本書のテーマである「ブランデッドエンターテイメント」は、下記のように定義されている。
1、ブランドがプロデュースするエンターテイメント
2、飛ばしたくならないような広告
3、エンターテイメントを邪魔するのではなく、観客に求められるために作られたマーケティング
4、ブランドの金銭的投資・顧客の時間的投資の両面で投資対効果の高い広告
5、「見させる」ために時間を買うのではなく、観客を魅了して「思わず見たくなる」広告
なぜ、このブランデッドエンターテイメントが未来の広告手法と言われるのか。その必要性、現在、未来について本書では解き明かしていく。
近年、私たちのライフスタイルは大きく変わってきた。人々は何かをやろうとした時、すぐに使える便利なアプリが手に入るし、自分が求めていないものや偶然目に入るものに割く時間を極力減らしたいと思う。そうして「ボイド」と呼ばれる視聴者不在現象が生まれ、広告への関心低下によって広告が置き去りにされている。コマーシャルは嫌われているのだ。
特に若いデジタル世代に顕著で、2012年から2017年にかけて、アメリカの18~24歳の層でのテレビ視聴は週に約10時間減少し、史上最低の視聴率となったことを示す調査もある。テレビ視聴に充てていた時間が他の活動やストリーミングに移行したのだ。
では、「ボイド」への対策は何だろうか。それは、観客自身が自分の時間をもっと使いたいと思えるエンターテイメントに、ブランドが移行することだ。価値のある、楽しめるものは時代が変わっても求められている。
メディアが断片化したことによって、人の集中力は持たなくなってきたと言われる。しかし、注意を引くことこそ広告の目的であり、時間がクリエイティブにおける制限と考えるのは誤解だ。時間という貴重な財産のお返しに、消費者に何を与えられるかが問題である。多くのブランドが視聴者離れに苦しんでいる一方で、ごく一部の魅力的なアイデアやコンテンツに人々は魅了され、その時間を大量に獲得している。2012年にIntelと東芝が共同制作したウェブ広告シリーズ『The Beauty Inside』は、合計40分以上のコンテンツでありながらミレニアル世代の注目を集めた。
ストーリーテリングがその中心にあるブランデッドエンターテイメントは、ストーリーが心に響き、シェアされてニュースにまでなることがある。ニュースになったコンテンツはさらなる話題を生み出し、人々の認識、世論、政策まで変えることがありえる。女性差別的な態度が蔓延しているペルーでのとあるキャンペーンは家庭内暴力に関する世間での対話を促し、「虐待者を決して許してはならない」というメッセージが強く伝わった。
こうしたプロジェクトは無視できない特別なニュースとなり、強力なエンゲージメントを生み出した。
ブランデッドエンターテイメントがこの10年で広まった背景には、メディア環境と広告フォーマットの変化がある。つまり、インターネットが広告フォーマットやコンテンツの配信方法を大幅に変えてしまったのだ。
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