ライフキネティックは、著者が「慣れない動きから別の動きにすぐに移れない」ことに疑問を抱き、「学習と神経科学」というテーマに辿り着いたことから生まれた。脳内では脳細胞同士がつながり合い、ネットワークをつくって情報をやりとりしている。何かを習得するとは、ある細胞がさらに別の細胞ともつながったり、新しい脳細胞がつくられて新たなつながりができたりして、脳内でネットワークが新規に構築されているということだ。神経科学では、この脳の特性を「神経可塑性(かそせい)」といい、脳内でドーパミンが放出されたことによりうながされ、運動に関する学習プロセスが始動することがわかっている。ドーパミンの発生には「慣れない動きを練習すること」と「やっと達成できたという気持ち」がもっとも重要だ。
つまり、新しい動きを練習して、その動きができるようになると、脳細胞同士のつながりが増え、脳が活性化されるということだ。ただし、脳細胞同士のつながりを増やし続けるためには、常に新しい動きに取り組まなければならない。
「慣れていないこと」を練習する方法は、「ブレインフロー法」として既に考案されていた。著者はブレインフロー法の独占権を得て、そこからさらに発展させ、脳を活性化する「ライフキネティック」の開発に成功。その後、メンバーのサポートや専門家のアドバイスなどを受け、今日のライフキネティックが生まれた。
ライフキネティックは、ドイツ国内で大きな反響を受け、国際的に注目されるようになる。日本では企業家の野田史(ふびと)氏がいち早くライセンス契約を結んだ。
著者らのチームは最初から、ライフキネティックはスポーツ以外の分野でも多大な効果を発揮すると信じていた。実際、認知症と闘っている世代や学校でのストレスと闘っている世代の人たちを助けるために活動しているし、職場で簡単に行えるプログラムも提供している。
ライフキネティックの理論の説明は難しい。実際に体験するほうが早いので、ここでエクササイズを一つ紹介しよう。「上体を左右、前後に傾ける」というものだ。
まず、「左・右・前・後ろ・右・後ろ・左・前・後ろ・右」の順に上体を傾けてみよう。簡単にできたのではないだろうか。
次に、数字を使う。
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