2020年、新型コロナウイルスの流行の影響を受けて、これまでは精神科とは縁遠かった人たちの受診が急増している。特に、「ステイホーム」が叫ばれ出してからは、ひとり暮らしの人の受診が目立って多くなっているのだという。突然自宅待機でリモートワークを強いられ、あらゆる行動が制限されている中で、大きなストレスを感じたのだろう。特に一人暮らしの人は、誰かと直接言葉を交わす機会のない日々で孤独を感じやすかったに違いない。メンタル専門の現役精神科医である著者ですら、誰とも面と向かって話をしていない日々を続けているうちに、毎日がつまらなく感じ、空っぽで虚しく、叫び出したくなる気持ちになったのだという。
私たちはこれからもウイルスと共存していかなければならず、また災害などの感染症以外の理由で、今後も「巣ごもり」状態を強いられる可能性がないとも限らない。しかし、そんな状況であっても、人生に絶望しないですむ方法はあるはずだ。そう考えた著者は、1日誰とも話さなくとも猫のように楽に生きていくためのコツを本書に集めた。著者が実際に試して効くと感じた方法ばかりだ。5つのステップにわけて紹介されているコツのうち、本要約では一部を扱う。
朝でも昼でも、目が覚めたらとにかくカーテンを開けよう。太陽の光を部屋いっぱいに取り込めば、人間の体はビタミンDの生成作業を開始する。カルシウムの吸収を助けて骨を強くするほか、免疫力を高めて風邪やがんの予防効果が期待できる。
さらに、太陽光を浴びることで、体内時計を調整することができる。体温やホルモン分泌などの調整をになう体内時計(概日リズム)は、1日およそ25時間のサイクルになっている。私たちの体は日光を浴びることでこれを調整している。そのため、日の光を浴びない生活をしていると、半月もしないうちに昼夜が逆転してしまうことになる。
また、太陽光は「幸せホルモン」のひとつであるセロトニンの分泌をうながす。ストレスホルモンの抑止力があり、心のバランスを整える作用もある。
日が沈むと、セロトニンはメラトニンという睡眠ホルモンに変化する。昼のうちにたくさんセロトニンが出れば、夜にたくさんメラトニンができて、ぐっすり眠ることができる。起きたら、とにもかくにもカーテンを開けよう。
朝、スッキリと起きられず、困っている人は多いものだ。頭がボーッとしてなかなか起き出せないのは、体が「もっと寝させて」と訴えているからである。これは専門用語で「睡眠慣性」と呼ばれ、肉体的疲労やストレス、もしくはその両方で心身に疲労がたまっている時に感じやすくなる。
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