家では集中して仕事ができないという人もいるだろう。その原因のひとつは部屋の環境にある。散らかった状態が目に入っていると、脳の認知資源が奪われて集中力を失ってしまうのだ。作業環境を整理して、脳の認知資源を作業に集中させ、集中力と情報処理能力を改善しよう。
ただし、物を減らせば集中できるというものでもない。2004年ごろ、著者がGoogleのオフィスを訪問した際、エンジニアのデスクにはマウンテンバイクや趣味のおもちゃなども置いてあった。もしそれらが集中力を削ぐのなら、彼らがそんな環境を放置しているはずはないだろう。重要なのは、仕事に関係のないものを置かないことではなく、きちんと整理整頓されていることだ。
在宅勤務の盲点となるのが空気だ。オフィスなら気にならなくても、自宅という閉鎖空間であれば、大きなインパクトがある。一般的に、二酸化炭素の濃度が1000ppmを超えると思考に影響が出始めると言われている。
外の空気は400~450ppmだが、室内になると、人の呼吸だけでも二酸化炭素の濃度が上がる。著者は、会議で参加者が疲れた様子を見せたとき、二酸化炭素測定器で濃度を測ってみた。すると1000ppmを超えており、場合によっては3000ppmを超えているときもあった。
参加者は、会議に疲れたのではなく、ただ二酸化炭素にやられていただけだったのだ。実際、換気をすると、参加者の様子も会議の雰囲気もがらっと変わった。
特に自宅は、気密性が高く空気が汚れやすい。自宅にこもって仕事をしているうちに、空気の汚れに気づかず、集中できないまま作業を続けている可能性もある。
著者は、いつでも二酸化炭素の濃度を確認できるように、空気質モニターをデスクの端に設置している。空気は目に見えないからこそ、こうしたセンサーによって確認することが重要だ。
在宅では集中できず、カフェで仕事をしているという人もいるだろう。雑音がないとかえって落ち着かないものだ。とはいえ、テレビをつけるとあまりにも気が散ってしまう。テレビほどの刺激ではないものの、無音空間のような無刺激ではない、ほどよい刺激が必要だ。
ちょうどいい刺激を考えるとき、「ゆらぎ」がキーワードになる。ここで言う「ゆらぎ」とは、規則的でもまったくの不規則でもない、ふたつの調和が取れた状態だ。水の流れる音や波の音、暖炉の炎の揺れなどがこれに該当する。
こうしたゆらぎは、人工的に生み出せる。著者の場合、部屋に水槽を置いている。水槽の中の小さな魚もまた、空間にゆらぎを与えてくれる存在だ。
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