2010年代はデジタル技術の時代だった。現在ソフトウェアは世界を席巻しており、2020年代はデジタル技術がより社会へ浸透して、さらなる価値を生み出していくはずだ。そうなると、デジタル技術が規制領域に深く関わるようになってくる。するとAirbnbやUberが直面したように、既存の法律や社会規範との調和をはかることが求められる。デジタル技術自体も、サイバー攻撃や国家による監視といった負の側面から、規制の対象となり、社会的な約束事がつくられていくことは避けられない。くわえて、デジタル技術と国際政治との関係性も深まっていくことになる。アメリカ政府の意向で中国通信機器大手のファーウェイの機器が締め出されたように、デジタル技術を扱う事業者は国家レベルでの政治的・地経学的な争いに巻き込まれてしまう。このようにしてデジタル技術が広まるにつれ、事業と政治が近接しつつあるのだ。
また、SDGsやESG投資の流れを受け、ビジネスの本流において社会貢献が求められ始めている。公益に利する事業に取り組むスタートアップが増え、公共が大きなビジネスになる時代を迎えている。
そんななかで注目されているキーワードが「インパクト」だ。インパクトとは理想のことだ。優れた理想を設定することで、よい問いを生み出し、理想を提示して人々を巻き込むことでイシューを解決する。こうした「インパクト思考」が重要視されているのだ。
「社会実装」という言葉をビジネスや研究、行政の文脈でよく聞くようになった。テクノロジーが社会に実装されるためには、社会も変わらなければならない。電気というありふれた技術ですら、法律などの社会制度が整い、人々が技術に対する教育を受け、そのポテンシャルを発揮できるようになるまで数十年の年月を重ねた。
第二次世界大戦後、大量生産の時代を通じて様々なテクノロジーが実装され、私たちは様々な面でエンパワーメントされてきた。では、なぜ現在、社会実装が注目され、課題となっているのだろうか。
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