によってなされるようになっている。

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要約公開日 2020.06.16
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