ビジネスパーソンであれば、限られた時間の中で最大限の成果を上げたいと願うものだ。そんなとき、思考の枠組みともいえる「フレームワーク」を活用すれば、問題解決をスムーズに進めることができる。たとえば、「お酒の企画を考えなさい」といわれても何から考えたらいいか見当もつかない。しかし、「30代女性を対象にした日本酒の企画」という「枠」があれば、具体的なアイデアが生まれやすくなる。
著者はマッキンゼー・アンド・カンパニーで働いていたとき、フレームワークを徹底的に叩き込まれた。フレームワークを使いこなせるようになると、仕事の「スピード」と「質」が飛躍的に向上し、「超速」の世界に入ったのだという。フレームワークを活用するクセがつくと、何らかの枠組みを設けて情報を整理する「フレームワーク思考」が身についていく。フレームワーク思考が身につけば、分析・検証の精度が上がり、意思決定が迅速になるうえ、論理的に伝えられるようになる。
本書では、目的や状況に応じたさまざまなフレームワークを紹介している。自分に必要なフレームワークを見つけ、その武器を自分のものにできたとき、ワンランク上の自分になれたことに気がつくはずだ。
著者が頻繁に使っている問題解決技法に、「空・雨・傘」というフレームワークがある。朝出かける前に「空」の様子を見て、「雨」の予想を立て、「傘」を持って出かけたことで、濡れずにすんだとしよう。空はいまどのような状況であるかという「ファクト(事実)」、雨はその事実が自分にとって具体的に何を意味しているのかという「解釈」、傘はそれらを踏まえて実際に選択すべき「行動・解決策」を表している。この3つをセットで考えることができれば、トラブルを未然に防いだり、問題が発生したとしても効率的・効果的に解決したりすることができる。
「空・雨・傘」では、事実をどう解釈するかが最適な解決策を考える肝となる。確度の高い仮説を立てるためには、前提となるファクト収集が非常に重要だ。ネットや新聞の記事などの第3者のフィルターがかかっている「2次情報」ではなく、現場の生の声である「1次情報」を収集することを心がけよう。
1次情報を得るためには、ヒアリングが欠かせない。ユーザビリティ研究の第一人者であるヤコブ・ニールセン博士の分析では、3人のユーザーにテストを行えば、解決すべき課題の約70%を、5人だと約85%は見つけられるということが示された。つまり、3~5人にヒアリングすれば必要な情報をほぼ得ることができるのだ。
ビジネスに限らず、世の中で起こっている現象には必ず何らかの原因がある。問題解決のためには、ある現象の解釈について「本当に、そうなのか?」と疑い、「真の問題」をあぶり出し、「イシュー」(issue)を特定しなければならない。この場合のイシューとは、その場で論じるべき「もっとも重要な課題」である。
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