著者がフィンランドに関わるなかで感じたことは、選択の自由度が高い国だということだ。フィンランドは選択肢が多いというよりも、選択を限定する要素が少ない。
人生の転機で大切な選択をしなければならないとき、年齢、性別、家庭の経済状況などは、フィンランドでは大きな制約にはならない。また、好きでやる気があれば、複数の道を選択してよいとされる。たとえば、文系と理系の学位を両方取ってもよいし、仕事とプライベートを同じだけ大切にしてもよい。これを可能にするのは、フィンランドの教育の質の高さと、それを支える諸制度である。自分にとって最良の人生に近づくための選択の機会を平等に持てるのがフィンランドなのだ。
小国でありながら、経済、教育、産業といったランキングで上位にランクインするフィンランド。実際に訪れると、あくせくした感じがなく、人々がゆとりのある生活をしていることがわかる。たとえば夏には、ブルーベリー摘みをし、コテージでサウナに入り、白夜を満喫する。そこには、夜遅くまで働いて、常に疲れ気味という雰囲気はなく、生活のレベルも高い。
もちろん、フィンランド人も仕事、勉強、家事などやるべきことは多くある。だが、それらのバランスがとれており、人間らしい生活ができる。仕事のために休みや睡眠時間を犠牲にせず、与えられた有給休暇はしっかりと消化する。子どもたちも2か月半の夏休みを与えられ、その間宿題はほとんどないという。
外国人から見た、フィンランドの仕事文化で一番いいところは、「ワークライフバランス」がとれていることだ。フィンランド人は残業をほとんどせず、就業時間内にしっかりと働き、それと同じぐらい休みも大切にする。
フィンランドでは、多くの人が8時から16時まで働く。定時になれば帰り始め、16時半になると、オフィスにはほとんど人がいない。休むことも社会人の権利という認識が、国レベルできっちり共有されている。そのため、1日8時間、週40時間以内の勤務時間が守られているのだ。これは業界や企業規模を問わずあてはまる。
一部の人がまだ仕事をしていても15時や16時に退勤するのを後ろめたく感じる様子は見られない。フィンランド人は、「人は人、自分は自分。規定の時間数を働いたら帰るのは当然」と考えているからだ。著者の友人によると、「大変な仕事を簡単そうに、効率よくこなしてサーッと帰る人ができる人」だという。
現代の仕事では、長時間同じ姿勢でパソコンに向かっていることが多い。そのためフィンランドでも、効果的な休憩時間のとり方が重要視されている。
その1つが「タウコユンパ(エクササイズ休憩)」である。企業や大学などの広いスペースに、毎日決まった時間に人が集まり、簡単なエクササイズをする。たった5分でも体を動かすと、いい気分転換になる。座りっぱなしでいるよりも生産性が向上するなど、良い効果が証明されている。
そのほか、「カハヴィタウコ(コーヒー休憩)」という文化が根付いている。この休憩は法律で定められており、勤務時間に毎日10~15分のコーヒー休憩が含まれている。コーヒー休憩のタイミングを決めて、同僚とのコミュニケーションを促している職場もある。休憩中はみんなリラックスしているので、気軽に仕事の相談やプライベートの話をしやすい。お互いの理解が深まるうえに、そこから新たなアイデアが生まれることも多いという。
フィンランドの仕事文化で魅力的なものとして、「職場での平等でオープンな関係性」を挙げるフィンランド人は多い。組織には様々な肩書や役割分担がある。だが、その違いよりも、本人が何をしたか、どれくらいスキルや知識を発揮したのかが、その人の価値評価につながる。部下から見て改善点があれば、上司にフィードバックや批判を伝えることも普通の光景となっている。
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