少子高齢化が進む中、近い将来、日本の働き手は足りなくなる。このような時代において、人手不足の最も手っ取り早い解決策は、優秀な女性に仕事を担ってもらうことだ。
一方で、世界各国の男女平等の度合いをランキング化した「ジェンダー・ギャップ指数」の2019年の結果では、日本は調査対象153カ国のうち121位というきわめて低い結果に終わった。先進国の中では最下位で、同じ東アジアの中国や韓国よりも男女間の格差が開いているとされている。「日本という国は、どんなに優秀な人材でも、女性であるというだけで活躍が阻まれやすい社会なのだ」という事実が、このランキングによって浮き彫りになってしまった形だ。
理屈では「女性活躍推進」が重要だとわかっていても、本音では「どうも女性の部下は扱いにくくて……」と感じている男性も少なくないのではないだろうか。著者は、仕事の能力においては男女差よりも圧倒的に個人差のほうが大きいと感じているが、男性と女性の間にある種の性差があるのもまた事実だ。
セクハラ、パワハラ、マタハラは論外として、経営者層がいまだに前時代的な考えを持ち、女性を軽んじ、女性の活躍を妨害するような企業には、優秀な女性は集まらない。トップの考え方が消極的なのに、組織が女性活用に成功することはありえないのだ。上層部が「わが社は男女の別を問わず、優秀な人材を集め、活用する会社を目指す」という姿勢と指針を示さなければ、人事部をはじめ、従業員の意識は変えられない。
女性活躍を推進していると見せかけ、「なんちゃってウーマノミクス推進」とでもいうような、付け焼き刃の取り組みに終始している企業も散見される。たとえば、ダイバーシティ推進を謳うチームを設立し、そのリーダーとして女性を選任して、女性社員が話し合う様子を企業のウェブサイトにアップする……これで活動完了、といったケースだ。
このような取り組みを行っても、成果が出ていなければ意味はない。離職率の抑制や、女性の採用数の増加など、自社課題の解決に必要なアクションを取るべきだ。
著者が所属するゴールドマン・サックスは、1990年代半ばから、経営戦略としてダイバーシティに取り組んできた。ダイバーシティとは、ジェンダーや人種の違いだけでなく、国籍、宗教、年齢、障がいの有無、性的指向や性自認、学歴や価値観などといった「考え方の多様性」を広く受け入れ、多様な人材を社内に取り込むことで企業の競争力の向上につなげようとする考え方をいう。
たとえばゴールドマン・サックスでは、新たに人材を採用する際や、新しいポストに人材を登用しようとする際には、候補者リストに必ず男女が混在していなければならない。それによって、多様性の確保と、登用機会の公平性を期しているのだ。
ゴールドマン・サックスがダイバーシティを推進する理由として、以下の3点が挙げられる。
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