人類の知の発展は、2つの軸で捉えることができる。1つは「知識の拡大」だ。知識や情報の量的な拡大である。もう1つは「抽象化」である。具体から抽象へ、知の抽象度を上げることで、私たちは知を発展させてきた。
知識の拡大とは、数や種類が増えることであり、いわば横への拡がりであることから、「横軸」と表現しよう。一方で抽象度の上昇は、質が上がることを指すため、「縦軸」とする。
人類の知は、この横方向と縦方向の2つの軸で発展してきた。横軸を底辺に、縦軸を高さにしたピラミッド(三角形)を思い描いてみて欲しい。本書ではこれを「具体⇄抽象ピラミッド」と称し、さまざまな事象をこのピラミッド構造で説明していく。
ピラミッドの縦軸は、本書のテーマである「具体と抽象」という、質的な発展を指す。この発展を促すものには、(1)「法則の発見」と(2)「言葉や数といった抽象概念の発展」の2つがある。
1つ目の代表例は、自然科学におけるさまざまな法則である。個々の事象の間に法則性を見つけることで、実際に経験していないことでも、ある程度は予測できるようになる。
2つ目についても、言葉や数といった抽象概念の発展がなければ、そもそも知識を蓄えたりコミュニケーションしたりすることが成り立たないため、きわめて重要な要素である。
具体が個別事象であるのに対して、抽象はそれらの関係性を表現するものである。この関係性のうち、原因と結果といった「因果関係」、あるいは「目的と手段」を関係づけるのはいずれもWhy、つまり「なぜ?」という疑問符で表せる。よって抽象化とは、「Whyを問うこと」と言い換えられる。
抽象化とは、メタ視点で考えることでもある。これは問題を解く前に、問題そのものについて考えること、「(より上の視点から)そもそも〇〇について」考えることを意味している。「全体を俯瞰すること」と言ってもいい。
抽象の世界は、「見える人にしか見えない」という特徴がある。抽象の世界が見えている人は、具体の世界も見ることができるが、具体の世界しか見えない人は、抽象の世界は見えない。
一方で、具体化のための疑問符の代表がHowだ。ここでいう具体化とは、「数字と固有名詞にする」ことを指す。典型的なのは業務目標だ。今期の目標として「〇〇の徹底」「〇〇の強化」といった抽象的な目標では、いくらでも逃げ道ができてしまう。そうしたことを避けて確実なアクションを引き起こすためには、数字と固有名詞で具体化する必要がある。
問題解決は、大きく2つに分けられる。すなわち「そもそも問題は何なのか?」という前半の問題発見と、「その問題をどうやって解決するのか?」という後半の(狭義の)問題解決である。
このうち問題発見に必要なのは、さまざまな具体的事象から本質的な課題を抽象化して抽出することだ。一方で問題解決にあたっては具体化が重要になるため、方向性が180度異なっている。
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