「具体⇄抽象」トレーニング

思考力が飛躍的にアップする29問
未読
「具体⇄抽象」トレーニング
「具体⇄抽象」トレーニング
思考力が飛躍的にアップする29問
著者
未読
「具体⇄抽象」トレーニング
著者
出版社
出版日
2020年03月31日
評点
総合
3.8
明瞭性
4.0
革新性
3.5
応用性
4.0
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おすすめポイント

「具体⇄抽象」とは文字通り、具体化と抽象化を行き来する思考法を指す。この思考法は汎用性が高く、特に「問題解決」と「コミュニケーション」の分野で有効だろう。

問題解決は、問題の発見と(狭義の)解決に分けられる。具体的な事象を抽象化することにより、問題の本質を捕捉するのが問題の発見だ。著者も述べるように、問題は発見されれば、ほぼ解けたも同然だ。したがって問題解決においては、抽象化する思考力が決定的に重要になる。そして発見された問題を、具体化することによって解決していく。特に目標は、数字と固有名詞でしっかりと具体化されなければならない。

コミュニケーションにおいては、具体と抽象という大きな座標軸のなかで、「いまどこの話をしているのか」をマッピングすることが重要になる。そこさえ共有できれば、不毛な議論や無用な軋轢は、相当程度減らすことができるだろう。

本書は29問の演習問題を通して、この「具体⇄抽象」の思考法をトレーニングできるように構成されている。具体的な方法については、ていねいに説明されているのでご安心を。

「具体⇄抽象」の思考回路が身につけば、「自分の頭で考える力」が飛躍的にアップする。さらに言えば、職場やチームで一緒に演習問題に取り組むとなお良いだろう。思考法を共有することで風通しが良くなり、仕事の生産性がグッと上がること間違いなしである。

ライター画像
しいたに

著者

細谷功(ほそや いさお)
ビジネスコンサルタント、著述家。
1964年、神奈川県生まれ。
㈱東芝で技術者として勤務の後、アーンスト&ヤング、キャップジェミニ等での欧米系コンサルティング経験を経て2012年より㈱クニエ コンサルティングフェロー。
問題発見・解決や具体⇄抽象等の思考力に関する講演や研修を国内外の大学や企業などに対して実施している。
著書に『地頭力を鍛える』『アナロジー思考』『問題解決のジレンマ』(いずれも東洋経済新報社)、『「Why型思考」が仕事を変える』『メタ思考トレーニング』(ともにPHP ビジネス新書)、『なぜ、あの人と話がかみ合わないのか』(PHP文庫)、『具体と抽象』(dZERO)などがある。

本書の要点

  • 要点
    1
    抽象化とはWhyを問うことであり、メタ視点で考えることである。具体化とはHowを問うことであり、数字と固有名詞に変換することである。手段から目的を考えるのがWhyであり、目的から手段を考えるのがHowである。
  • 要点
    2
    抽象の世界が見えている人は、具体の世界も見ることができるが、具体の世界しか見えない人は、抽象の世界が見えない。
  • 要点
    3
    「具体→抽象→具体」と、抽象化と具体化を組み合わせることにより、表面的な問題だけでなく、根本的かつ本質的な問題も解決できるようになる。

要約

具体と抽象の違い

具体⇄抽象ピラミッド

人類の知の発展は、2つの軸で捉えることができる。1つは「知識の拡大」だ。知識や情報の量的な拡大である。もう1つは「抽象化」である。具体から抽象へ、知の抽象度を上げることで、私たちは知を発展させてきた。

知識の拡大とは、数や種類が増えることであり、いわば横への拡がりであることから、「横軸」と表現しよう。一方で抽象度の上昇は、質が上がることを指すため、「縦軸」とする。

人類の知は、この横方向と縦方向の2つの軸で発展してきた。横軸を底辺に、縦軸を高さにしたピラミッド(三角形)を思い描いてみて欲しい。本書ではこれを「具体⇄抽象ピラミッド」と称し、さまざまな事象をこのピラミッド構造で説明していく。

縦に伸びる知の発展モデル
3dts/gettyimages

ピラミッドの縦軸は、本書のテーマである「具体と抽象」という、質的な発展を指す。この発展を促すものには、(1)「法則の発見」と(2)「言葉や数といった抽象概念の発展」の2つがある。

1つ目の代表例は、自然科学におけるさまざまな法則である。個々の事象の間に法則性を見つけることで、実際に経験していないことでも、ある程度は予測できるようになる。

2つ目についても、言葉や数といった抽象概念の発展がなければ、そもそも知識を蓄えたりコミュニケーションしたりすることが成り立たないため、きわめて重要な要素である。

抽象化はWhy、具体化はHow

具体が個別事象であるのに対して、抽象はそれらの関係性を表現するものである。この関係性のうち、原因と結果といった「因果関係」、あるいは「目的と手段」を関係づけるのはいずれもWhy、つまり「なぜ?」という疑問符で表せる。よって抽象化とは、「Whyを問うこと」と言い換えられる。

抽象化とは、メタ視点で考えることでもある。これは問題を解く前に、問題そのものについて考えること、「(より上の視点から)そもそも〇〇について」考えることを意味している。「全体を俯瞰すること」と言ってもいい。

抽象の世界は、「見える人にしか見えない」という特徴がある。抽象の世界が見えている人は、具体の世界も見ることができるが、具体の世界しか見えない人は、抽象の世界は見えない。

一方で、具体化のための疑問符の代表がHowだ。ここでいう具体化とは、「数字と固有名詞にする」ことを指す。典型的なのは業務目標だ。今期の目標として「〇〇の徹底」「〇〇の強化」といった抽象的な目標では、いくらでも逃げ道ができてしまう。そうしたことを避けて確実なアクションを引き起こすためには、数字と固有名詞で具体化する必要がある。

【必読ポイント!】 具体⇄抽象ピラミッドの活用

問題発見と問題解決
sesame/gettyimages

問題解決は、大きく2つに分けられる。すなわち「そもそも問題は何なのか?」という前半の問題発見と、「その問題をどうやって解決するのか?」という後半の(狭義の)問題解決である。

このうち問題発見に必要なのは、さまざまな具体的事象から本質的な課題を抽象化して抽出することだ。一方で問題解決にあたっては具体化が重要になるため、方向性が180度異なっている。

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要約公開日 2021.02.24
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