新しいテクノロジーが出現したとき、「大衆」はそれに否定的であるものだ。19世紀末にカメラが、20世紀初頭に映画が、そして20世紀終わりにテレビゲームが登場した際、多くの人はそれらを受け入れなかった。
1970年代末に登場した携帯電話も、当初はその大きさや不格好さから、誰もが「いらない」と言った。1999年にNTTドコモの「iモード」が登場したときも、電話にそんな機能は必要ないと言われ、iPhoneが登場した際は「おもちゃ」と揶揄された。だが、iPhone登場からまだ13年しか経っていないにもかかわらず、今やスマホは生活必需品だ。
新しい技術は突然現れるわけではなく、すでにある技術の改良や組み合わせであることがほとんどだ。たとえば、1956年に、米民間航空管理局はエアロカー・インターナショナルというメーカーに、空飛ぶクルマの運用を許可している。わずか6台しか売れなかったが、この時代に空飛ぶクルマの実用化に挑戦した人がいたのである。
現代を見渡せば未来が見える。かつては荒唐無稽と思われたものの多くが実現され、しかもその実現速度は加速度的に上がっている。「大衆」は新しいテクノロジーに懐疑的だ。テクノロジーの可能性を知り、そこに賭けた者だけが「大衆」から抜け出すことができる。
日本では2020年に実用化された無線通信の第5世代「5G」。通信規格は、日本電信電話公社(現NTT)が1973年に「1G」を開始してから、ほぼ10年単位で次の世代に進んでいる。世代が進むごとに通信速度が速くなり、情報伝達量が増えてきた。これまでの30年で、最大通信速度は約10万倍も速くなった。4Gから5Gの差は最大100倍。2時間映画のダウンロードに、4Gなら5分かかっていたところ、5Gでは3秒ほどになるといわれている。
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