新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、テレワークを導入する企業が増えた。そんな状況に影響を与えるのが、トヨタの動向だ。トヨタは、社員の仕事と育児や介護などとの両立を図るため、数年前から在宅勤務の環境を整えてきた。それゆえ、新型コロナウイルスの感染拡大に対応するためのテレワーク導入も、円滑に進めることができた。
ではなぜトヨタは、テレワークや在宅勤務といった新しい働き方を積極的に導入してきているのだろうか。それは豊田章男社長の次の言葉で明確に表現されている。「移動時間80%減、接触人数85%減、会議時間30%減、資料50%減ということ。そのリソースを、未来への投資に割ける」。
トヨタがテレワークを推進している目的は何か。1つめは、社員の働く場所や時間を自由に選択できるようにすることで、多様な働き方を実現するためだ。これにより、多様な人材を集め、その力を100%発揮してもらいやすくなる。2つめは、多くの無駄を省き、未来への投資に配分することで、激変する自動車業界の競争に勝っていくためだ。
豊田章男社長は、2009年に社長に就任して以来、トヨタの置かれた環境の変化に対して強い危機感を表明してきた。国内では突出する存在感を放つトヨタでさえも、自動車業界の激しい変化への対応を迫られている。
なぜ自動車業界は激変しているのか。それは「4つの技術革新」が進んでいるためだ。4つの技術革新とは、「Connected=通信と車の接続」「Autonomous=自動運転」「Sharing=共有」「Electric=電動化」を示す。これらが進めば、ガソリン車の時代は終焉し、自動車メーカーが3万点近い部品を使って自動車を組み立て、販売するといったビジネスモデルも成立しなくなる可能性がある。
また、テスラ・モーターズ、グーグル、アマゾン、アップルといった、ITの巨大勢力がライバルとなるなど、競争の構図が大きく変わっている。これまでと同じことを繰り返していれば、トヨタは自動車を組み立てるだけの存在になってしまう。そんな危機感が、豊田章男社長を改革に駆り立てている。
トヨタはこれまでの「自前主義」を改め、「オールジャパン」での戦いを目指すとして、投資や連携を急ぐ。具体的には、マツダやデンソーと、電気自動車の基盤技術開発の新会社を設立したり、自動運転に欠かせない人工知能の研究機関を設立したりしている。
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