新・エリート教育

混沌を生き抜くためにつかみたい力とは?
未読
新・エリート教育
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新・エリート教育
出版社
日経BP 日本経済新聞出版本部

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出版日
2020年07月22日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
4.0
応用性
3.5
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おすすめポイント

本書『新・エリート教育』の“新”は、2つの意味に読み解くことができるだろう。1つには、これからの時代に求められる「新しい人材像」である。あえて「新型コロナの時代に求められる人材」と言ってもいいかもしれない。もう1つは、デザイン思考や脳神経科学といった、最新の成果を取り入れる日米の先端校で進められている「新しい教育」の姿である。

こうした来るべき教育のベースとして、本書で紹介されるのが「ホール・チャイルド・アプローチ(Whole child approach)」だ。子どもたち1人ひとりの興味に合わせて心身頭(ハートボディマインド)を統合的にバランスよく育むことを目標とした考え方である。学力に代表される認知能力だけではなく、豊かな人格や態度、価値観など、いわゆる「非認知能力」の育成を重視する。

またこのアプローチは、「子どもたち全員に同じタイミングで同じ学びを提供する」という従来のカリキュラムの考え方を脱し、1人ひとりのニーズに応じた学習支援を行うのも特徴だ。オンラインなどの技術の広がりが、それを可能にしている側面もあるだろう。

「わが子には、主体的に自ら考えて行動できる大人になって欲しい」、「大人として精神的にも経済的にも自立できるようになって欲しい」――こうした思いは、父母であれば誰もが抱くのではないだろうか。新時代のエリート像を描き出す一冊である。

ライター画像
しいたに

著者

竹村詠美(たけむら えみ)
一般社団法人 FutureEdu 代表理事
一般社団法人 Learn by Creation 代表理事
Peatix.com 共同創設者・アドバイザー
慶應義塾大学経済学部卒業、ペンシルバニア大学MBA、同国際ビジネス修士。マッキンゼー米国本社やアマゾン、ディズニーの日本法人など外資系7社を経て、2011年Peatix.com を共同創業。マーケティング責任者やアジア代表を歴任。グローバルなビジネス経験を活かした教育活動に取り組み、全国で教育ドキュメンタリー上映・対話会や教育イベント「Learn by Creation」を主催し、教員研修も行うほか、総務省情報通信審議会委員なども務める。2児の母。

本書の要点

  • 要点
    1
    ホール・チャイルド・アプローチがめざすのは、普遍的な人間力の向上だ。それは子どもたち1人ひとりが自分を知り、多様な他者の視点に共感する力を身につけて、自分なりの方法で社会に貢献する方法である。
  • 要点
    2
    そのために重視するのが、学力+非認知能力である。新しい知見や技術を応用しつつ、これらの能力を育むための取り組みが、日米の先端校で進められている。
  • 要点
    3
    どのような環境の子どもたちでも、ホール・チャイルド・アプローチの学びの場にアクセスできるようになることを教育の目標としなくてはならない。

要約

【必読ポイント!】 ホール・チャイルド・アプローチ

ハートボディマインド
wildpixel/gettyimages

著者はこれからの世界をリードする人材を「クリエイティブ・リーダー」と呼び、次のように定義する。「自らの得意分野や個性を磨き、存在しない世界を妄想して、各国の仲間と協働しながら、のびやかに新しい価値を生み出す創造性にあふれたリーダーシップを発揮する人」――このような素晴らしいリーダーは、どのようにしたら育成できるのか。

自らも2人の子育てをする著者は、新しいリーダー像について強い関心を抱くようになり、100校を超える欧米やアジアのトップ校・先端校の実践を学んできた。そこでたどりついたのが、1人ひとりの興味に合わせて心身頭(ハートボディマインド)を統合的にバランスよく育む「ホール・チャイルド・アプローチ(Whole child approach)」という考え方である。

ホールというのは「丸ごと」という意味だ。子どもたちの心身頭すべてに働きかけることで、その子らしく、健やかに成長することを目標としている。めざすのは、子どもたち1人ひとりが自分を知り、多様な他者の視点に共感する力を身につけて、自分なりの方法で社会に貢献すること、すなわち普遍的な人間力を育てることである。

非認知能力を育む

このアプローチで重視されるのは、狭い意味での学力ではない。豊かな人格や態度、価値観など、いわゆる「非認知能力」である。非認知能力にはさまざまな分類があるが、学校教育の文脈では、スキルや行動、特徴、マインドセット(心の持ちよう)、態度(モチベーションや意思)などが重視される。

これに対し、教科ごとの学びや単元の履修、テストの点数といった狭い意味の学力は「認知能力」と呼ばれる。この2つは対立するものではなく、非認知能力は認知能力のパフォーマンスに影響を与えると言われている。

非認知能力の代表的なものとして、「自己調整力」と「グリット(やり抜く力)」が挙げられる。いずれも生涯に影響を及ぼす、重要な能力である。自己調整力とは、短期と長期の目標との整合性がとれるように、自らの言動を調整する力であり、自己の感情や行動をさまざまな誘惑のなかでコントロールする力である。一方でグリットとは、ひとつの大きな目標に向かって、困難な状況を乗り越えていく力を指す。

困難に対処できる力
Hakase_/gettyimages

ホール・チャイルド・アプローチに、定型の教育法があるわけではない。子どもたちの心身頭をバランスよく育むという目標に向かって、さまざまな手法が試みられている。

米国ではカリキュラムの自由度が高い私立校、それもトップレベルと言われる学校で先行しているため、ホール・チャイルド・アプローチは一部のエリート層の育成をめざしたものと思われがちだが、そうではない。たとえばジョン・F・ケネディも通っていた名門校の校長は次のように述べている。「移住用の幌(ほろ)馬車に乗った西部開拓者の場合だろうと、1920年代に南イタリアからやって来た移民のケースだろうと、アメリカには懸命に働いて本物の気概を示せばきっと成功者になれるという考え方が常にあった。おかしなことに、いまの私たちはそれを忘れてしまっている」

そして次のように続けている。

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要約公開日 2020.11.01
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