AIによって職がなくなるかもしれないという議論は、もはや珍しいものではない。これまでも、新しい技術が生まれ、社会に定着したときには、複数の職種がなくなってきた。その一方で、新技術を使った新しい職種も登場してきている。AI時代においても、新しいタイプのAI職が多く生まれるはずだ。
今後最もリスクが高いのは、AIによる失職を恐れるあまり、身動きが取れなくなることだ。変化を恐れずにAI職に就く準備を始めることが必要となる。
AIが普及すれば、AIとの共働きスタイルが広がっていく。AI職の役割は、AIの特性を知り、人間とAIの共働きをうまくコントロールすることだ。こうした時代においては、行動しないことがリスクになる。AIを積極的に使っていくことが、「人間とAIの共働き時代」を安泰に過ごすうえで重要なのだ。
人とAIの分業スタイルは、分業のバランスによって次の5パターンに分類できる。
(1)人だけで仕事をする「一型」:具体的にはマネジメント・経営業務、クリエイティブ業務など。
(2)人の仕事をAIが補助し、人ができていたことを効率化する「T型」:接客や営業、教育、ソーシャルワーク業務など。
(3)人の仕事をAIが拡張し、人ができなかったことを可能にする「O型」:医療・看護、弁護士といった高度な専門業務やトレーダーなどの予測分析業務。
(4)AIができない仕事を人が補助する「逆T型」:データ入力業務や運転業務など。
(5)人の仕事をAIが完全に代行する「I型」:注文会計業務や監視業務など。
「AIの活用」と聞くと、AIを作ることを思い浮かべる方が多いかもしれない。これまでのAI人材教育はAIを「作る」ことにフォーカスしており、その環境は整ってきたといえる。一方で、AIを「使う」側の教育環境や人材キャリアをフォローアップする環境は、まだ整っているとはいいがたい。
実際には、AIを作るハードルは下がっている。AIを作るための専門性がなくとも、構築済みのAIサービスを利用すれば、容易にAIを作ったり活用したりできるようになっている。このような環境下では、AIを作るのか使うのかの判断能力が欠かせない。同時に、これからはAIをうまく「使う」人がビジネスを動かしていくだろう。
AIの導入数が増えれば増えるほど、「AIを作る仕事」以外の仕事が大量に発生する。「理系AI人材」は、これまで主に「AIを作る」仕事を担ってきた。また、AIを現場で動かすための「本番稼働AIシステムの構築」や、現場でAIを利用し続けるための「AIシステムの運用管理」も彼らの仕事だ。これらの仕事以外の、AI活用に必要なすべての仕事を担うのが、「文系AI人材」である。
文系AI人材の具体的な仕事内容を見ていこう。まずはAIをどのようにビジネスで活用するかを考える「AI企画」が挙げられる。ビジネス課題の解決や顧客の不便解消のために、AIの活用方法を企画する。企画の方針によって、次の3つの仕事のいずれかを行うこととなる。
構築済みAIサービスでニーズを満たせない場合は、「AIを作るプロマネ」として、AIプロジェクト全体のマネジメントをすることとなる。また、「GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェイス)のAI構築環境で作る」ことを決めた場合は、文系AI人材自らがAIを作ることもある。つづいて、自らAIを作らずに構築済みのAIサービスを使う場合は、どのサービスが自社にフィットするのかといった観点から、「構築済みAIサービス選定」を行うことになる。
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