東大やハーバード大の卒業生の中には、代々同大学を出ているというエリート家系の人がいる。裕福な家族が手厚い教育投資をし、子どもは有名大学へ進む。そして卒業後は弁護士や医者になるという、いわゆる典型的なエリートである。
しかし今やAIや自動化・アウトソーシング化により、これまでの仕事は急速に変わってきている。たとえば、現在エリート職種と認知されている弁護士になるためには、既存の法律の知識をつめこみ、過去の判例を学ばなければならないが、それらはAIにより自動化できる。アメリカの大手ソフトウェア会社シマンテックのサービスを利用すると、2日で57万件の文書を分析できるそうだ。もはや人間が太刀打ちできる次元ではない。おそらく、10年後の弁護士の仕事は、現在のそれとは大きく違っているはずだ。
つまり、今の「エリートコース」に乗ったからといって、安泰ではない。もっと言えば、そこから外れている人にも、チャンスがあるということだ。
大切なのは、未来の波を先読みしつつ、新しい波を自ら作ることだ。
日本の大手企業では、だいたい20代後半から30歳頃にかけて、出世コースに乗る人と外れる人に選別される。出世コースから外されて、悩む社員は多い。
しかし社会を見渡すと、グーグル、フェイスブック、エアビーアンドビー、ウーバーのような、現在成功している企業は「新しく業界を作ろうとしている企業」であることに気づくはずだ。これをキャリアに置き換えてみると、社内の出世競争に価値があるのは、たまたま会社が安定し存続しているから。もし会社ごとなくなれば、効力は一瞬で消える。
一方で、たとえ会社に属していても、自分にしかできない仕事を作り出し、新規事業や社内起業で成功している人たちもいる。彼らこそ、会社という枠組みを超えて活躍できる人材だ。
グーグルには「就業時間の20%は好きなことをしていい」という20%ルールがある。世界中の美術品を鑑賞できるアプリ「Google Arts & Culture」は、まさにこのルールから生まれたサービスだ。日本の企業でもチャレンジできる環境は整っていくはずで、その中で新しい価値を生み出せるかどうかが、今後のキャリアアップの鍵となるだろう。さらに、会社や業界の外にも目を向け、さまざまなコミュニティを作ることも武器になる。
これから時代をリードする人材は、「こういう世界を描きたい、見たい」という確かなビジョンを持っている。そして「見たい世界」を作るために、自分がやるべきことであるミッションを探し出し、それを果たしていく。
ビジョンには、実現しようとする意志の強さが必要だ。ビジョンを実現したいというエネルギー、すなわちパッションさえあれば、賛同者は必ず現れる。ビジョン、ミッション、パッションが揃えば、確実に結果を出せるのだ。
そして、新しい働き方において重要なのは、仕事でのアウトプットにプライドがあるかどうかということ。加えて、アウトプットを出すまでのプロセスを楽しんでいるか、ということである。今そのように感じられない人は、仕事の内容を見なおすか、仕事そのものを変えるか、どちらかを選択すべきだ。
自分のスキルや生産性を高めるために、日常的な学びは欠かせない。しかし著者はあえてMBAなどを取るのではなく、仕事の中に「学び」の要素を取り込むことをすすめている。
自分の仕事を、インパクトと学びの高低でマトリクスにしてみよう。ちなみに、インパクトが高いとは、一定の時間で生み出す価値が高いことだ。すると、次の4つに分けられるだろう。
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