退屈で平凡な町に住むふつうの子Aくん。あるとき両親がサプライズで、ガレージに卓球台を用意した。見るからにテンションが上がっている父親と対戦することになったけれど、まるで歯が立たない。ここが、Aくんがそのままふつうの子になるのか、スゴイ子になるかの分かれ道だった。
Aくんがふつうの子になる道からたどってみよう。Aくんにはチャレンジする情熱がなく、お父さんに誘われても「ぼくには向いていないから」と断り、ゲームをしてお菓子を食べて、とくに何も取り組まなかった。
一方、Aくんがスゴイ子になる道はこうだ。Aくんはあきらめず、テレビゲームをするかわりに卓球の練習をした。そのうちに卓球が楽しくなった。そして、自分の限界までうまくなりたいと思った。父親と、スポーツ万能の兄はいい練習相手になった。小学校の熱血教師に勧められて地元の卓球クラブに入り、熱心に技を磨き続け、とうとう全英選手権で優勝する――。
実際にこの道をたどったのが本書の著者だ。生まれつきの才能がなくても、ゼロからのスタートでも、何かの達人にはなれる。夢を実現できるかどうかは、やり方次第なのだ。
新しいことに挑戦したり、困難に直面したりすると、不安や心配がやる気にブレーキをかけてしまう。ブレーキには、さまざまな種類がある。たとえば、大胆なことをすると人に笑われてしまうんじゃないかという恐怖や、成功者を見て「違う世界の話だ」と思うこと、などである。
こうしたブレーキを外すには、マインドセットについて考えることが大切だ。スタンフォード大学教授のキャロル・ドゥエックは、若者たちを対象に調査を行い、マインドセットこそがブレーキをかけたり、逆に何かを上達するときの手助けになったりするということを示した。
才能のあるなしは生まれつき決まっていると考える「かちこち系マインドセット」を持っていると、練習しても上達する余地がないと考えて努力をしなくなる。対して、なんでもうまくなる人が持っているマインドセットは「しなやか系マインドセット」だ。人の能力は努力によっていくらでも伸ばせる、という考え方である。
「かちこち系マインドセット」を少しずつでも「しなやか系マインドセット」に変えていくためには、使う言葉をリフレーズしていくとよい。「やっぱりダメだ!」を「まだ練習が足りないだけ」に、「もうやーめた」を「別の方法はないかな?」というふうに。
脳は中枢神経系に信号を伝えることで、体のすべての活動をコントロールしている。生命維持のための回路を除けば、大半の回路はギターをひいたり、台本を覚えたりといった特定の行動をするためのものだ。ある行動に必要な信号を伝えようとすると、そのための神経回路が形づくられる。さらに繰り返しやればやるほど、神経結合は増えて強力になる。これが「神経の可塑性」である。
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