世界情勢が混迷を極めている。その原因の1つはポピュリズムの拡大だ。米国トランプ大統領が悪い見本となり、世界中に「ミニトランプ」が誕生している。民主主義の末期は愚衆政治となり、ポピュリストが台頭してくるというのは、古代ギリシャの頃から変わっていない。民主主義の時代に、終わりが近づいている。
世界情勢の問題の中心は米中の覇権争いだ。その背景には中国の目覚ましい経済成長がある。今の米中貿易戦争は、かつて1960〜80年代に展開された日米貿易戦争とはまったく違う構図だ。日本企業は当時、米国の要請に答えて米国に生産拠点をつくり、大量の人材を送り込んだ。確かに米国の雇用を奪っていたのだ。
だが、今そんなことをしている中国企業は1つもない。トランプ氏は「中国は米国の雇用を奪っている」と言うが、まったくの事実誤認である。中国が米国に攻め込んでいるのではなく、米国が中国に生産を委託している、場合によっては特定の会社にOEMとして生産させているだけだ。
中国が掲げる「一帯一路」構想は新帝国主義の表れだ。中国には、かつて欧米が展開する帝国主義で割を食っていたが、今度は自分たちの番だという発想がある。新シルクロードや一帯一路など、一見美しく聞こえのよい言葉を並べているが、実のところはお金という武力をもって、自分たちが覇権を握る番だと主張しているのだ。欧州につながる「陸のシルクロード」に加え、「海のシルクロード」の確立も進められている。
一方、お金のない国は中国に頼りがちになる。ギリシャは中国にピレウス港を買ってもらい、そこを中国向けの貿易拠点として欧州全体に対する入り口を開いた。モルディブやスリランカも中国マネーへの依存度を増し、フィリピンのスプラトリー諸島には中国が滑走路までつくっているほどだ。
日米欧の金融の動向を見ると、いずれも金利を下げ、金融緩和の方向にある。
マイナス金利の日本では、債務返済に当てるために日本銀行が「お金の印刷」という禁じ手を使っているものの、発行したお金を市場ではなく日銀が吸収してしまい、生産や消費に回っていない。
その理由は日本が世界にも例のない「超低欲望社会」だからだ。たとえ「家が欲しい」としても、日本人は1戸持ったら満足してしまう。アメリカ人なら、平均3戸ぐらい欲しいと考えるところだ。今の日本人の発想では、経済が膨らむはずがない。
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