仕事でも私生活でも「考えること」は多いが、考えることに苦手意識を持つ人、考える時間をとれないという人も多いだろう。自分では考えたつもりでも「何も考えていない」と人に言われたり、考えるのが苦手なせいで余計なことをたくさんしてしまったり。
そうした悩みに対する1つの答えが、ロジカルメモだ。これは、ふだんたくさん書いているメモを活用して、「どれほど忙しくても、やるべきことがパッと整理され、スパッと実行に移せる」ものである。
ロジカルメモの実践に向け用意するものは、「使いやすい大きさのノート」「簡単に消せる筆記用具」「縦1.5センチ×横5センチほどの小さめのふせん」の3つ。ノートに会議や情報をいつものようにメモし、それを元にして「思考のコンパス」を作っていく。手順は次の3ステップだ。まず「ふつうにメモを書く」、そして「自分の言葉で言い換える」、最後に「ふせんに『思考のコンパス』を作る」。「思考のコンパス」ができあがれば、素早く整理して実行に移すことが可能となる。
最初のステップは、いつものようにふつうにメモを書くだけ。このふつうのメモこそがアイデアの源泉になるのだ。人がメモをとる理由は様々だ。備忘、暗記や整理、伝達などメモには多くの役割があり、その中には幅広い情報が含まれている。文字として物理的に残されているので、頭の中の記憶と違って薄れていくことも変容することもない。
ロジカルメモではノートの左側をこの「ふつうのメモ」ゾーンとして、右側を「文章化」ゾーンにする。左側に自分が書きやすい形でとったメモが、思考を深めてアイデアを生むもととなる。得た情報や気付きは幅広くメモをしよう。
それからメモにはゴールを入れるといい。ゴールを設定することで「何を考えるか」と「何をすべきか」が明確になる。
第2ステップでは、ノート右側の「文章化」ゾーンに左側のメモを自分の言葉で言いかえる。情報を整理したり、自分なりに重要だと思った点、わからなかった点、追加で調べたい点などを書いたりするのだ。これは、メモを「自分ごと」にしていく作業でもある。
第1ステップのふつうのメモを、第2ステップで自分の言葉で言い換えたら、第3のステップでは特に大事なことをふせんに書く。このふせんこそがロジカルメモの最も重要なポイントである「思考のコンパス」だ。なぜなら、それまでに得た情報の中でも最も大事であり、今後考えるべきことが明確に書かれているからだ。人は複数のテーマについて高レベルで思考し続けることは難しく、優先度の高い順に進めるしかない。思考のコンパスを作ることは、自分がやるべき、考えるべきことを絞り込むことなのだ。
打ち合わせや会議でメモをとった後は、ステップ2からステップ3までその日の内に取り組もう。内容を忘れる前に自分の言葉にして、思考のコンパスをつくるというアウトプットまで行うことで、情報が自分ごとになって記憶に残りやすくなるからだ。
アイデアは「自分ごと」から生まれるものだ。ロジカルメモで他人ごとを自分ごと化し、思考のコンパスで明確化すれば、誰もがアイデアマンになれるだろう。そのためには自分が理解、納得し、楽しくなるまでメモを書き続けることだ。そうすれば、メモは「第2の脳」として働きだす。自分が忘れてもメモが覚えているからだ。
また、アイデアの源泉は「人に伝えたい」という思いである。誰かに喜んでほしいという思いがなく、仕事をやらされている状態ではアイデアは生まれにくい。ロジカルメモは、伝えたい思いを形にして残すツールでもある。
会議や取材の後に30分程度の「一人会議」を行うと、メモの内容を自分の言葉でまとめ、新しい価値や感動を確認し、記憶が新しい状態で効率よく情報を整理できる。だから、スケジュールは打合せと一人会議をセットで組む。
アイデアを生みだすための一人会議でのポイントは2つだ。
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